エレファントカシマシ/東京国際フォーラム ホールA

エレファントカシマシ/東京国際フォーラム ホールA

●セットリスト
第一部
1.俺の道
2.平成理想主義
3.新しい季節へキミと
4.旅
5.悲しみの果て
6.真冬のロマンチック
7.ふたりの冬
8.昔の侍
9.自由
10.i am hungry
11.ドビッシャー男
12.遠い浜辺
13.笑顔の未来へ
14.桜の花、舞い上がる道を
15.未来の生命体
16.旅立ちの朝
17.風と共に
18.俺たちの明日

第二部
19.デーデ
20.RESTART
21.ガストロンジャー
22.ズレてる方がいい
23.悪魔メフィスト
24.風に吹かれて
25.今宵の月のように

(アンコール)
EN1.RAINBOW
EM2.so many people
EN3.ファイティングマン


「2020年が始まって、いい顔で集まってくれてありがとうエブリバディ! ドーンとお届けしますので、最後まで楽しんでください!」
冒頭からいきなり“俺の道”の渾身の咆哮で東京国際フォーラムの広大な空間を震撼させた宮本浩次(Vo・G)は一転、満場の観客に晴れやかに呼びかけ、熱い拍手喝采を呼び起こしていく――。

東京国際フォーラム ホールA&大阪・フェスティバルホールの各2Days公演として開催された「新春ライブ 2020」の東京2日目(1月5日)。「40年近くの歴史の中から、いろんなエレファントカシマシをみんなに感じてもらえるような曲を、今日は用意してきました」と宮本もMCで話していた通り、これまでエレファントカシマシが体現してきた音楽世界の幹の太さと枝振りの豊かさを、バンドとオーディエンスが丹念に、そして圧倒的な高揚感とともに確かめ合うような一体感が、この日の国際フォーラムには確かにあった。

エレファントカシマシ/東京国際フォーラム ホールA

宮本浩次/石森敏行(G)/高緑成治(B)/冨永義之(Dr)の4人にサポートメンバー=山本幹宗(G)&村山☆潤(Key)の6人編成のバンドアンサンブルを軸として行われた今回の「新春ライブ 2020」。“俺の道”から“平成理想主義”へ流れ込み、続く“新しい季節へキミと”ではお馴染み金原千恵子ストリングスが加わり、宮本の歌に壮麗なダイナミズムを与えてみせる。
“旅”のエモーショナルな熱唱から“悲しみの果て”の珠玉のメロディを響かせ、「じゃあ、冬の曲を聴いてください」と“真冬のロマンチック”〜“ふたりの冬”、さらに“昔の侍”へ……と90年代の楽曲を弦の調べとともに色彩豊かに繰り広げていく。

シャッフルビートの“i am hungry”や性急な疾走感に満ちた“ドビッシャー男”、ストーンズ系のタイト&スクエアなビートが痛快な“未来の生命体”、といった楽曲群から浮かび上がる強靭なロックの核心。一面のクラップが弾け回った“笑顔の未来へ”、狂おしいほどの旋律を歌い上げる宮本の絶唱が観る者の感情を突き動かす“桜の花、舞い上がる道を”といった美麗なナンバーが指し示す、メロディメイカー=宮本浩次の唯一無二のクリエイティビティ。人生の一瞬一瞬の価値を「旅立ち」というイメージ越しに刻み付けるような“旅立ちの朝”の荘厳な緊迫感――。
「第一部」ラストの“風と共に”&“俺たちの明日”まで、エレファントカシマシというバンドの表現の多彩な広がりを凝縮した濃密な時間だった。「楽しんでくれてる様子が伝わってきます。ありがとうエブリバディ! 今年も不器用に、しかしドーンとやってやろうぜエブリバディ! 行こうぜ!」という宮本の言葉からも、この日のアクトの確かな手応えが滲む。

エレファントカシマシ/東京国際フォーラム ホールA
エレファントカシマシ/東京国際フォーラム ホールA

しばしのブレイクを挟んで「第二部」はデビューシングル曲“デーデ”でスタート。上手〜下手と広い舞台を歩き回りながら歓喜を煽る宮本の姿が満場のクラップを巻き起こし、客席が大きく揺れていく。
山本の硬質なギターサウンドとともに鳴り渡った“RESTART”から激烈ミクスチャーの極致“ガストロンジャー”、さらにハードバラードの名曲“ズレてる方がいい”、頭も体も痺れるほどにカオティックな暗黒ヘビーロック“悪魔メフィスト”……多方向に突き抜けたエレカシの音楽的なエッジ感の切っ先をよりいっそう高純度に結晶させたスリリングな展開に、国際フォーラムは戦慄と感激が渾然一体となった独特の空気に包まれていく。
そんな中でも宮本は「エブリバディ! みんなかわいいぜ、なんだか知らねえけどよ! カッコいいぜ!」と会場に呼びかけながら、その歌の隅々にまで覚醒感に貫かれたような激演ぶりを刻一刻と高めていく。壮絶な「第二部」を締め括った“風に吹かれて”&“今宵の月のように”の、ひと言ひと言噛みしめるように歌う宮本の真摯な歌声が、ソリッドに磨き抜かれたバンドアンサンブルとともに、ひときわ強く美しく胸に残った。

アンコールでは“RAINBOW”をストリングスとともにグラマラスに轟かせた後、“so many people”から“ファイティングマン”へ雪崩れ込んで大団円! 時代の移ろいの中で「揺るぎないもの」を求め続ける己の魂を丹念にメロディと言葉に焼き込んできた宮本とエレファントカシマシの旅路そのものが、エレカシにしか表現し得ないロックの生命力とともに高らかに鳴り響いた、至上のステージだった。(高橋智樹)

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