【コラム:欅坂46】画期的シングル3曲で辿る、今あらためての入門テキスト

『二人セゾン』通常盤 発売中

まず最初に、そもそも欅坂46とは?
①乃木坂46に続く、坂道シリーズ第2弾
秋元康総合プロデュースの女性アイドルグループ・乃木坂46に続く「坂道シリーズ」の第2弾。当初は「鳥居坂46」というグループ名でメンバーを募集していたが、2015年8月21日、オーディション最終合格者お披露目の場で現名称に変更され、現在、「欅坂46」と「けやき坂46」(通称:ひらがなけやき)の2グループ制で活動を行っている。

②個性よりも統一感
センターの座を目がけてメンバーが勝ち上がっていくドラマ性といった、「個」の動きを見せることによってグループとしての活発さを獲得していったアイドルも多いが、欅坂46はそうではない。女声の重なりを活かした曲のつくり、一枚絵のようなダンスのフォーメーションなど、「集団」の気迫に焦点を当てているのが他のグループとの相違点だろう。喩えるなら、絵本の『スイミー』に近い感じ。48グループや乃木坂46での経験が活かされているのだろう、よりコンセプチュアルな世界観を実現している。

③センター・平手友梨奈という存在
では、陣を敷いてまでして彼女たちが戦う相手は誰なのかというと、それこそがすでにリリースされているシングル3枚で敵として描かれてきた存在=「大人」であり、時代の空気とも言い換えることができる。そして、『スイミー』における「目」となる真っ黒な魚は誰なのかというと、現時点では間違いなく、センターを務める平手友梨奈だろう。2001年6月生まれの15歳。「欅坂46」21名のメンバーのなかでは彼女が最年少である。


3枚の画期的シングルで示した戦いの軌跡
①“サイレントマジョリティー”で見せた鋭い眼差し
デビュー曲“サイレントマジョリティー”では平手の強い存在感が話題を呼んだ。ミュージックビデオ公開時にはAKB48・渡辺麻友も「えっセンターの子14歳なの。すごっ。どんな人生歩んできたの」とツイートしていたが、何もかもを射抜くような鋭い眼差しは確かにインパクト抜群だった。1:10~が印象的だが、欅坂46の振付師であるTAKAHIROはこのシーンのイメージを平手に説明する際、『民衆を導く自由の女神』や、モーセが海を割り紅海を渡った様子の絵画を見せたのだそう。

“サイレントマジョリティー”ミュージックビデオ

②抑圧と解放のコントラストを描く“世界には愛しかない”
Aメロからポエトリーリーディングという意表をつくオープニングの“世界には愛しかない”は、曲が進むにつれて、ひとり、またひとりとフォーメーションに加わっていくような構成。光と影、太陽と雨粒、校舎内と草原――など、「抑圧と解放」を象徴するようなコントラストが多く用いられるこのミュージックビデオで印象的なのは、真っ白な衣装を着たメンバーが集うラストシーンだろう。毅然とした佇まいから放たれる《「僕は信じてる。世界には愛しかないんだ。」》という台詞は、“サイレントマジョリティー”のシリアスさとはまた異なる鮮やかさで、戦地へ赴く少女たちを表現している。

“世界には愛しかない”ミュージックビデオ

③“二人セゾン”が描く「個」の重なりと新たな季節
クラシカルバレエ風の振り付けが採用された“二人セゾン”。ミュージックビデオではメンバーの笑顔が解禁され、個々の表情やダンスがピックアップされるシーンも格段に増えた。2番Bメロの超重要箇所で歌われる《一瞬の光が重なって/折々の色が四季を作る/そのどれが欠けたって/永遠は生まれない》というフレーズはまさに欅坂46そのもの。陣を敷くからといって「個」が死ぬわけではない。むしろ「個」がそれぞれの色を持つことにより、そのフォーメーションは 「永遠」という名の完全体に一層近づいていく。意思表明の側面が大きい前2曲とは異なり一般的な恋愛ソングとして受け取ることのできる曲ではあるが、そんな中でグループの物語を美しく浮かび上がらせている点が、この曲が秀逸である理由のひとつだと思う。

“二人セゾン”ミュージックビデオ


彼女たちの物語はこれからどこに向かっていくのか
今回紹介した3曲はどれもシングル表題曲だが、多彩なカップリング曲も無視できない。なぜなら、ほかのメンバーから遅れて活動開始した長濱ねるの姿と重なる“乗り遅れたバス”、今年1月21日付でキャプテン&副キャプテンに就任した菅井友香&守屋茜がカップル役を演じる“手を繋いで帰ろうか”、今泉佑唯と小林由依のフォークギターデュオ「ゆいちゃんず」による“渋谷川”“ボブディランは返さない”――など、平手以外のメンバーが「目」を担っているからだ。周到なコンセプトと幅広いアプローチの実現のため適宜陣形を変える手法によって、欅坂46の世界にはどんどん隙がなくなっていくのではないか。初ワンマンも終えたここからそれがどう変化していくのか、引き続き要注目です。(蜂須賀ちなみ)