雨のパレード/日比谷野外大音楽堂

雨のパレード/日比谷野外大音楽堂 - All photo by 田中聖太郎All photo by 田中聖太郎

●セットリスト
1.You & I
2.Dive
3.Horizon
4.Tokyo
5.new place
6.Petrichor
7.Shoes
8.(soda)
9.H.Apartment (Acoustic)
10.You(Acoustic) 
11.Reason of Black Color
12.Hwyl
13.Hometown feat. TABU ZOMBIE (from SOIL&“PIMP”SESSIONS) 
14.ice feat. TABU ZOMBIE (from SOIL&“PIMP”SESSIONS)
15.GOLD
16.Change your mind
17.epoch
18.Count me out
19.MARCH
(Encore)
en1.What's your name?


「すべての色を混ぜると黒色になる――ということで、今回のアルバムは『Reason of Black Color』っていうタイトルにしました。そして、ツアータイトルは『COLORS』。このツアーで俺らは、各会場でいろんな色をもらってきて、いろいろ成長してきたんだ。だから、今日は俺らが染める番です!」

3月14日にリリースした3rdフルアルバム『Reason of Black Color』を携え、仙台/新潟/高松/福岡/札幌/広島/名古屋/大阪の各都市を巡ってきた、雨のパレード「ame_no_parade Oneman Tour 2018 “COLORS”」のツアーファイナル=東京・日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ。
福永浩平(Vo)が冒頭のMCのように語っていた晴れの舞台への決意そのままに、雨のパレードの4人は時に眩いくらいの開放的な音像で、時にミステリアスなポップの揺らぎで、日比谷野音の舞台を色とりどりの楽曲で彩ってみせた。

雨のパレード/日比谷野外大音楽堂

彼ら自身の万感の想いのこめられたこの日のステージは、『Reason of Black Color』収録のバラード“You & I”で幕を開けた。大澤実穂音(Dr)&是永亮祐(B)が繰り出す3拍子の包容力あふれるリズム。ブルージーにむせび泣く山崎康介(G)のギターソロ。そして、野音の空気と響き合う福永の情感豊かな歌声――。これまで精緻に磨き上げられた緊迫したアート作品のような音楽を繰り広げてきた雨のパレードだが、メンバーそれぞれの「色」=ルーツや人間性も含めたリアリティをそのまま音楽に注ぎ込む、という最新作での位相変換を象徴するような場面が、ライブ開幕早々から繰り広げられていく。

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「踊ろうぜ!」という福永のコールとともに流れ込んだ“Dive”では、山崎がシンセにポジションチェンジ、パッドを操る大澤とともに一気にハイブリッドな高揚感の中へと駆け出し、会場の熱気をスリリングに揺さぶっていく。
そのまま“Horizon”まで『Reason of〜』曲を畳み掛けた後、ニューウェーブ風の浮遊感に満ちた“Tokyo”、プリミティブな躍動感あふれる“new place”、サイケデリックとブルースがせめぎ合う音の迷宮=“Petrichor”……と初期曲群を織り重ねて、バンドの歩みをすべて今この場所に直結させてみせた。「最高ですね! 外ってこんなに気持ちいいんか……どっちを期待してた? 雨?(笑)」。陽が沈み夕闇に包まれた会場に福永が呼びかけると、客席一面に心地好い笑いが広がる。

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さらに、ハートウォームなシンセの音色にノスタルジックな感情を託したシングル曲“Shoes”などを経て、新作に収められたアコギ曲“H.Apartment”へ。
「鹿児島から上京して住んでた家があるんだけど、そこに6年間も住んでて。アルバムを作ってる段階で引っ越すことになって、『せっかくだからこの家について書こう』『せっかくならこの家で録ろう』っていうことで、康介さんに来てもらってギター弾いてもらって、ふたりだけでレコーディングしたんですよね。アコースティックだし、短い曲だけど、僕らにとってはエモーショナルな1曲なんだ」
そんな言葉に続けて、康介のアコギの調べとともに歌い上げた“H.Apartment”が、涼しさを増す夜の都心の風景に広がって融けていった。

