開演10分前にステージに登場したクリストファー・チュウ(Vo)とジョナサン・チュウ(G)、そしてジュリアン ・ハーモン(Dr)。メンバー3人のうちふたりが兄弟というポップ・エトセトラの編成もガリレオと似ているが、この2組の共通点は、深くかげりを帯びたインディーポップ的な佇まいと、オルタナティヴな感性、そしてなにより、そこから独自のポップミュージックを見出そうという気概そのものだ。親日家であるクリストファーは、ガリレオを「GG」と呼び、「ここでツアーが終わるのが寂しいです」と上手な日本語であいさつ。1月27日にリリースするニューアルバム『Souvenir』から、躍動感のあるビートで踊らせた“Please Don't Forget Me”まで4曲を披露して、ガリレオへと繋いだ。
6曲を終えて、「攻めのセットリストでいくので。今日は心して聞いてください」と、雄貴。続く“リジー”では、ステージに光と影で繊細な模様を描き出したかと思えば、淡いピンク色の光がほのかに会場を染めた“花の狼”では美しい光の演出にも目を奪われる。そして、雄貴がギター1本で哀愁漂うメロディを歌い出し、佐孝仁司(B)のベースラインが深い味わいを刻んだ“山賊と渡り鳥のうた”へというように、『PORTAL』以降の楽曲を中心にしながらライヴは進んでいった。アルバムリリースにひもづかないツアーということもあり、とても自由で、リラックスしたバンドの雰囲気がいい。
「さっきポップ・エトセトラが最後にやった曲を覚えていますか? 実は、あの曲にインスパイアされて作った曲です」と、雄貴が紹介した“Birthday”では、和樹と佐孝がコーラスに加わり、言い様のない興奮が高まっていく。フロアからは手が挙がったり、そっと身体を揺らしたり、思い思いに音楽を楽しむ良いリアクションが返ってきた。なかでも、珍しく生々しい言葉で綴った自殺者の遺書のようなナンバー“くそったれども”は鮮烈だった。《くそったれ くだらない地球という星》と、吐き出すように投げかける雄貴の語気が荒い。そこから、いよいよクライマックスへ。バンド初期から大事にしてきた“ハローグッバイ”に続き、6月にリリースされたシングル“嵐のあとで”の長いアウトロで雄貴がエモーショナルな歌声をあげると、これまで何度もガリレオのライヴで感動的なエンディングを飾ってきた名曲“星を落とす”で壮大なラストを飾った。
アンコールの2曲目ではポップ・エトセトラを呼び込んで、8人編成によるスペシャルコラボで、スプリームスの“You Can't Hurry Love”(恋はあせらず)をカヴァー。そして最後に、「止まらず来年まで走っていくので、付いてきてください」と雄貴が言うと、ラストナンバー“親愛なる君へ”。ギターを持たず、スタンドマイクで歌った雄貴がハンドクラップを求めると、会場中がひとつになった。
Galileo Galileiは、これまでもいくつもの変遷を経て今に至るバンドだ。そんなガリレオからはいま、クリエイターとしての探求心、音楽家としてのストイックさ以上に、プレイヤーとしてのタフな存在感、みんなを引き連れていく牽引力を強く感じる。現在はアルバムを制作中であり、来年にはリリースしたいと語ったガリレオ。いまのモチベーションが作品に直結しているならば、相当エネルギッシュな作品になるのではないか。この日、発表された過去最多18公演をまわる全国ツアーにも期待は膨らむ一方だ。(秦理絵)
●セットリスト
01. Chill Boy
02. Sex and Summer
03. Jonathan
04. 恋の寿命
05. Imaginary Friends
06. 老人と海
07. リジー
08. Good Shoes
09. 花の狼
10. 山賊と渡り鳥のうた
11. 青い栞
12. コバルトブルー
13. Birthday
14. くそったれども
15. ハローグッバイ
16. 嵐のあとで
17. 星を落とす
(encore)
18. クライマー
19. You Can't Hurry Love (feat. POP ETC /スプリームスのカヴァー)
20. 親愛なるきみへ