氣志團万博2014 〜房総大パニック!超激突!!〜(1日目)@袖ヶ浦海浜公園

2012年にフェスとしてリニューアルされ、今年で3年連続、しかも3日間開催へと規模を拡大した『氣志團万博』。團長・綾小路翔は「ここが俺たちの生まれ育った町です。はじめて来た人はびっくりしたでしょ、何にもなくて」と語っていたが、東京湾と海ほたる、湾岸のコンビナート施設、そして田園風景を望むこの初日の袖ヶ浦海浜公園は、ほぼ快晴で涼しい潮風の吹き抜ける、絶好のコンディション。とりわけ東京湾の大パノラマは、時間の許す限り眺め続けていたいほどの絶景だ。神社を模したようなデザインのメイン・ステージには、3日間の出演アーティストの名前を記した提灯(バンド、アイドル、レジェンド級シンガー、そしてふなっしーまで、氣志團万博でしかありえない顔ぶれである)が吊り下げられ、ステージを見守るように左右にはリーゼントの狛犬が鎮座している。よく見れば、神社型ステージの中央突端にも、シルバーのリーゼントがせり出していた。

森山直太朗(photo by 釘野孝宏)
森山直太朗(photo by 釘野孝宏)
その初日の模様をレポートしたいのだが、この日のオープニング・セレモニー・アクトを務めた森山直太朗、続くオープニング・ムービー、そして本編トップ・バッターのニューロティカによるステージは、筆者が交通渋滞により会場到着が遅れ、見逃してしまいました。本当に申し訳ありません。(森山直太朗は、“さくら(独唱)”をカラオケで歌った後、アコースティックギターによる弾き語りで“若者たち”を熱唱、その後開会宣言。ニューロティカは、ファンにはおなじみの「スイカマン」の衣装で登場、おおいに会場を沸かせたとのことです)
ニューロティカ(photo by 青木カズロー)
ニューロティカ(photo by 青木カズロー)

私立恵比寿中学(photo by 釘野孝宏)
私立恵比寿中学(photo by 釘野孝宏)
12:10、ステージに登場する2番手は、万博2年連続出演の私立恵比寿中学である。今回は、学ラン+学帽+丸眼鏡の新入生2人(小林歌穂&中山莉子)をスケバンたちがカツアゲ、そこに私服ギャル・コスプレの星名美怜が「目の前にスケバンとかいるんですけど~! ウケる~!」と茶々を入れる寸劇からスタート。星名を先頭に歌い出す“売れたいエモーション!”、ステージ前方にせり出したサブ・ステージで大きなアクションを見せながらの“Go!Go!Here We Go!ロック・リー”と、炎天下の灼熱学芸会を繰り広げてゆく。般若の面を小道具にMXジャンプを敢行し、箒エア・ギターも弾きまくる“放課後ゲタ箱ロッケンロールMX”も披露された終盤までの全7曲、ハイ・ヴォルテージのダンス&シングが止まらないステージだった。

筋肉少女帯(photo by 青木カズロー)
筋肉少女帯(photo by 青木カズロー)
「大槻ケンヂになりたかった(綾小路)」「翔やんは、将来、総理大臣になると思う(大槻)」という双方向リスペクトの煽りVを受けて登場したのは、筋肉少女帯だ。橘高文彦(G)の閃光ギターから傾れ込む“イワンのばか”のストーリーテリング、「ここが袖ヶ浦だろうが、筋肉少女帯がやってきたからには別の土地に変えてやる」と披露される“日本印度化計画”、そしてフィールド一面にダメ・ジャンプの光景を生み出す“踊るダメ人間”と名曲群を畳み掛けると、本城聡章(G)が50歳を迎えたことも祝いつつオーケン、「俺が作詞提供した作品の中から……安達祐実さん、じゃない、裕木奈江さん、でもない、ももクロさんの曲を、やってやろうじゃないかー!」と“労働讃歌”筋少ヴァージョンも披露。この日集まったモノノフたちをも歓喜させる、サーヴィス・セットになった。

