【コラム】もう一度横山健と遊ぼう! 3.10武道館を再検証する

『DEAD AT BUDOKAN RETURNS』 発売中

『DEAD AT BUDOKAN RETURNS』ティザー映像はこちら。

映像で振り返る8年ぶりの武道館今年の3月10日、Ken Yokoyamaが8年ぶりに日本武道館に立った。映像作品『DEAD AT BUDOKAN RETURNS』の序盤、鮮烈極まりないパンクサウンドで“Maybe Maybe”を放った直後、じっくりと奏でられる“Save Us”のイントロに、何を求められるでもなく当たり前のようにオーディエンスの盛大な歌声が巻き起こって、思わず目頭が熱くなってしまう。

メディア露出も積極的に行い、ベテランのパンクスとして、より人目につく場所へと進み出てきたKen Yokoyamaが、武道館への帰還を果たすのはとても自然な流れのように思えていた。だから、そのつもりで当日のライブレポートを書いた(こちら→http://ro69.jp/live/detail/140411)。でも、メンバーのナイスな一挙手一投足を捉え、フロアにもガンガン進入してオーディエンスの熱狂を伝える今回の映像作品のカメラワークは、ライブ当日に感じたこととは少し違った考え方を促してくれる。


「遊び場」を作り、守るために歌うリクエストを募って“Running On The Winding Road”に“Stay Gold”を連発し、あらゆる世代の声と交感するような場面がもたらされると、「自分がキャリアを更新している証」として“I Won’t Turn Off My Radio”を繰り出す。でもそれは、決して義務感に背中を押され、期待に応えるためだけにやるのではなく、真に楽しい遊び場が作り上げられてゆく光景だ。横山健は、一貫してそんなふうに人々の遊び場を作り続けてきた。「この近くにさあ、千鳥が渕ってとこがあって、もうちょっと、あと何週間かすると、桜がめちゃ綺麗なんだよ。もちろん武道館もだけど、日本大好きだぜ、俺」。そんなふうに告げて、バンドは“Cherry Blossoms”へと向かっていく。

ライブという楽しい遊び場を増やすこと。日本という楽しい遊び場を失わないこと。映像作品を通して見えてくるのは、そんな自由のための闘いである。3・11に寄せる思いも、メディア露出も、すべてはその自由に繋がっているのだ。エンドロールが流れた後には、リハーサルのドキュメンタリーや終演後のインタビュー映像も収められており、横山健の拘りと丸裸の心情が語られている。『DEAD AT BUDOKAN』DVDは、Ken Yokoyamaというベテラン・アーティストが全身全霊を持って挑んだ「遊び」と「自由」の記録である。(小池宏和)