──その音楽に対するシビアな目線がハルハさんらしいなと思います。ヨナべさんの歌も4年間でだいぶ変化していると思いますが、ご自身ではどう感じていますか。ヨナべ 今のボイトレの先生にお世話になり始めたのがちょうど1年前くらいですかね。それまでは感覚でやっていたことが多かったんですけど、「喉はこうなってる」「ベロがここにあるから」とか構造的に教えてもらって、ハルハくんが基礎を学び直したように、私も歌の筋トレをしている感じです。ハルハ ヨナべさんの声は変わり続けていて、シンプルに、昔よりもすごく音楽をしているんですよ。自分でボーカルディレクションを始めたのもそうだし、ギターを始めたり、ヨナべさん自身がやりたいことをやろうとしたりしている場面が如実に増えてきていることを感じるので……負けてられないよね。──いい関係。ヨナべさんの歌が、最初は「いい声としての素材」といった存在感だったのが、どんどんとリスナーに語りかける感覚や、隣にいるハルハさんに語りかけるようなものになっているなと思ったんですよね。ハルハ すごく意思を感じますよね。ヨナべ 最初はピッチを合わせなきゃいけないと思っていて。音程を合わせることが「歌が上手い」だと思っていたんですけど、いろんな人と話していくうちに、どうやら違うっぽいなって……。ハルハ 違うわけじゃないんだけどね。それが絶対的な正解ではないよっていう。ヨナべ ライブをしたからこそ、「ピッチだけじゃないんだな」ということに自分でやっと気づけました。ピッチが合っていることは大前提。そのうえに何が乗っかってくるかで、私たちの音楽の行く方向が変わっていくことを、この2年くらいはすごく感じています。──約2年前にインタビューさせてもらった記事を読み返すと、会社員になろうと思っていたヨナべさんに「試しに歌ってみて」と声をかけたところからharhaが始まって、そこからどんどん環境が変わる中で、「今の状況はヨナべさんにとって幸せなのだろうか」「どこかへ行っちゃうんじゃないかという不安がよぎる瞬間もある」ということをハルハさんがこぼしていたんですよね。そこからヨナべさんのharhaに対する意思が如実に変わっていることを感じていて、まさにそれが歌の変化にもなっているんじゃないかなと思いました。ヨナべ そういう気持ちはまだあるの?ハルハ いや、もうないよ!(笑)。ヨナべ 最初は本当に、わかっていないことが多すぎたんですけど、いろんなことを楽しむ余裕ができてきました。どれだけ贅沢な場で音楽をさせていただいているかがわかってきて、これは普通に生きていてできることではないなと思うと、楽しまないといろんなところに失礼かもとも思うようになって。ちょっと肩の荷を下ろして、自分なりに頑張って楽しもうとやってみています。あと8月に「OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2026」のオープニングアクトとして出させていただいた時に、初めてアリーナでライブをさせていただいて、アリーナでライブをするのがめっちゃ楽しいということに気づいてしまったので、ハルハくんに「アリーナ頑張ろうね」って言って(笑)。ハルハ ついに同じ目標が見えたみたいです(笑)。ヨナべ 見えました。アリーナでワンマンやりたいという気持ちが、自分の中にも出てきました。ハルハ よしっ!ヨナべ それでいうと、ハルハくんが曲を作ってくれて、私が歌うというのも、贅沢だなと思うようになりました。最近、自分でギターを持って曲を作ったりしているんですよ。それをやり始めてから、ハルハくんがDTMでギターもドラムも全部自分で打ち込んで作っているのがすごいなと思って。私はギター1本でしか曲を作れないので、ハルハくんが完成させた歌があって、それをバンドに弾いてもらって、私が歌うというのも、あり得ないことだなってやっとわかってきました。ハルハ 僕はもう……心があったかい。やっぱりお声がけしたところから始まっているということもあって、最初は「歌ってもらっている」という印象が強くて。そうじゃないコミュニケーションが生まれるようになったのは、本当に大きな変化だと思いますね。──“TEEN LOVE”は、第一印象としては、結婚式とかでも流れそうな愛の歌だけど、聴けば聴くほど、4年を経て互いに欠かせない存在になったふたりの関係性を歌っているとも感じました。だって、《君が歌なら僕は楽譜さ!/続く小節の日々を奏でよう》とまで書いてあるし。ヨナべ まんまだ!ハルハ 確かに! これは言い逃れできないかも。僕としては曲を作る時、ひとつだけの物語に収まってしまわないように、なるべくそれぞれの自分事に当てはめて聴いてもらっても成立するようにしているんですけど、その結果、巡り巡って僕らの曲になっているというのはすごく素敵だと思いますね。ピッチが合っていることは大前提。そのうえに何が乗っかってくるかで、私たちの音楽の行く方向が変わっていく(ヨナべ)
──Dメロの《恋とは歌詞が埋まっていくことで/愛とはそれすら億劫になって/ただ鼻歌う僕を眺める君がいることで》も、愛とは何かを表現する言葉として、ものすごくいい詞ですね。ハルハ この曲のいちばんのテーマはそこですね。“TEEN LOVE”ができるまでのボツになった30曲も愛について書いていたんですけど、どれだけ上手い言葉を使っても全部チープな感じがして。それらは愛の輪郭ばかりを追っていたから、確信めいたものにならなくて。そもそも愛って書けるものじゃないんだなと思って、Dメロで書いたことが僕の中の結論だったんです。
