ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナー、アップルミュージックについて語る


海外では6月30日に、日本では7月1日にサービス開始となったアップルのストリーミング・サービス、アップルミュージックだが、開発に参加したナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーが開発の経緯や新サービスの特徴などについて語っている。

トレントはもともとドクター・ドレーのビーツ・エレクトロニクスが開発したストリーミング・サービスのビーツ・ミュージックのソフト面での開発に関わっていたが、そもそもこうした分野に関わるようになったきっかけを次のようにエンタテイメント・ウィークリー誌に語っている。

「人々がどうやって音楽を聴きたがっているのかっていう、この領域について考えるようになったのは00年代半ば頃で、この頃は妙な時代だったんだよね。俺のアルバムが1枚のプラスチック盤としてリリースされようとしてたのに、みんなはそんなものはほしがってなくて、たくさんの人たちは発売の2週間前に俺の音楽をさっさと聴いていたということに俺は腹を立てたりしてたんだよね。そういうことになる度に現状はビジネス・モデル間の移行期なんだとアーティストとして説得されるのにも疲れちゃったんだよね」

その後、トレントは限定的な無料配信、ライヴのチケットと音源のパッケージ販売などさまざまなリリース方法の模索を重ね、さらにビーツ・ミュージックではおすすめプレイリストなどの機能の開発なども行ってきたが、送り手側のおすすめを有料サービスとして販売しようとしてもユーザーはそうしたものには関心を示さないなどといった壁にもぶちあたったという。しかし、有料ストリーミングにおける定額サービスが定着していくことは間違いないと断言していて、「最後に勝つのは定額購読だと思うよ。固定額でこの世にある音楽を全部楽しめるというアイディアは素晴らしいとしか思えないからね」と語っている。

また、その後のアップルとの開発作業も、アップルが非常に協力的だったおかげで包括的なものが設計できたと振り返っていて、自分でいろいろ探してみる気にはなれないような時にはさまざまなお勧めや一般に聴かれているものがわかるような、レコード店のようなスペースを作ることができたのではないかと語っている。そうした意味で、ビーツ・ワンというラジオ・サービスもアップルミュージックで提供できるようになったことをトレントは喜んでいて、特にBBCラジオのDJとして有名だったゼイン・ロウがこのビーツ・ワンに参加した意義を次のように語っている。

「1年半くらい前にツアーに出てたんだけど、BBCでゼインの番組を聴いてたら、いろんなことを思いついたんだよね。まず、こんなすごいラジオ局はアメリカにはないってことだよ。ポップ・ミュージックのヒット曲のあとに、まるで誰も知らないような曲がかかったりして、それを繋ぎ合わせてるのが大の音楽ファンのゼインなんだよ。聴いてる俺も迎え入れられてる感じがするんだよね。世の中に背を向けてる感じもなければ、メインストリーム一点張りでもないし、エリート意識みたいなのもないし、隙間を狙ってる感じもないんだよ。こんなのがアメリカにもあったらどうだろうって俺は思ったんだ。世界規模でこういうのをやったらどうだろうってね。しっかり丁寧にやって、誠実にやって、『市場リサーチと統計によれば……』なんてことは誰もいわないことをやったらどうだろうって。っていうのも、市場リサーチと統計についてなんて誰もどうだっていいからなんだよ」

また、ここ数年取り沙汰されているストリーミングにおけるアーティストやソングライターの取り分の問題についてトレントは「アップルではしっかり支払われるようにしたいというアーティストの側に立ってるんだ。それはものすごく大切にしてることだよ」と説明していて、「俺の子供たちにはミュージシャンは実際にやっていける職業なんだと思ってもらいたい」とも語っている。