降水確率90%、しかも雷雨という予報が出ていた「京都大作戦2016」の2日目だが、結論から言うと、たまに小さな雨粒が当たったかな? というぐらいで、時折は暑い日差しの降り注ぐ天候であった。終演直後に少し強い雨が降ったときには、神がかっているとしか思えなかったほどだ。それでは以下、この2日目の模様を駆け足でレポートしていきたい。
源氏ノ舞台トップバッターはWANIMAだ。KENTA(Vo・B)が「あっちー!」とおもむろにPIZZA OF DEATHのステッカー付き8×4(エイトフォー)を取り出し、CM曲“ともに”が熱いリフ展開で届けられる。10-FEET“VIBES BY VIBES”カバーにはTAKUMAも飛び入りして、朝一番の特大シンガロングを巻き起こしていた。2番手の四星球は、10-FEETに舞妓風メイクをしてもらう、というくだりの影アナの直後、実はドナルド・マクドナルドだったり、最終形態フリーザだったりする出オチで「騙したなー!!」と“運動会やりたい”からスタート。オーディエンスを紅組・白組に分け、爆笑必至の競技で競わせるのだった。
FIRE BALL with HOME GROWN 京都大作戦ではお馴染みの出演者であるFIRE BALL with HOME GROWN。4ディージェイと超絶スキルのバンドが、火花を散らしながら猛烈なグルーヴで迫ってくる。ピーター・トッシュやジミー・クリフをカバーした後には、「日本の良いところと、ダメなところがっちり伝えていく!」という意気込みに満ちた“BAD JAPANESE”も届けられた。続いては、現在『COLD DISC』のツアー中であるストレイテナーのステージだ。冷ややかで硬質な音像に歌詞の情景を鮮やかに浮かび上がらせ、ホリエアツシ(Vo・G・Piano)は「10-FEETは、ごめんなさいとありがとうで今までやってきたって言ってたけど、TAKUMAくんは照れ屋なんで、もうひとつ大事なことを言っていません。それは愛だと思います」と言葉を投げかけていた。
晴れ間の覗く空の下で、“Hurdle Race”を皮切りに爽快極まりないメロディック・パンクがコール&レスポンスを巻き起こすのは、dustboxのステージ。信念が研ぎ澄ませた音を確信を持って鳴らす姿に笑顔が溢れ、「俺、諦めなくて良かったなあ。京都大作戦にはいつも力を貰ってます。この3人で、諦めずにやって行こうっちゅう気持ちを込めて作った曲です」とSUGA(Vo・G)が導くのは、“Reflection”の伸びやかに響くフックだ。そして大作戦皆勤賞のDragon Ashは、のっけから10-FEET“under the umber shine”のカバーでカラフルなタオル回しの光景を生み出す。TAKUMAも飛び入りして完璧な興奮を掴むと、今度はオーディエンスの気高い歌声を誘う“AMBITIOUS”へ。終盤には、ひとつのスタイルに寄せる頑強な意志を込めた“Fantasista”でフィールドを跳ね上がらせていた。
一方のステージ=牛若ノ舞台でも、朝から大熱演が連発される。スケール感と威力が早くもステージ規模からはみ出しているCrossfaithの轟音。サックス2本入りの激情フォークパンクを繰り出しながら「京都大作戦(の出演は)難しいって言われてた。10-FEETのツンデレー!」と歓喜の声を上げるFEELFLIP。苦節10年の歩みに寄せる思いを、嵐のようなハードコアサウンドに込めて胸を震わせたDay tripper。テクニカルかつ懐の深いバンドアンサンブルで、ライブの自由な楽しみ方を体現していたのはSABANNAMANである。
THE ORAL CIGARETTESは、「10-FEETと俺らの、始まりの機会を与えてくれたんだと思う」というステージで、グラマラスかつ挑発的なロックンロールを鳴らした。新体制NAMBA69は、刺激成分しか見当たらないタイトな音像から“21st CENTURY DREAMS”の迷いのないメロディが突き抜ける。そしてこの日クローザーを務めたThe BONEZは、ドラマティックなサウンドが西日に映えて美しいオープニングだ。JESSEのクリスピーで勢いに満ちたボーカルが駆け抜ける“GIMCRACK”まで観たが、この後ステージの電源トラブルに見舞われ、一時中断を経てステージを完遂したそうだ。
さあ、源氏ノ舞台でトリ前に出演したのは、こちらも大作戦ではお馴染みの湘南乃風だ。「湘南がここに来たらどうなる?」と圧巻のバウンスの光景を生み出し、壮大なトラックで鼓舞する“黄金魂”の熱いメロディが伝う。「俺たちの愛の形は大合唱。一緒に生きていくって、結構難しくって…」(若旦那)「わかるよー。響いてるよ」(HAN-KUN)という、身を切るようなMCからの“純恋歌”には10-FEETの3人も飛び入りし、それぞれにマイクを向けられていた。ヒット曲満載、生活に最も近いレゲエパーティーの時間であった。
そして、この日もトリの舞台に立つ10-FEET。TAKUMA(Vo・G)は「最後の最後、少しだけ勇気を分けてくれー!!」と叫ぶと、“hammer ska”でフィールドを揉みくちゃにしてしまった。“STONE COLD BREAK”をFIRE BALLの4人が援護射撃し、「子供もできて、久しぶりに京都大作戦に来たっていう大人たち、大人じゃないところ見せてくれ!」と告げる“2%”に湘南乃風も加勢。「流れゆく 宇治川〜♪」と歌われる“RIVER”では、Kjがオーディエンスだけの大合唱を煽り立て、フィールドいっぱいにケータイのライトが灯されて美しい。また、「あれ、この歌、今日どっかで聴いたな。あ、WANIMAのときや」という“VIBES BY VIBES”では、「よっしゃいけー! 今いけー!!」と声を上げるKENTAが、自らフィールドに突入するのだった。怒涛のコラボ連打である。
「もう今年、41ヘクタールになるんですけど、上手くいかないことはいっぱいあります。そこにどんな理由や言い訳があっても〜♪(ギターを爪弾く) 説明しなきゃいけないときもあるけどな、言い訳をしなきゃいけないときもあるけどな、言わんでいいときもあんねん。俺はそれを、ことごとく失敗してきてます」。TAKUMAがそんな思いを込める“アンテナラスト”が、本編終盤にオーディエンスを包み込んでいった。
アンコールの催促に応えると、TAKUMAはThe BONEZの電源トラブルを、本当に悔しそうに謝罪し、「来年は源氏でリベンジや!!」と約束した。無数のタオルが舞う“CHERRY BLOSSOM”でフィナーレかと思いきや、《母は泣いた手に触れ泣いた》の一節だけをプレイする「時間がないときの“RIVER”」で笑わせてフィニッシュ。四星球がサウンドチェックでやっていたのを、本家がやり返した形だ。さらに、KOUICHIがTAKUMAとNAOKIへの感謝の思いを込めた“やっぱ好きやねん”を歌い上げて、2日目は幕を閉じる。いくつもの笑顔と悔しさが、年々このフェスをタフに育てているのだ、と肌で感じられた。(小池宏和)