まさに昨日=11月11日、同じくここAXでスタートした『TOUR MONDO ROCCIA '09-'10』。来年3月まで実に45本に及ぶ大ツアーの、今日はまだその2本目。とはいえ、渋谷に集まったオーディエンスの熱気は開演前からクライマックス! 「世界を震撼させた初期衝動のカタマリ、ロックンロールの原石が、ここSHIBUYA-AXに転がり込んできたぜ!」「転がる石に苔はなし! あらゆる障壁をロックンロールでなぎ倒せ!」という、ほぼ19時オンタイムで登場した前説おにいさんの熱血ブンガクめいた煽りにも、誰もが怒号のような大歓声で応えている。
そして、ほどなく4人がオン・ステージ……と同時に沸点突破のロックンロールがあふれ出す! まだツアー2日目ということで、セットリストは今後どうなるかわからないが、少なくともこの日「新しい歌をいっぱいやりたい! 新しい曲をいっぱいやりたい! 楽しんで帰ってくれよ!」とヒロトがMCでも言った通り、“ジャングル・ジャミン”“ジョニー・クール”“突然バーン”など新作『MONDO ROCCIA』の曲をセットリストに「混ぜ込む」というより、一気にひとかたまりやったかと思えば、過去曲をやり、また新曲をまとめてドーン! と一斉放射する……という畳み掛け感がキモなのだろう。だから、「あのね」だけで蒼くてもどかしくて視界を塗り潰すような恋心を描ききる“恋に落ちたら”も、「ヘイ! エロ! いいぞ!」の禁断(?)の大合唱を生んだ“エロこそすべて”も、ストーンズっぽいリフが印象的な“フンカー”含め、『MONDO ROCCIA』の曲は余すことなく全部出しきっていく。「新曲をこんなにまとめてやるのは珍しい……世界的にも珍しいことです! 前にローリング・ストーンズのコンサートを観に行ったら、新曲は1曲でした! 次の日行ったら0曲になってました!」というヒロトの話に観客もどっと沸いていくし、“鉄カブト”の切迫した言葉と歌にはフロアがぐつぐつ液状化したような狂騒ぶりを見せている。
『MONDO ROCCIA』は、もはやこれ以上削ぎ落としようがないと思われていたクロマニヨンズのロックンロールをさらに詞も曲もソリッドにして、そこに“酒じじい”の祭囃子や“恋に落ちたら”のディスコ・ビートなど貪欲な衝動と遊び心の赴くままにニュー・アイテムを積み重ねていったような、実にタフで冒険的な作品だった。前作では“スピードとナイフ”のモータウン・ビートをモノにしたメタル・ドラマー=桐田勝治も、まさか8ビートの化身のようなヒロト&マーシーの後ろで4つ打ちディスコ・ビートを叩くことになるとは夢にも思ってなかったことだろうし、それはベース=小林勝も同じだろう。そして、そういった楽曲群をシャレでも何でもない剥き身のロックンロールとして鳴らすことができるのも、他でもないクロマニヨンズだけだ。というマジカルな高揚感が、シンプルにして最強のギター・フレーズを次々に弾きまくるマーシーの姿からも、「楽しいね!」と事あるごとに言っていたヒロトの笑顔からも十二分に伝わるライブだった。
ちなみに。新作ツアーならではの演出ということで、巨大なオブジェがステージにどーんとおっ立っていた(これはぜひ現場で目撃していただきたいなあ)のだが、気になったのはそのオブジェそのものより、それの大きさと比較して改めて気がついたステージ・セットのコンパクトさだ。もちろん、桐田勝治の2バス・ドラム・セットは通常よりでかいが、バンドの機材はドラムと、そこに身を寄せ合うようにしてセットされたギター・アンプとベース・アンプ……基本これだけ。AXを思いのままに揺さぶってみせるバンドとしては驚異的なシンプルさと言っていい。そのシンプルなロックンロール・セットの後ろに、ばかでかいオブジェが「どうだ!」と言わんばかりに立っているのも、ある意味前述の『MONDO ROCCIA』の構造がそのままステージ化されたみたいで面白かった。
“くじらなわ”も“歩くチブ”もやらなかったことでさらにスピード感を増したロックンロール類人猿=クロマニヨンズのアクトは、20数曲をたった1時間半で熱風のように駆け抜けていった。『TOUR MONDO ROCCIA '09-'10』、次のステージは15日・岐阜club-G!(高橋智樹)