UNISON SQUARE GARDEN/横浜アリーナ

UNISON SQUARE GARDEN/横浜アリーナ - All photo by Viola Kam (V'z Twinkle)All photo by Viola Kam (V'z Twinkle)

4~7月はホールとアリーナ、10~11月はライブハウスをまわるUNISON SQUARE GARDENの全国ツアー「MODE MOOD MODE」。同名の7thアルバムのリリースに伴い開催されたツアーの中盤戦、32本中16本目にあたる横浜アリーナ公演が先日開催された。この記事ではその模様をレポートしていくが、具体的な曲名は記載していないので、今後の公演に参加予定の方もぜひ読んでいただければと思う。

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アリーナワンマンは1月の幕張公演以来2回目。幕張はオールスタンディング、今回は全席指定という違いこそあったものの、特別な演出や特効がなかった点などは全く一緒。やはり彼らはいつも通りの演奏に徹していて、今回もあくまでツアーのうちの1公演として扱われていた。そんななかこの日初めて気づいたのは、イレギュラー対応的に大会場でライブをする際には、バンドの在り方を自分たちの言葉でしっかり言い表すようにしているんだなということ。斎藤宏介(Vo・G)は様々なキャパシティの会場をまわる今回のツアーに対して「これだけの人を前に言うのは申し訳ないですけど、どの会場でもやる気は変わらないです。(中略)カッコいい新曲を作って、みなさんに聴いていただいて、聴いてもらったらみなさんの街へ行って向かい合って演奏する——ってことを着実にやっていきたいと思っています」とコメント。いつだって自分たちのやり方は変わらないのだということを改めて明言していた。また、この日唯一のMCではその他にもうひとつ、「楽屋にヨコアリくん(横アリ公式キャラクター)のぬいぐるみが置いてあり、『ここでライブをすると貰えるのかな?』、『じゃあ持ち帰って友達のバンドマンに自慢しよう』と嬉しく思っていた」、「しかしどうやら近くのセブンイレブンでも1個1000円で売っているらしい。みなさんもぜひ」という話をしていたことも一応触れておこう。

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冒頭に書いたようにアルバム『MODE MOOD MODE』のレコ発ツアーであるため、演奏曲はアルバム収録曲が中心。それらと紐づけられた旧譜曲の配置、曲間のアレンジも絶妙で、セットリストを通して聴いた時にそれぞれの曲が一番素敵な表情を見せてくれるような構成になっていた。この日は特に、遊び心をチラつかせる斎藤のギターの音に揺さぶられまくったし、田淵智也(B)のコーラスがかなりよく出ていた印象。鈴木貴雄(Dr)のプレイはアドリブが盛りだくさんで楽しいが、縁の下の力持ちとしてバンドのダイナミクスを牽引するのも彼の役割。エンターテイナー精神を支える堅実さが垣間見える場面も多数あった。MCは一度のみという怒涛の展開のなか、3人が鳴らすのは、ストイックかつ小さじ一杯のユーモアが隠し味のように効いたアンサンブル。ステージ上方に設置された大型スクリーンには、心底気持ちよさそうな表情をしたメンバーの姿が度々映された。

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『MODE MOOD MODE』にはものすごくポップな曲もあるし、実験的でトリッキーな曲もある。そんなアルバムの温度感を反映してか、バンドの演奏は「緊張と緩和」、「期待と裏切り」、「静と動」的なコントラストを打ち出したものに。言い換えると、ちょっと狂気的にすら感じられるほどハチャメチャに鳴らしまくる瞬間と、集中力をグッと高めてメンバー同士が呼吸を合わせるシビアな瞬間とが交互に押し寄せてくるような感じだ。生で聴いて実感したのは、『MODE MOOD MODE』にはライブ化けする曲が多いのだということ、そしてその化け方がなかなか捻くれているということ。言ってしまえば、決して手拍子しやすいわけでもないし、リズムに合わせてジャンプしたり腕を振り上げたりしやすいわけでもない。観ている側としてはもはや曲芸に驚嘆・興奮している感覚に近いため、オーディエンスの色めき立つタイミングは人によって全然違ったりする。曲者揃いの新曲群は典型的な「ノリやすい曲」ではないのかもしれないし、「全員が一体となって盛り上がる」みたいなテンションではない。しかしだからこそ、予定調和を廃した上での心高鳴る瞬間が毎秒ごとに客席(あるいはステージ上)のあちこちで生まれていくわけだ。その空気感は言うまでもなく、今のユニゾンによく似合っている。

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そうしてセットリストの終盤に達した頃には、広大な場内が幸福感でいっぱいに。ユニゾンのライブにはいつも幸せな気持ちにさせられているが、それでも今回のハッピーエンドっぷりは群を抜いていたように思う。この光景は、ホールツアーも積極的にまわり、「席があっても最高のロックバンド体験はできる」ということを突き詰めてきた彼らだからこそ創りだせたものといえるだろう。「今日は楽しかったです!」とシンプルに伝える斎藤の言葉が爽快に響くなか、ライブハウス/ホール/アリーナの境界を無効化させる「通常営業」は鍛錬と工夫をサボらない姿勢の上に成り立つものなのだと改めて唸らせられた。全国ツアー「MODE MOOD MODE」は11月1日(木)、京都・KBSホール公演まで続いていく。(蜂須賀ちなみ)

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