ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo

ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo - all pics by 橋本塁all pics by 橋本塁
「このバンド名に縛られていたというか、悩んだ時期もあって。ゲスの極み乙女。ってバンド名だから歌詞は皮肉じゃなきゃいけないのかとか、このバンド名だけで色物扱いされたりとか……。音楽やめたいって思ったときもあったけど、ちゃんとこのバンドをやっていこうと、この曲の詞を書いたときに思えたんです」

アンコールのMC、この日の1曲目に演奏した“だけど僕は”について、川谷絵音(Vo・G)はそう語った。元々は遊び感覚で始めたバンドと本人たちも語っているが、ツアーをすれば軒並みソールドアウトだし、フェスやイベントでも時には入場規制になるほど多くの人々がやってくる。メジャーデビューから半年しか経っていないにもかかわらずこの注目度の高さ。いわば破竹の勢い、端から見ればシンデレラストーリーだったかもしれない。しかし、だからこその苦労がある。だからこその悩みがある。川谷曰く「自分の弱い部分を出せた」“だけど僕は”は、歌詞の内容とは裏腹のポップなサウンドがオーディエンスの胸を高鳴らし、満場のクラップがライヴの幕開けを華やかに飾ったのだった。

ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo
ゲスの極み乙女。、初のZeppワンマンライヴである。この日の「ゲスなパーティー 〜東京編〜」は前日(9/16)に行われた「ゲスなパーティー 〜名古屋編〜」とともに1stシングル『猟奇的なキスを私にして/アソビ』のリリースを記念したもの。フェスにイベント、さらには空想委員会との共同ツアーや計16本のワンマンライヴなど、今年だけでもかなりの量のライヴをしてきた彼ら。現場で培ってきたその腕前を2500人のオーディエンスの前でいかんなく発揮しつつ、各々のキャラクターを活かしてオーディエンスを楽しませようとする4人の姿は頼もしくて、バンドとしての成長を感じずにはいられなかった。

ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo
ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo
ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo
開演予定時間から10分ほど押して、SEとステージ後方に吊るされたバンド名ロゴを背に休日課長(B)/ちゃんMARI(Key)/ほな・いこか(Dr)/川谷が登場。「Zepp Tokyoー!!」という川谷の景気のいい叫びを合図にして『猟奇的なキスを私にして/アソビ』のカップリング曲“だけど僕は”からライヴはスタート。“市民野郎”へと繋げサビでは「オーオオオオー♪」と大合唱を発生させる。休日課長先導の「ドレスを」「脱げー!」のコール&レスポンスからの“ドレスを脱げ”では、バンドの演奏をドライヴさせていくようにほな・いこかが力強くドラムを叩けば、川谷は頭を振り乱しながらノイジーなギターを炸裂させ、ちゃんMARIはスポットライトを浴びながらソロをバッチリキメてみせる。そして“ゲスな三角関係”では休日課長/ちゃんMARI/ほな・いこかのドラマ風の掛け合いで「フウゥゥゥゥー!!」と歓声が上がり、「そろそろゲスの4箇条が言いたいんじゃないの?」とほな・いこかがいたずらっぽく誘うと“ホワイトワルツ”では「ゲスである事!」の大合唱! 川谷の歌声が会場後方まで悠々と伸びた“ハツミ”を挟みつつ、7曲目の“ぶらっくパレード”まで、ステージ上の4人と大勢のオーディエンスとで健全たる共犯関係を結びながらともにエンジンをグイグイとかけていく、そんな前半部だった。

ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo
おなじみちゃんMARIの「コポゥ!」コールを含む軽いMCを経て、ここで1stシングルのタイトル曲を2曲続けて披露。“猟奇的なキスを私にして”では流麗なキーボードのリフが曲の持つ切なさを際立たせ、“アソビ”ではジャキジャキしたギターのカッティンスとスペイシーな音色のキーボードのコントラストで独特の浮遊感を演出する。“スレッドダンス”のアウトロでは天井知らずにどこまでも上っていってしまいそうな川谷渾身のシャウトを筆頭にしてセッションが繰り広げられるが、川谷がステージ上を去ると、続けてちゃんMARI、休日課長も捌けていってしまう。曲が終わるころにはステージ上に1人残っていたほな・いこかが物販紹介をしてから再びビートを刻み始めると、休日課長、ちゃんMARIの順番で「私の中のなでしこさん♪」と唄いながら登場。そして川谷は……なんとフロアに出現! 誰も予想していなかったであろうサプライズ展開に湧き上がる歓喜の声。「2曲ここから唄います!」という宣言通り、次の“jajaumasan”まで、時にはマイクを上に向けてオーディエンスに唄わせたりしながら、時にはもうどこにいるのかよく分からないくらい人ごみに揉まれながら、有言実行を果たしたのだった。

ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo
ほな・いこかが、Zepp Tokyoに初めて来たのは2006年のカメラマン・橋本塁主催イベント「SOUND SHOOTER vol.1」であり、今は橋本氏が自分たちを撮影しているという縁や、自分の家族が観に来ているということについて嬉しそうに語る一方、ちゃんMARIは自身のスマートフォンで写真を撮り始めたり、川谷が大学時代の友人とのエピソードを話したり……と超マイペースに進んでいくMCタイム。そして10/29にリリースされる1stフルアルバム『魅力がすごいよ』の告知を済ませると(詳細はこちら→http://ro69.jp/news/detail/109957)、収録曲の中から“crying march”と“デジタルモグラ”を披露。マイナースケールの曲が多いこのバンドにしては明るい曲調の“crying march”は、一聴すると爽やかだが一つひとつの楽器がとても複雑な動きをしていて、演奏技術に裏打ちされたポップネスにはやはりゲスの極み乙女。の曲だなあと少しニヤけてしまう。対して“デジタルモグラ”はリズム隊の音が効いたヘビーな曲で、その曲名のごとく下へ下へとグリグリ進んでいくようなサウンドだ。そして“キラーボール”からは問答無用のダンサブルゾーン。メンバーが煽らずともあちこちでクラップが自然発生し、2階席からでも分かるほどフロアが大きく揺れるぐらいの盛り上がりよう。バンド側もオーディエンス側も、日頃の生活で溜まった感情もストレスも洗いざらいここで吐き出してるんじゃないか?と感じるくらいの凄まじいエネルギーを感じる。そしてラストは“餅ガール”! うさ耳+「餅1」「餅2」「餅3」と書かれたTシャツ姿のダンサー3名(そのうちの1人はバンド名の由来となったちゃんMARI所有の「ゲスの極み乙女。」トートバッグの作者の方だったそう)によるキュートなダンスと、ダンサー&メンバーが投げたたくさんの餅が鮮やかにフィナーレを飾ったのだった。

ゲスの極み乙女。@Zepp Tokyo
アンコールに応えて再び登場した4人。最初にライヴをした下北沢ERAではお客さんが15人しかいなかったこと、バンドの方向性が迷走したこともあったこと、偶然がたくさん重なってメジャーデビューすることになったこと――ここに至るまでの過程を振り返るように語る川谷(他3人がふざけたり茶々を入れたりしてなかなか話が進まないのもまた彼ららしい)。川谷が「やっとゲスの極み乙女。がバンドになった感じがしている」とはっきりとした口調で言ったあとの“パラレルスペック”“ノーマルアタマ”が晴れ晴れとして聞こえたのは私だけだろうか。それぞれの濃いキャラクターを思う存分発揮できる自由度の高さがこのバンドにはあり、それが多くの人々を振り向かせた。そして今、そのポテンシャルの活かし方を考えて、もっと大勢の人々を振り向かせようとしているということが十分に伝わってくるライヴだった。確かな自信を持ちながらひとつの方向を見据えるその姿にはバンドとしての大きな成長を感じたし、「ゲスなパーティー」とはそれを祝うための宴だったのかもしれない。そんなことを考え始めたら、もう、これからのゲスの極み乙女。が楽しみで仕方なくなってしまった。(蜂須賀ちなみ)



■セットリスト

01.だけど僕は
02.市民野郎
03.ドレスを脱げ
04.ゲスな三角関係
05.ホワイトワルツ
06.ハツミ
07.ぶらっくパレード
08.猟奇的なキスを私にして
09.アソビ
10.スレッドダンス
11.いこかなでしこ
12.jajaumasan
13.crying march(新曲)
14.デジタルモグラ(新曲)
15.ユレルカレル
16.キラーボール
17.song3
18.餅ガール

(encore)
19.パラレルスペック
20.ノーマルアタマ
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