ACIDMAN/日本武道館

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●セットリスト
SE Φ~introduction~
01.白い文明
02.ミレニアム
03.新世界
04.FREE STAR
05.prana
06.stay on land
07.イコール
08.赤橙
09.ユートピア
10.水の夜に(album version)
11.彩-SAI-(前編)
12.彩-SAI-(後編)
13.Λ-CDM(instrumental)
14.世界が終わる夜
15.最後の星
16.MEMORIES
17.空白の鳥
18.光に成るまで
19.愛を両手に
(アンコール)
En1.ある証明
En2.Your Song


「Λ(ラムダ)には『宇宙定数』っていう意味もあって。宇宙定数って何だ?ってここで説明してしまうと、とんでもなく時間がかかってしまうので……」と語りかけて日本武道館の客席を沸かせる大木伸夫(Vo・G)。「素晴らしいエンターテインメントも大好きなんだけど、もっともっと心の奥の奥――どんどん深くなっていくのも、音楽の魅力のひとつだと思います。今日はそんな世界を、みんなで一緒に作っていきましょう。よろしくです!」。そんな言葉に応えて武道館狭しと大歓声が巻き起こり、ACIDMANの真摯で切実なロック空間は太陽風の如き破格のエネルギーに満ちあふれていく――。

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昨年12月にリリースされた最新アルバム『Λ(ラムダ)』を携えて、4月から計16公演の全国ツアー「ACIDMAN LIVE TOUR “Λ(ラムダ)”」を開催してきたACIDMAN。そのツアーファイナルとして行われた自身6度目の日本武道館ワンマンライブは、宇宙の/人間の/生命の真実に迷いなく手を伸ばし続けてきた大木伸夫の想いが高純度で凝縮された、過去最高レベルにディープな――そして同時に、だからこそ過去最高に感動的なロックアクトだった。

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『Λ』のオープニングを飾るインストナンバー“Φ~introduction~”とともに舞台に登場した大木伸夫/佐藤雅俊(B)/浦山一悟(Dr)。冒頭から大木がギターを持たずにキーボードの前に座り、ピアノの音色を奏でながら歌い始めたのは“白い文明”だった。《もう一度太陽を探して/もう2度と終わらない言葉で》……囁くような静謐な歌声の前半部分から、ギターを構えて3ピースロックの極みの如き壮絶な轟音世界へと流れ込んでいく。ゆったりとしたリズム感越しに、武道館の広大な空間に悠久の宇宙の風景を描き出していくかのように、その音はどこまでも力強く、圧巻のエネルギーに満ちて轟いていた。
さらに『Λ』から“ミレニアム”を満場のクラップとともに響かせて武道館を揺さぶった後、「日本武道館にようこそ! 最高の夜にしようぜ!」という大木のコールとともに“新世界”、“FREE STAR”とキラーナンバーを連射、スタンディングのアリーナも1階・2階の客席も爆発的な高揚感で包んでみせる。

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『Λ』のすべての楽曲を本編に織り込んだこの日のアクト。途方もない熱量とともに鳴り渡った“FREE STAR”から、レーザー光線きらめく“prana”の神秘の光景へ流れ込んだり、初期の名曲“赤橙”から“ユートピア”のジャジー&ミステリアスな音空間へと観客を導いてみせたり……といった具合に、『Λ』を主軸としたライブ展開と既発曲群が有機的に絡み合って、これまでとは異なる奥行きと広がりを獲得していたのが印象的だった。
結成20周年アニバーサリーイヤーの集大成として昨年11月に開催した自身主催のロックフェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”」を振り返りつつ中盤に演奏したのは、インストナンバー“彩-SAI-”(前編)と、ACIDMANのロマンの結晶体の如き言葉を紡いだ“彩-SAI-”(後編)。メジャー3rdアルバム『equal』(2004年)に収められたこの2曲が、時代を超えて『Λ』の世界と共鳴していく図は、震えるほどに美しかった。

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この日のステージで、大木は多くのことを話していた。人はなぜ生まれなぜ死んでいくのか、神がいるとしたら何のために人間や宇宙を作ったのか――彼がずっと追求しているそんな命題と同じテーマを突き詰めた手塚治虫『火の鳥』への想いについて。現時点で宇宙の96%は未だ謎の物質でできていると言われる中、たった4%しかわかってないまますべてを知ったような気持ちで日々を過ごし、他者を憎み嫌い、ついには命さえ奪い合ってしまう人間の性について。「大きな災害がなくても、僕たちはいつか死んでしまう。とても悲しいけれど、それはとても愛おしいことで。生まれたこと、生きていること――それは美しいことであるって言い続けたいなと思います」……そんな言葉に続けて、インスト曲“Λ-CDM”、さらに“世界が終わる夜”へと進むごとに3人の魂のアンサンブルはいよいよ熱を帯び、大木の頬に一筋の涙が光る。抑え難く胸が震えた。

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「15本回ってきた集大成。最後の最後まで、全身全霊をこめてやりたいと思います!」という浦山のMCから、ライブはいよいよ終盤へ。ビッグバン級のスケール感とロックのダイナミズムが高次元で融け合った終盤の“最後の星”から“MEMORIES”、さらに“空白の鳥”へ――と再び『Λ』の世界が繰り広げられていく。
凄絶なるハードバラード“光に成るまで”で渾身の絶唱を響かせた大木は、惜しみなく降り注ぐ満場の拍手喝采に感極まった様子で、「ありがとうございます」の言葉も涙と嗚咽にかき消される。さらに熱い歓声が武道館一面に広がる。

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「こういうテーマを扱うのって、すごく難しいことではあるんだけど。もっとわかりやすいアプローチをすれば、もっともっといろんな人に届くのかもしれないんだけど、僕はこのやり方が好きで、このやり方しか知らなくて……そして、このやり方だからこそ集まってくれるみなさんが大好きです。本当にありがとうございます!」……大木はそんな言葉で万感の想いを伝えていた。
少年時代から宇宙への憧れと畏怖を抱き、掛け替えなき生命の謎に挑んできた大木。その思考と情熱をソリッドな3ピースのロックに重ね合わせながら、文字通り宇宙すべてと向き合ってきたACIDMANという表現のすべてが、満場のオーディエンスによって受け止められ祝福された決定的瞬間だった。

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本編のラストを飾ったのは、『Λ』の最終曲“愛を両手に”。4年前に大木の祖母が亡くなった時に作った、と話していたこの曲で《幸せだったかい?》と生死の垣根を越えてすべての人々に捧げられる豊かな歌声が、「与えられた、生かされたこの1分1秒を、大事に生きていきましょう」という大木のMCとともに深く胸に残った。

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一度舞台を去ったものの、鳴り止まない手拍子に応えて再度登場した3人。「本当はアンコールをしないつもりのツアーだったんですよね。武道館も最後まで『アンコールやらないぞ』って思ってたんだけど……結局出てきちゃってます!」(大木)と言いつつ、2014年に開催された「ファン投票上位の楽曲でセットリストを決める」というツアー「ANTHOLOGY」第2弾の開催が大木から発表されると、武道館が割れんばかりの歓喜の声に沸き返っていく。
最後は全精力を完全燃焼させるかのように“ある証明”、“Your Song”が炸裂、超弩級のシンガロングとともに大団円を迎えた。音楽が/ロックが描き得る領域を無限に押し広げてみせた、金字塔的なステージだった。(高橋智樹)

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