エレカシ・宮本×爆笑問題・太田の対談を観た。ふたりの共通点と揺るぎない哲学とは?

エレファントカシマシが7月13日放送のNHK『SONGS』に出演し、ボーカル・宮本浩次と爆笑問題・太田光との対談の模様がオンエアされた。

「太田がどうしても会いたかった人」という紹介の元、宮本が収録スタジオに登場したが、このふたりの対談はこれが初めてではない。もっと以前、1999年に発売された太田の自伝『カラス』で初対談を果たしている。そしてその初対談も「太田のたっての希望」で実現したことだった。この初対談を終えた時に太田は「宮本さんはこれからもっとメジャーになっていく途中の時期だと思った」と感想を述べていたが、それから18年経ち、エレカシも爆笑問題もオリジナルな表現者としての確固たる地位を確立した今、一体どんなことを話すのか。『SONGS』放送が決定した時とても興味深かったし、なんだかワクワクした。

番組冒頭、両者が握手を交わし、対談がスタート。デビュー時期が1988年と同じなので、お互い30周年を迎える。最初から太田は大声を出して笑っていて、楽しくて仕方がないという表情を見せていた。

まずは出会いの話へ。爆笑問題が司会を務めていたNHK『POP JAM』にエレカシが出演したことが最初で、台本を無視してMC席へ割って入ってくる宮本に対し「予定調和はつまらない」と思っていた太田は内心大喜びだったという。「ああこの人はサービス精神で楽しませようといろんなことをやる人なんだな」との印象を受けたという太田の話を、いつものように顔をしかめ、じっくりと聞く宮本。

続いて、話は売れない時代の苦い思い出に。先日映像作品がリリースされた、エレカシの1988年渋谷公会堂ライブで宮本が毒付く映像も流れる。一方、爆笑問題が1993年に出演した『NHK新人演芸大賞』での初々しい漫才の映像が映し出されると、太田は「田中は舞台で視線を下げているからダメ。客の方を見ているのがいい漫才なんだ」と持論を展開。宮本はそれを聞きながら太田の真似をするように目線を前へ向けて実演して見せ、太田はその姿を見て「だからってずーっとそっち見なくても」と突っ込む、ちょっとした漫才の掛け合いのような一幕もあった。

そんな時代を経て、宮本のターニングポイントとなったのは、当時コンビニで自分の曲(“奴隷天国”)が流れてきて、「これちょっと(売れるの)難しいかな」と思った時だそう。そして爆笑問題も「爆笑問題は使えない、テレビじゃ危なすぎる」と言われた時代があり、当時の気持ちを「若いからこれで世の中変えてやるみたいな、そんな意識があった」と振り返る太田を、真面目な表情で見つめる宮本。しかし両者ともどこかで「大衆を相手にしなければ意味がない」と判断した。それは世間に媚びることとはまた違くて、太田の漫才の話でもあったように「自分の足元」ではなく「前にいる観客」へ顔を向けたということなのだろう。

1曲目のスタジオライブは“今宵の月のように”。この曲がドラマ主題歌に起用され、テレビで流れた時、宮本は本当に嬉しかったと語る(この時に「すみません、自分の話ばっかりしちゃって」と宮本が恐縮したのだが、初対談の際もやっぱり「自分ばっかり喋っちゃって良いのかな」と言っていた)。そして、仕事に対する姿勢の話に及ぶと、太田は「若いうちはこだわるが、こだわりはつまらない」、「太田バカだなあでいい、嘲笑でもいいから笑ってくれればいい」という思いがあることを明かす。これも18年前の自伝の中で太田は「笑われることが許されなければ俺は生きていけない」といった詩を書いており、18年経って周りや立場が変わりゆく中でも揺るがない、元からふたりに染み付いている「哲学」のようなものを感じた場面だった。

知名度がそんなに高くなかったが、30年間ライブでずっと歌い続けたからファンの人が大事にしてくれる曲になってきたと宮本が語る“ファイティングマン”のスタジオライブを経て、太田は改めてエレカシの魅力を「歩いている感じがするところ」と語る。爆笑問題もブランクやトラブルの中でちょっとずつ歩いてきたからこそ、エレカシの曲は「すごく元気付けられるし、俺のやってることは間違ってなかった」と思えると語った。

最後には、新曲“風と共に”のスタジオライブを披露。ストロークで削れまくったアコギを抱え、ミディアムテンポのこの曲を宮本は魂を込めて歌い上げる。決して器用ではない部分を持ちながらも、目の前の大衆から目をそらさず、自分の表現を見せ続けてきた。そんなふたりの純粋さに改めて心打たれ、勇気づけられる対談だった。そして、時には風の吹くままに歩いてきた今までの道程を浮かび上がらせるこの曲と、これからの「行き先」へ続く光のように輝く、エンディングとして相応しいエレカシのパフォーマンスで番組は幕を閉じた。(渡邉満理奈)
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