中田裕二/東京キネマ倶楽部

中田裕二/東京キネマ倶楽部 - All photo by 笹原清明(L MANAGEMENT)All photo by 笹原清明(L MANAGEMENT)

●セットリスト
01.トーキョー・イミテーション
02.手つかずの世界
03.硝子玉
04.共犯
05.playroom
06.ミス・アンダースタンド
07.螺旋階段
08.春雨よ
09.紫陽花
10.LOVE 2 HATE
11.アンブレラ
12.マテリアル
13.CRAZY ABOUT YOU
14.君無しじゃいられない
15.小春日和
(アンコール)
EN01.恋わずらい
EN02.空中分解


中田裕二/東京キネマ倶楽部
中田裕二のソロ10周年を記念した「YUJI NAKADA 10TH ANNIVERSARY SPECIAL LIVE vol.3“中田裕二の椿屋探訪”」。その名の通り、中田裕二が2011年に解散した椿屋四重奏の楽曲のみでライブを行うという、一夜限りのスペシャル企画だ。4月17日、彼の40歳の誕生日に行われたvol.1では中田の音楽活動を支えたミュージシャンが次々と登場し、アンコールではなんと椿屋四重奏のメンバーも集結!(その模様は8月25日、映像作品としてリリース済) Vol.2ではBillboard Live TOKYOの1st/2ndステージでダブりナシの「裏ベスト」的選曲をたっぷり披露しただけに、今回の椿屋しばりは必然的かつ待ち望まれた企画とも言える。

中田裕二/東京キネマ倶楽部
中田裕二/東京キネマ倶楽部
陽が傾き始めた夕方5時過ぎ、しっとりと美しいギターリフに誘われ1曲目“トーキョー・イミテーション”で、ライブは幕を開けた。キラキラ艶やかな原曲のイントロとは打って変わった、気怠げな大人の色気を感じさせる熟成されたアレンジ。40歳の中田裕二が椿屋四重奏の楽曲を歌うとはこういうことか、と会場・配信問わず観ていた誰もが一瞬で理解したはず。

「ありがとう。どうもお久しぶりです。中田裕二です。ほんとに楽しみにしてました、『中田裕二の椿屋探訪』」という挨拶に続き、“手つかずの世界”、“硝子玉”と超初期ナンバーを披露。レゲエのリズムに、あえて前のめりの感情をのせ、もどかしさを巧みに表現した“硝子玉”――《血がたぎるのを押さえきれずに 雨に打たれて熱を冷ました》という若さが迸る生々しい叙情性が魅力だが、よりゆったりとした今回のアレンジは、一人称のジュブナイル小説を、俯瞰した三人称目線で描き直したような面白さがある。主人公は同じなのに、視点を変えるとこうも違うものなのか。
「23、4歳くらいのうら若き男子だった頃、背伸びして作った曲なんですけど、今歌うとすごくしっくりくると思います」と紹介された“共犯”。リズムが複雑に展開するAORに、ラップのスパイスを効かせた構成は、年齢的にも、時代的にも早熟すぎて、確かににやりとしてしまう。続く“playroom”のエリック・クラプトンばりの熟成感も、スパニッシュ・ギター風味の“螺旋階段”も、今の中田裕二にとてもしっくりくる。

この日のメンバーは、中田に加え、八橋義幸(G/The Uranus・Yoshiyuki & Megumi)、隅倉弘至(B/初恋の嵐)、張替智広(Dr/キンモクセイ・HALIFANIE)による4人(四重奏)編成。「よくぞこの仕事を受けてくれました。難しいでしょ、椿屋の曲」という中田の突っ込みに、「リハに通ってる時、部活に通ってる感じだった」と八橋は説明。メンバー紹介コーナーでは、隅倉が椿屋四重奏のドラム・小寺良太と元バンドメイトで、小寺を椿屋に紹介した張本人でもあることも明かされた。

中田裕二/東京キネマ倶楽部
中田裕二/東京キネマ倶楽部
ギターからピアノに楽器を変えた中田が歌う、初期名曲バラード“春雨よ”と“紫陽花”は、この夜の静かなクライマックスと言ってもいい。アレンジの変容が際立つ前半に比べ、後半は中田裕二のソングライティングの魅力と、椿屋楽曲のオリジナリティを表明するような、昭和歌謡の再評価ブームの昨今、注目すべき名曲たちが並んだ。
“アンブレラ”、“マテリアル”というダイナミックな楽曲でリスナーを包み込み、ハンドマイクを手に踊る“CRAZY ABOUT YOU”ではスウィングで客席を揺らし、「君無しじゃいられなーい!」と叫んで観客を指差す、ザ・ローリング・ストーンズ直系のグラマラスなロックンロール“君無しじゃいられない”では今この瞬間を陽気に祝福する。チャーリー・ワッツへの敬意を感じさせる張替のタイトなドラム・スタイルに少し胸が詰まった。

中田裕二/東京キネマ倶楽部
そんなアッパーな2曲を歌い終え、中田は言った。
「心配事が多いですけど、天気と同じでずっと続く雨はないのと同じように、ずーっとこれが続くわけではないので。(中略)少し心を軽くして」、「僕はいつも、そばではないけど、そばにいます」。
中田裕二の歌は、少しの間だけリスナーを雨宿りさせてくれる傘のようでもある。
《参ろうか 傘さして 入らんと 濡れちまう》という“春雨よ”を聴きながら、《大きな傘が必要さ/あの子の所へ/行くために》、《折れない傘が必要さ/あの子の所へ/行くために》という“アンブレラ”を聴きながら、そんなことをふと思った。水溜りに晴れ間が映るのに気づくまでの間、寄り添うことができる存在。

中田裕二/東京キネマ倶楽部
中田裕二/東京キネマ倶楽部
本編ラストは“小春日和”。《零しまいと空見上げて 失くしまいと握りしめて》、《まだ期待は鳴りやまない また次第に熱を帯びて》と夢に焦がれ、喪失感を抱えながらも明日へと踏み出す強さは彼の原点でもあり、表現は変われどその心は変わらない。ソロの始まりとなった“ひかりのまち”でも、最新曲“TWILIGHT WANDERERS”でも。アンコール“恋わずらい”、そして“空中分解”でアグレッシヴなバンド・サウンドで幕を閉じた彼は、「お次は最高の新曲持ってきますんで、待っててね」と次への旗印と笑顔を残して去っていった。(井上貴子)

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