『関ジャム』で佐橋佳幸×HISASHI(GLAY)×MIYAVIが伝えたギターの炸裂する魅力

「音楽の楽しさ」の核心を時にアカデミックに、時に面白おかしく、時にマニアックに、テレビ地上波を舞台に毎週展開し続ける『関ジャム 完全燃SHOW』、6月11日放送回のテーマはついに来た「ギタリスト特集」!
これまでにもベースやピアノなど個別の楽器に焦点を合わせることはあったが、バンド楽器の中でも花形の「ギター」を取り上げた今回のオンエアは、前述の「アカデミック」「面白おかしさ」「マニアック」のメーターを全部MAXに振り切ったような内容だった。

この日は「裏方ギタリスト」代表の凄腕:佐橋佳幸、「GLAYギタリスト」:HISASHI、そして「ソロギタリスト」代表:MIYAVIといった名手3人がゲストで登場。
ピック弾き/指弾き/爪弾きといった弾き方の種類によって、またビブラート/スライドなど数々のテクニックによって、ギターの可能性は無限に広がる――ということを、辣腕ギタリストたちが挨拶代わりに、あたかも手品の種明しの如く鮮やかに実践してみせる。

自分自身、下手の横好きでギターを触ってきた人間として「チョーキング」(弦を押さえたまま持ち上げて音程を上げる)、「アーミング」(トレモロアームで音程を上下させる)といった用語は基礎知識として持っているし、今も音楽誌の原稿中では「カッティング」「タッピング」「スラップ」くらいの用語は普通に使っている。
しかし、それが関ジャニ∞/古田新太/塚地武雅/内田理央といった面々が勢揃いした地上波のテレビ番組から流れてくると、世間的にはマニアックであるはずのギター用語の数々がお茶の間レベルの基礎知識として共有されていくような、勝手に嬉し恥ずかしいような、実に不思議な感覚に陥る。

小田和正“ラブ・ストーリーは突然に”、藤井フミヤ“TRUE LOVE”、福山雅治“HELLO”、川本真琴“1/2”といったポップスタンダードのあまりにも有名なイントロを作り出した際のエピソードを惜しげもなく語る佐橋。
大倉忠義をして「何が起こってるのかわからん!」と言わしめた超絶タッピングを繰り広げたMIYAVIは、“Live to Die Another Day -存在証明-”でペダルとビブラートを駆使した「殺陣の世界観を表現した奏法」を披露、音楽家としての不屈の探究心を窺わせていた。
「越冬するツラさ」をイメージして作られたというGLAY“Winter,again”のイントロで雪景色も吹雪も表現してみせたHISASHIは、お馴染みのアルミボディのTOKAI TALBOに搭載されたサスティナーや光線銃サウンドなどの機能でスタジオを沸かせてみせる。
HISASHIが繰り出す“誘惑”の7拍子のリフに佐橋&MIYAVIが乗っかってセッション状態に突入した瞬間は、まさに村上信五の「めっちゃギターで会話してましたもんね?」という驚きの言葉に象徴される名場面だった。

MIYAVIが弦だけでなくボディもタッピングでパーカッションの如く鳴らしてみせた“ルパン三世のテーマ”、HISASHIがロックギタリストらしからぬ効果音職人(?)ぶりを発揮した「踏切の音」、「『ドラえもん』でスネ夫が自慢する時のBGM」……など、隅々まで余すところなく最高だったこの日の『関ジャム』。
ジャムセッションでは、渋谷すばる(Vo)、丸山隆平(B)、そしてHISASHI/MIYAVI/錦戸亮のトリプルギターというラインナップで、BOØWYの名曲“MARIONETTE”!
「もう、めっちゃ嫌なんですよ!」、「今日、初めてボイコットしようかなと思いましたね」と「布袋寅泰役」のプレッシャーを語っていた錦戸だが、演奏前のMIYAVIの「音で分かり合える」という言葉そのままに、3人のギターサウンドがせめぎ合い高め合っていたのが印象的だった。

今回の『関ジャム』に影響されて、家の隅でホコリをかぶっていたギターを思わず手に取らずにいられなかった人が、世代を超えて少なからずいたのではないかと思う。自分もまさにそのひとりだった。ギターを弾くことは音楽であると同時に、魔法でもあり、共通言語でもある――という楽しさを、この日の映像は改めて伝えていたからだ。(高橋智樹)