そのままアコースティック編成で1stシングル“You”を披露したところで、ライブはいよいよ後半戦へ。ノイジーに加工されたシンセの音圧、舞台を覆い尽くすように映写された極彩色のオイルアートとともに、新作の表題曲“Reason of Black Color”からアルバムの世界観の奥深くへと踏み込んでいく。

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続く“Hwyl”の後、舞台にはこの日のゲストアーティスト=タブゾンビ(Tp/SOIL&"PIMP”SESSIONS)が登場! 演奏するのはもちろん、彼がレコーディングに参加した“Hometown”。独特の妖気に満ちたトランペットの響きが、夜の暗闇を伸びやかに貫いていった。「タブさんは地元・鹿児島の大先輩で。僕が小学校の頃からずっと通ってた本屋さんが、タブさんの実家だったんです(笑)」と福永。「アルバムに参加してほしいとずっと思ってたんで。僕ら、初のゲストミュージシャンですからね。初のゲストミュージシャンを、ライブに迎えるのも初めてだし。1曲で終わらせるのもアレだなあというところでね。今日だけの特別バージョンを1曲……」と、ファンクサイド・オブ・雨パレ的な楽曲“ice”をタブゾンビとともに披露。唯一無二の才気同士が描き出す珠玉の音のマーブル模様が、オーディエンスの頭も体も震わせていった。

  • 雨のパレード/日比谷野外大音楽堂
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インスト曲“GOLD”を挟んでライブは“Change your mind”からクライマックスへ。この日の演奏曲のうち約半分の楽曲でシンセを担当していたギタリスト:山崎は曲ごとに実に多彩なプレイを聴かせ、生ドラムとパッドを駆使する大澤のビートが、緻密かつ繊細なアンサンブルにタイトな加速度を与えていく。そして、“epoch”では歌メロに対してカウンターメロディを奏で、“Count me out”ではオクターブユニゾンの音を重ねたフレーズで楽曲にうねりを与える是永……といった具合に随所に織り込まれた音楽的な意匠の数々が渾然一体となって、観客を刻一刻と高ぶらせていく。会場一丸となってシンガロングしたり拳を突き上げたり……といった満場一致型リアクションのライブ空間ではないが、それぞれ思い思いに体を揺らし楽曲に体と心を委ねている観客の姿は、雨パレの音楽のマジカルな訴求力を十二分に物語っている。

「俺らでさ、もっとでかいところ行きたいんだよね。そこら中を、俺ら色に染めたいんだ。だから、これからもよろしく!」
そんな福永の宣誓とともに、最後は4人とも生楽器スタイルで“MARCH”を響かせて、美しく本編を締め括ってみせた。

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アンコールでは「本当にありがとう! 愛おしいです」(大澤)、「野音は観に来ることはあったけど、観てるのと全然違います! 感無量でございます」(山崎)、「僕は椎名林檎さんが大好きで。あの曲の中で吹いてるタブさんと一緒にできるなんて……頑張ってるといいことあるなあ!って」(是永)とそれぞれに感慨を語った後、「もっとカッコよくなって、カッコいい曲いっぱい作るんで!」の福永のコールとともに鳴り渡ったこの日のラストナンバーは“What’s your name?”。福永いわく「嘘みたいに明るい曲を作ってしまった」が、最高の一夜の終わりに爽快な一面のクラップを巻き起こしていった。

雨のパレードの音楽は屋内が似合う密室型の表現だ、と僕はこれまで勝手に思っていたところがあった。が、こうして野外の空間の開放感と混ざり合うことで、その謎めいた音世界の核心を微塵も薄めることなく、格段に風通し良く明快に伝わってきた。今回の初野音ワンマンは僕らにとってはもちろん、雨パレ自身の「その先」にとっても貴重な糧となるに違いない。(高橋智樹)

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