Getting Better presents“MUSIC TAGS vol.2”~バンド戦国時代~@Zepp Tokyo

ビクターエンタテインメントのグループGMpV(そもそもはGetting Better、MOB SQUAD、plusGROUND、Victorの4レーベル)がこの10月にGetting Better Recordsとして生まれ変わり、GMpV時代のライヴ・イヴェントを継承する形で東名阪で開催された「Getting Better presents“MUSIC TAGS vol.2”~バンド戦国時代~」。出演者はKEYTALK、キュウソネコカミ、go!go!vanillasという新世代バンドが揃い踏みであり、この3組で10/7のなんばHatch、10/8のZepp Nagoya、そしてこの最終日Zepp Tokyoとステージを巡って来た。2800人とアナウンスされた来場者たちが埋め尽くすフロア、そしてGetting Better Records所属のアーティストたちを次々に紹介するムービーが高揚感を駆り立てると、いよいよ3組のパフォーマンスがスタートである。

<go!go!vanillas>
この日トップ・バッターを務めるのは、11/5にフル・アルバム『Magic Number』でメジャー・デビューを果たす4人組=go!go!vanillasだ。メジャーでのキャリアはKEYTALKやキュウソがちょっとだけ先輩格に当たるが、今回の「MUSIC TAGS vol.2」は公演ごとに出演順が入れ替えられており、筆者が観た先の名古屋公演ではバニラズが堂々のトリを務めていた。牧達弥(Vo・G)が放つ「Zepp Tokyoの皆さん、盛り上がる準備は出来てますかー!?」の第一声、そしてノイジーなロックンロールとバンドの高らかなハーモニー・ワーク、牧の和製ソウル・ヴォーカルで沸き立つナンバーは“アクロス ザ ユニバーシティ”だ。長谷川プリティ敬祐(B)が叫ぶようにカウントを取ってオーディエンスの一斉ジャンプを誘い、ファンキーにタメを効かせたグルーヴと前のめりなロール感を交互に繰り出しながら熱いダンス・タイムを演出してくれる。

この日、MVが公開された『Magic Number』収録の新曲“マジック”は、キラッキラのイントロから4人が追い抜け追い越せとばかりにデッド・ヒートを繰り広げる痛快なナンバー。“人間讃歌”を挟んで披露された“トワイライト”も新作曲だが、こちらは移ろい往く光の瞬き、そのかけがえのない時間を抱きしめるようなロマンチックな楽曲だった。「俺たちが、さあ行くかー、とか言うと、武正さんが、よっしゃいけー!って言ってくれる」「まるでメンバーみたいに」と、3公演を通して深まったバンド間の交流も笑い混じりに語り、クライマックスはプリティがコール&レスポンスをリードしながらの“ホラーショー”、そしてスウィートな歌声がビートに弾ける“オリエント”と披露して、トップ・バッターの役割をがっちりと果たして見せた。歴史の中にある様々なロックンロールのエッセンスを抽出しながら、生々しく人間臭いコンビネーションで自分たちの生きる速度を決める。そんな自由なスタンスが、バニラズの魅力だ。

<キュウソネコカミ>
続いては、サウンドチェックの“KMDT25”で既にひと盛り上がりしてしまったキュウソネコカミである。いよいよの本番は“ビビった”からだが、しなやかなボトムを軸にツギハギだらけのようなデザインのキュウソ楽曲を乗りこなしてゆく5人、ちょっと凄いことになっていると思う。“ファントムバイブレーション”のアンセム感はもはやお手の物で、ヤマサキセイヤ(Vo・G)は踊ったり煽ったりしながらも歌詞をくっきりと伝える余裕があるように見える。「2組(バニラズとKEYTALK)が、今日に合わせてMV出しやがって! 俺ら何にもないっちゅうねん!!」と、得意のキレ芸というか噛み付き芸を披露しながら、その場でスマホをいじってツイッターで新アーティスト写真を公開したりしていた。

さらに、ヤマサキがキュウソのLINEスタンプ発売を告知して売り上げを気に掛けていると、ヨコタシンノスケ(Key・Vo)が、「でも、ここにいる人が買って、お母さんとかに送ってくれたら、それこそこう、ネズミみたいに増えるかも……」とネズミの皮算用を始めてしまう。そんなMCで多少空気が緩んでしまったとしても、今のキュウソは“DQNなりたい、40代で死にたい”のイントロ・リフ一発で瞬く間にパフォーマンスの鋭いエッジを取り戻してしまうのだ。フロアに突入したヤマサキは「俺はあの、“MONSTER DANCE”(こちらはKEYTALKの新曲MV)のリフトアップがしたいんじゃあーっ!!」とオーディエンスに要求し、音の合図に合わせて見事成功させてしまう。更には、このところ封印していたという“お願いシェンロン”で筋斗雲パフォーマンスも敢行し、不変のエモーションを炸裂させる“ウィーワーインディーズバンド!!”、“良いDJ”と全8曲を駆け抜けるのだった。名古屋公演とは選曲を変えていたけれども、どの曲も本当にタイトに決まっていて素晴らしかった。今のキュウソの地力の高さが伺える。

