Eve/東京国際フォーラム ホールA

Eve/東京国際フォーラム ホールA - All Photo by ヤオタケシAll Photo by ヤオタケシ

●セットリスト
01. LEO
02. トーキョーゲットー
03. ナンセンス文学
04. アウトサイダー
05. sister
06. やどりぎ
07. 楓
08. 闇夜
09. 君に世界
10. 胡乱な食卓
11. fanfare
12. ドラマツルギー
13. ラストダンス
14. レーゾンデートル
15. 僕らまだアンダーグラウンド
16. バウムクーヘンエンド
(アンコール)
EN01. デーモンダンストーキョー
EN02. 白銀
EN03. 心予報
EN04. お気に召すまま



Eve/東京国際フォーラム ホールA
Eve/東京国際フォーラム ホールA

全国5都市をまわったEveの全国ツアー「Eve winter tour 2019-2020[胡乱な食卓]」。ファイナルの開演を待つ国際フォーラム ホールAのスクリーンには、MVに登場するキャラクター達のアニメーションが静かに流れていた。
開演時間を迎え、徐々に大きくなっていく音と、ループしていたキャラクターの行動が変わっていく様に、期待感が否応なく高まっていく。
そして映し出されるツアータイトル。街並みや洋館を描いた映像をバックに、不思議な特殊文字で表示されるキャストクレジットが表示される。「映画みたい」どこかの席の誰かがつぶやく。ただの音楽ライブにとどまらない何かが始まる――そんな、皮膚がびりびりするような予感がした。

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紫の光に照らされ、ステージにEveが現れる。紗幕に隔てられてぼんやりとしたシルエットしか見えないなか、始まる“LEO”、そして畳みかけるように“トーキョーゲットー”。奥のスクリーンと手前の紗幕を使った立体的なアニメーションの演出によって、物語の世界観に没入させられていき、夢を見ているような感覚に囚われる。
続く“ナンセンス文学”で紗幕が取り払われた時、一気に夢から引き戻されたようだった。青いパーカーに白のロングシャツの衣装でようやく姿をはっきりと見せたEve。明滅するライトの下に立つ姿が鮮烈で、さっきまで映像と音に呑まれていたのが、そうだ、Eveのライブなんだ、と感嘆と共にようやく実感する。
「東京いけるか!」というかけ声とともに、“アウトサイダー”に突入。ライブならではの迫力あるサウンドと歌声で力強さを増して、会場の盛り上がりを急加速した。

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「今日の時間、空間を共有できるのを楽しみにしていました」と挨拶し、初期に作った大切な曲、とギターを抱えて紹介したのは“sister”。バックに流れる映像は、MVの少年と少女の物語を教室の窓から眺めるような形に再構成されていて、届かない感情の切なさをさらに募らせる。
そこから “やどりぎ”、“楓”とミドルテンポの曲が緩やかにつながっていく。降りしきる雨音や下から水泡が上がってくる映像など、水をモチーフにした演出で幻想的な雰囲気のなかを歌い上げていく。

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「思い入れのある曲」と始まったのは、TVアニメ『どろろ』第2期エンディングテーマである“闇夜”。ストリングスを入れ厚みのある音で奏でる叙情的なバラードで、Eveが自身の新しい音楽の可能性を見せた曲でもある。
『どろろ』は、生まれる際に12体の鬼神に身体を奪われた百鬼丸が、妖怪を倒しながら身体を取り戻していく物語。スクリーンに映し出されるいくつもの空白の額縁が少しずつ埋まっていくさまが、身体とともに人間らしさを獲得していく百鬼丸を投影しているようで、≪きっと疑わぬ貴方 呪われた世界を 愛せるから≫という歌詞に、その旅を見守るまなざしのあたたかさがにじみ出る。最後に残った空白の額縁に重ねるように丁寧に歌われた≪取り戻すの≫という言葉が、より一層染み入った。

Eve/東京国際フォーラム ホールA

インスト曲“fanfare”を挟み、“ドラマツルギー”、“ラストダンス”で駆け抜けて、“レーゾンデートル”へ。ぱっとしない現実となんでもありのファンタジックな夢を行き来する主人公を描いたアニメーションと、肥大した自意識とその殻を破るよう発破をかけるようなメッセージの込められた疾走感あるメロディが、会場を圧倒的な世界観で呑み込んでいく。

「僕はライブの数が少なくて人前に立つのも苦手だけど」と前置きしつつ、ライブでファンと対面できることへの感謝を述べたEve。歌声はフラットだけれど、話しはじめると無邪気で愛嬌のある人柄がにじみ出て、そこにまた惹き込まれてしまう。
「最後、一緒に歌おう」と始まった本編ラストの“バウムクーヘンエンド”では、人と人外が共存する街で起こるボーイ・ミーツ・ガールを描いたMV映像が流れる。サビでの観客との歌をかけあいが、物語をよりドラマチックにしていくようだった。

Eve/東京国際フォーラム ホールA

アンコールは“デーモンダンストーキョー”でスタート。緑とピンクのライトが怪しく照らすなか、メガホン越しに歌いながら、ステージ上を歩き回って観客を盛り上げる。
手にギターを持ち替えると、「JR SKISKI 2019-2020」のキャンペーンテーマソングとしてリリースした“白銀”について「子どものころ(JR SKISKIの)ポスターを見ると『もう冬だな』と思った。この曲もそういう曲になったらいいと思います」と紹介。スピード感のあるサウンドと、雪がきらめくような玲瓏さを兼ね備えた曲だ。≪ゆこう≫という毅然とした声に手を引かれ、壮大な銀世界に飛び込んでいくようだった。
続けて、ガーナチョコレートの「ピンクバレンタイン」テーマソングに決定した“心予報”を披露。明るい期待感の詰まったノリやすいポップな楽曲で、初披露にも関わらず会場が一体となっていたのが印象的だった。盛大な手拍子のなか“お気に召すまま”が最後を軽やかに締めくくる。
「今日は来ていただいてありがとうございます。今日のライブは二度と戻ってきませんが、僕の心の中には残っていくと思います。また遊んでください」。シンプルだけれどあたたかみのある言葉を残し、Eveはステージを去っていた。

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その後、スクリーン上で“心予報”を使った「Eve×ガーナ」コラボのスペシャルアニメーション30秒SPOTを公開。さらに、初のアリーナワンマンライブとなる「Eve LIVE Smile」を5月23日(土)にぴあアリーナMMで開催することを発表し、最後まで歓声が続いた。

音だけでなく映像や光を駆使して作り上げられたEveのステージは、それぞれの楽曲の物語に入り込んでいくような、新しい「体験」だった。現実と非現実、リアルとファンタジー、「文化」と「おとぎ」。二つが融合し、そしてそこからさらに紡ぎだされる新しい音楽。表現の手段に囚われないことで実現した懐の深いカオスのような、Eveの底知れない世界を堪能した夜だった。(満島エリオ)

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