【コラム】今、サザンオールスターズが伝える「ライヴに懸ける想い」とは?

【コラム】今、サザンオールスターズが伝える「ライヴに懸ける想い」とは?

つくづく、素晴らしいツアーであった。2015年4月の愛媛県武道館から、追加公演となった22年ぶりの日本武道館における2デイズまで、全国23公演で繰り広げられたサザンオールスターズの「おいしい葡萄の旅」。この1月6日に、そのライヴ映像作品がリリースされる。通常盤はBlu-ray2枚組、もしくはDVD4枚組という構成で、福岡・東京ドームを中心としたドーム厳選映像1公演分と、日本武道館の1公演分、計2公演のステージをたっぷり楽しめる内容だ。

桑田佳祐が日本語の歌詞に強いこだわりをもって臨み、豊穣なバンドグルーヴと交わることで、これまで以上にしなやかで普遍的なメッセージ性を育むことになった傑作『葡萄』。それは、土着の情緒と舶来の音楽が織りなす「歌謡曲」の歴史にサザンを位置付けることにも成功したわけだが、珠玉のメロディに乗せて《夢と希望を五線譜に書き込んだら/新しいふたりの出発(たびだち)の日に/燃える太陽がロックンロールを踊っている》と歌われる“はっぴいえんど”にしても、ミュージカル仕立てのストリングス入りタンゴで物語を描ききる“天井棧敷の怪人”にしても、原坊がハンドマイクでダンサー陣と優雅に歌い踊る“ワイングラスに消えた恋”にしても確かな肉感・躍動感をもって、ステージの生命力を担っていた。

多くの公演で、終演間際に桑田がこう告げるシーンも映像に残されている。「みんな、死ぬなよー! 絶対死ぬな」。そんなの、無理だ。遅かれ早かれ、命あるものは100パーセントの確率で死ぬ。でも、そういうことではないのだ。「絶対に死なない」という決意を持って生きることは、死なないための選択肢を選び続ける、ということなのだ。平和への思いが強く立ち込めたライヴだったからこそ、そんな桑田の未来に向けた意志の迸りは鮮烈で、感動的であった。

それだけではない。完全生産限定盤「“葡萄 完熟ギフト”BOX」のボーナスディスクには凄まじいドキュメンタリー映像が収録されているのだ。特典とかボーナスといった気軽なノリで見ることを憚られる、何ならこのドキュメンタリーだけで劇場公開されてもおかしくほどの濃さとクオリティである。「日本語の歌詞は最終兵器」と語る桑田、その直後、カメラはサザンの姿ではなく、“平和の鐘が鳴る”の演奏に聴き入り、噛み締め、歌を口ずさむオーディエンスの表情を捉えている。これがサザンオールスターズという「現象」の全貌であり核なのだ、と言わんばかりに。

ライヴ全体をとことんシビアに、かつ同じくらいの愛とユーモアをもってディレクションする桑田。それに全力で応えるメンバーやスタッフ。余りに幸福なコミュニケーションがそこにはあって、生々しくタフな舞台裏映像なのにドラマティックだ。このドキュメンタリーは、熱心なサザンファンのみならず、すべてのバンドマンや音楽ファンにとって、共有財産と成りうる貴重な作品である。(小池宏和)

※記事初出時、内容に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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