<KEYTALK>
さあ、東京編のトリはKEYTALKだ。お馴染みのオープニングSEで賑々しく登場するなり、カラフルな電飾リングを指にはめた巨匠・寺中友将(Vo・G)はさっそくフロアに突入。黒煙を巻き上げるような“太陽系リフレイン”のスタート・ダッシュで4人がそれぞれ見せ場を作り、続く“はじまりの扉”では小野武正(G・Cho)が満面の笑みを浮かべながらギターを弾き倒すといった具合だ。“fiction escape”でフロア一面が跳ね上がり手を打ち鳴らす光景は壮観だったが、やはり凄いのは新曲“MONSTER DANCE”。MVも公開されたとはいえ、10/22のリリース日を前にしてオーディエンスが一斉に踊りまくっている。そして、曲ももちろん最高だけれど、普通なら何曲分のリズム・パターンだよ、という無国籍暴れ太鼓を叩きまくり、コーラスを歌い、ホイッスルを吹き鳴らす八木優樹(Dr)。4人の高い演奏力を引き出す楽曲としても、“MONSTER DANCE”は素晴らしい。

「どうすかみんな、新曲、いい感じすか? もう一曲、新曲をやりたいんですけど、夏が好きすぎて、こうして秋になって、肌寒くなるほど、夏は輝く。そういう曲です」と巨匠が紹介して披露されるのは“エンドロール”。音楽という鍵で記憶の引き出しを開け放つように、夏を呼び起こすブリージンなナンバーだ。優れたサマー・チューンとは、すべての季節を夏にしてしまう曲なのだと、思い知らされる。“アワーワールド”の後には「3本だったんですけど、すごい濃い、感想をひとつだけ言うならば、楽しかったですー!(小野)」「楽しすぎて、ボーっとしてパジャマで来ちゃいました(ミッキーTとボーダー短パンの首藤)」と口々に告げ、巨匠は函館から帰って迎えた当日、翌日には北海道にとんぼ帰りという強行軍に疲れた、と語っていたが、巨匠と首藤義勝(Vo・B)のヴォーカルは共に絶好調だったように思う。そして八木の渾身のドラム・ソロから突入する終盤は“S.H.S.S.”、「ワッショイ!!」と掛け声一発の“トラベリング”、最後には“MABOROSHI SUMMER”と、オーディエンスの歌声もがっつり攫って本編の幕を閉じた。

アンコールに応えると、おもむろに首藤がギターを手に取り、巨匠がドラム・セットに収まってしまう。呆気にとられていると、小野は「今日はスペシャルな日なんで、俺らだけがアンコールやるわけにはいかないです。go!go!vanillasとキュウソネコカミ、出てこいやー!!」と2組を呼び込む。そしてステージ中央、ヴォーカルの位置に立った八木には、誕生日が近いということでサプライズのバースデー・ケーキが。オーディエンスと一緒にバースデー・ソングも贈られ、吹き消そうとしたキャンドルは電飾仕掛けで消えないというオチだったが、歓喜のスカダンスを踊りまくる八木である。そして3組のスペシャル・セッション、担当パートがイレギュラーなKEYTALKを中心に、計5本のギター、タンバリンやマラカスも持ち込まれて披露されるのは、「高校生のとき思い出すねえー!(八木)」というMONGOL800“小さな恋のうた”だ。リード・ヴォーカルを次々に交代し、もちろんオーディエンスも大合唱である。締め括りに小野の音頭で「Getting!!」「Better!!」とガッツポーズを決めながらの記念撮影も行われ、笑顔の大団円を迎えるのだった。(小池宏和)

■セットリスト

<go!go!vanillas>
01.アクロス ザ ユニバーシティ
02.エマ
03.ミスタースウィンドル
04.マジック
05.人間讃歌
06.トワイライト
07.ホラーショー
08.オリエント

<キュウソネコカミ>
01.ビビった
02.JP
03.ファントムバイブレーション
04.DQNなりたい、40代で死にたい
05.お願いシェンロン
06.カワイイだけ
07.ウィーワーインディーズバンド!!
08.良いDJ

<KEYTALK>
01.太陽系リフレイン
02.はじまりの扉
03.fiction escape
04.MONSTER DANCE
05.エンドロール
06.パラレル
07.アワーワールド
08.S.H.S.S.
09.トラベリング
10.MABOROSHI SUMMER

EN.小さな恋のうた(出演者全員)
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