──今日ここまででたびたび話してくれた「ありのまま」「自分のまま」ということがアルバムタイトルにも反映されていると思うんですけど、改めて、『FUTURE NATURE TEENAGER』という3つのワードをタイトルに選んだ理由も教えてもらえますか?ハルハ このタイトル自体は2年前くらいからあって、いわゆるharhaとしてやっていく中での重要なキーワードという位置づけになっています。FUTUREは未来、NATUREは自然体やありのまま、TEENAGERは10代感というニュアンス。どの楽曲も、元は全部この3つなんですよ。harhaの楽曲は、この3つの言葉から派生してできあがっていると思います。──TEENAGERという言葉には、harhaとして何を表現したいという想いが込められていると言えますか? ただ「10代に届けたい」という意味ではないですよね。ハルハ そうですね。もちろん10代もですけど、上の世代にもそういう気持ちでいてほしいなと思います。これは、僕がずっと言っている「素直」に繋がってくると思いますね。大人になっていく中で、無理やり自分で感情を決めつけなきゃいけない瞬間とか、折り合いをつけなきゃいけないことが増えていくと思っていて。でも10代は、もっと色鮮やかで。10代の、感情の浮き沈みみたいなところで自分を知る瞬間も多いし、僕自身もそれを経た結果、僕は僕のままでいたいという感情に繋がってきているので、そこはharhaとして歌っていきたいところだと思っています。harhaにおいては、ティーンエイジャーから醸し出される感情の浮き沈みとか、思い浮かぶ光景みたいなものが、どの曲にもあるんじゃないかなって。それに大人になったとしても、複雑な感情はあるにせよ、それぞれの想いの根源は変わらないじゃないですか。それがこのTEENAGERに集約されているんじゃないかなと思います。ヨナべ 私は、若い子たちが生きづらすぎるよ、ということを最近ずっと思っていて。SNSによって、会ったこともない人に取り繕わなきゃいけない瞬間が多いなと思って。だから、若者が自然体でいられる未来にしたいということを、私の音楽の目標に入れたいなと思いました。どうにかできるのならどうにかしたいし、音楽は何かできるものでもあると思っているので……頑張ろうか。ハルハ 頑張ろう。新しい目標ができました。──1曲目のタイトルが“Community_mp4”で、「コミュニティ」もこのアルバムにおいて大事なキーワードになっていますよね。ハルハ 大事ですね。1曲目の“Community_mp4”は、子どもの声が入っているんですけど、全員僕の知り合いの知り合いに手伝っていただいたんですよ。身内ではないけど、他人でもないみたいな、この距離感がすごく大事だなと思って。知り合いに話した先で、その知り合いが他の知り合いに話すと、そこでまたひとつのやり取りが生まれるじゃないですか。僕が「クリエイターズマッチングプロジェクト」に応募したところからharhaが始まって、そこからボーカリストとしてヨナべさんを見つけて、さらにいろんなクリエイターさんに関わってもらって、どんどんharhaという円みたいなものが大きくなり続けていて。その中で僕がすごく思っているのは、僕らが作っている音楽に影響を受けた誰かが、そこからさらにコミュニティを広げてほしいということ。まずharhaという音楽のコミュニティがあって、そこからたとえばharhaのファン同士で友達になったり、harhaを知って音楽を志してくれる子のコミュニティが広がったり、そうやって自分らが知るよしもないもう一歩先のところまで円が広がったらすごく嬉しいなと思います。harhaというものに触れた結果、その人の日常がちょっとだけ変わったり、その人が生きるコミュニティが少し色鮮やかになったり、ということをすごく大事にしていきたいなと思いますね。──「みんなの日常が色鮮やかになるように」といったことはこれまでもライブのMCなどで言っていたと思うんですけど、こうやってアルバム制作を経て、harhaとしてどういうふうに聴き手の日常を鮮やかにできるのかという具体性まで見つけたんだなと思ったんですよね。ハルハ harha自体、まずヨナべさんがいなかったら始まってもいないし、それまで広島でひとりでやってはいたけど、自分の中だけで完結して、その先のことは想像もできなくて。でもこうやってharhaとしていろんな人に支えていただきながら活動する中で、集合体となって進んでいった先に見える未来があるんだなということをすごく思ったんですよね。そういう連鎖がひたすら続いていくんだなって。だから、聴いてくれている方にも同じことが起きるといいねっていう。人と出会っていく中ではいいも悪いもあると思うんですけど、やっぱり出会わなきゃ生まれない偶発性みたいなものがめちゃくちゃあると思うので、それを楽しんだらいいんじゃないかなって。誰かと繋がった果てでどうするかはあなた次第だけど、一旦繋がって考えてみて、面白いことが起こればそれはそれでいいんじゃないという考えですね。若者が自然体でいられる未来にしたいということを、私の音楽の目標に入れたいなって。音楽は何かできるものでもあると思っているから(ヨナべ)