味噌汁's(photo by 中野修也)
味噌汁's(photo by 中野修也)
続いては、「なぜ『氣志團万博』のオファーを受けたのか、それすら謎に包まれている」という味噌汁's(※「噌」のつくり部分は、正しくは「曽」です)のレアなステージだ。鼻メガネに揃いのTシャツで登場した4人は、“OKAN GOMEN”を皮切りに「バンドをやる」ことのプリミティヴな喜びを全身からほとばしらせながら、ステージを進めてゆく。パフォーマンス開始時にポツリと来ていた雨の雫も吹き飛ばし、“ふうてん”や“神様の鼻笑い”といったエモーショナル&ドラマティックなナンバーも挟み込まれるものの、ハードコアなファスト・チューン“お年玉〜TOUDAIMOTOKURASHI〜”まで、その日本語ロックンロールの痛快さが際立つ全8曲だ。会場内では味噌汁'sとマルコメのコラボレーションとして味噌汁の試飲会も行われており、マッカー(Dr)は「みんな体調管理に気をつけてね。特に水分と塩分。味噌汁を飲めば一発だから」とナイスな一言を放っていた。

きゃりーぱみゅぱみゅ(photo by 釘野孝宏)
きゃりーぱみゅぱみゅ(photo by 釘野孝宏)
さて、ここで、オープニング・セレモニー・アクトとして登場していた森山直太朗が、翔やんの要請を受けて「ハーフ・タイム・セレモニー」を行う一幕へ。弾き語りで“どこもかしこも駐車場”一曲を披露するのだが、その歌詞と歌唱力によってどこまでも押し広げられる、エモーショナルな表現が圧巻だ。そしてきゃりーぱみゅぱみゅは、お馴染みきゃりーキッズと共に、インタラクティヴなダンスへとオーディエンスを巻き込む。“ピカピカふぁんたじん”のオープニングから“きらきらキラー”、そして振りをレクチャーしながらの“みんなのうた”といい、メドレーで放たれる“にんじゃりばんばん”~“インベーダーインベーダー”~“ふりそでーしょん”といったヒット・チューンといい、ライヴ・アクトとしてのきゃりーの魅力もふんだんに盛り込まれる。凄かったのは“Ring a Bell”で、振りのレクチャーの際にはちょっと難易度が高くオーディエンスもどよめいたりしていたのだが、楽曲が進むうちに誰しもがそれを踊りこなしてしまう。参加意欲をポップに駆り立てるゲーム感覚。本当に楽しいし、見事だ。

氣志團(photo by 青木カズロー・釘野孝宏)
氣志團(photo by 青木カズロー・釘野孝宏)
主催者である氣志團が、他のアーティストにトリ出演を任せてしまうのも「氣志團万博」の面白さのひとつ。勇壮な和太鼓とダンサー陣が華を添えるイントロではファイヤー・パターンの衣装に身を包んだ6人が順繰りに紹介され、巨大な神輿に乗り込んだ翔やんは「ワッショイ!ワッショイ!」と音頭を取りながら登場。マツ(白鳥松竹梅・B)のスラップや光(早乙女 光・DANCE& SCREAM)のバック転といったソロの見せ場が盛り込まれるフェスのテーマ曲、そして“スタンディング・ニッポン”からトミー(西園寺 瞳・G)の歪んだ爆音ソロがかっこいい“Baby Baby Baby”と代表曲を放ってゆく。恒例のコール&レスポンスもそこそこに、挨拶と感謝の言葉を投げ掛ける翔やんだったが、「今日は、ひとつだけ相談があってやってきました。氣志團、今後どうしたらいいと思う?」と笑いを誘い、ドラマ主題歌“喧嘩上等”については「この下半期が大切です。皆さんに、忘年会や新年会でこの曲を歌って頂きたい」と戦略を語る。きゃりーに負けじと振りをレクチャーしつつ「意外とやってくれないんだね。強制なの、ごめんね。この後、みんなが会いたい人に会えなくなるよ。それだけの力を持ってるの、ごめんね」と悪魔の笑顔も見せる。
氣志團(photo by 青木カズロー・釘野孝宏)
ところが、「好きな人が出来たら、地元に連れて行きたいっていう気持ち、あるじゃん。地元の人も、認めてくれるようになって、応援してくれるようになって、皆さんと、出演者の方々のおかげです。本当にありがとう」と語られてから《君にあの夕陽を見せたい》と歌い出される“落陽”、ちょっと素晴らしすぎた。翔やんの正面、つまりオーディエンスが背後を振り返ると、そこには鮮やかな夕焼けと沈みゆく太陽がある。天候相手の博打にも打ち勝った氣志團による、すべての人々に向けられた、究極的にロマンチックな愛の告白だった。そして土曜の夜へと向かうセット・リストの最後に配置されたのは、“One Night Carnival”。「俺達まるで、狛犬みたい」と翔やん&光が乗り込んだあのリーゼント狛犬は、ステージ上を移動するギミック付きだ。最高である。

「今日は岡村さんがいて、最終日に吉川さんがいますからねえ。中日に、尾崎さん降臨するんじゃねえかな」というビデオ・コメントも秀逸だった、岡村靖幸のステージ。日が落ちて、ステージそのものが巨大なミラーボールと化すような照明演出の中、岡村ちゃんの歌唱とダンスも、ファンキーなバンドの演奏も、舌を巻くほどのキレ具合であった。初っ端“愛はおしゃれじゃない”から「氣志團ベイベー、歌って!」と積極的に呼び掛け、ソウルフルなシャウトも飛ばしながら“ア・チ・チ・チ”~“Vegetable”~“聖書”のメドレーを駆け抜ける。キラッキラのサルソウル風ディスコにアレンジされた“SUPER GIRL”では「ねえ氣志團ベイベー、本当のDance Chance Romanceは、一人一人、自分次第だよ。具体的にはこんなふう!」と言葉を投げ掛け、ダンサーとのリレーで側転&スピンも決める岡村ちゃんである。クライマックスは、コズミックなキーボード・サウンドと岡村ギターで切り出される“あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう”から“だいすき”というコンボで、ひたすらアップリフティングな楽曲だけを配したステージだった。

ももいろクローバーZ(photo by 釘野孝宏・中野修也)
ももいろクローバーZ(photo by 釘野孝宏・中野修也)
というわけでこの日のトリ、というか公認フェス・ジャック「ももクロ万博」というテイで堂々登場したのが、3年連続出演のももいろクローバーZである。国歌斉唱に続いて玉井詩織が投げ掛ける「ももクロ万博、お前らが先に倒れるか、私たちが先に倒れるか、勝負だー!!」という第一声からの“DNA狂詩曲”というオープニング。フィールド一面には5色のライトが揺れ、“Believe”カヴァーに続く挨拶&メンバー・コールの一幕では、ステージに吊るされた提灯も5色に色分けされていた。有安杏果が後方の高台から「一年に一回ぐらい、私がど真ん中に立つ日があってもいいだろ~っ!!」と昂った声を上げるm.o.v.eのカヴァー“words of the mind-brandnew journey-”、更には「来年も来る気まんまん」「ていうか来年も開催する」といったやり取りを経ての氣志團“SECRET LOVE STORY”といったふうに、名カヴァー連発である。メインストリームとサブカル、正統派と異端をまとめて引き受け、がっちりと歌い踊る、そんなももクロ印を全力で刻み付け、人々のエネルギーを引き出してしまうステージだ。“行くぜっ!怪盗少女”では百田夏菜子が開脚三点倒立を決め、本編ラストは氣志團メンバーの名前でコール&レスポンスを繰り広げながらの“コノウタ”である。

ももいろクローバーZ×氣志團(photo by 釘野孝宏・中野修也)
ももいろクローバーZ×氣志團(photo by 釘野孝宏・中野修也)
アンコールでは、セーラームーンの映像を背景に“MOON PRIDE”を披露すると、“猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」”ではももクロとお揃いの衣装で氣志團の5人が登場し、歌い踊るというスパイスの効いたクライマックスへ。「変態オヤジではございませんので。明日のめざましテレビ、これかなあ……」とぼやく翔やんが締めをももクロに委ねると、百田がリードする一斉10カウントダウンに合わせて、花火が打ち上げられる。そして「以上わたしたち、今、会えるアイドル、ももいろ氣志團Z!!」と声を揃える10人のコールで、この初日はフィナーレを迎えるのだった。汗と笑いと驚きと涙に染まる、最高のフェスが今年も繰り広げられている。2日目、3日目とまだまだ豪華アーティストがズラリ控える「氣志團万博2014」、ぜひ楽しみ尽くしてほしい。(小池宏和)