ロラパルーザ、ここがすごかった! 途中退場のリアムから最終アクトのアーケイド・ファイアまで

1991年にジェーンズ・アディクションのボーカル、ペリー・ファレルにより初企画・初開催され、都市型フェスティバルの先駆けとなったロラパルーザ。

現地時間8月3日から6日にかけてアメリカ・シカゴで行われた今年の「ロラパルーザ2017」は、悪天候にみまわれつつも大盛況の内に終演。シカゴの音楽メディア「Consequence Of Sound」のレポートをもとに、主要なアクトのハイライトと共に紹介していきたい。


まずは初日に出演したヒッポー・キャンパス。バンドにとって最大のヒット曲である"Way It Goes"からいきなり開始するという強気のセットを披露。2014年末から活動を本格化させたにも関わらず、1stアルバム『Landmark』は今年に入ってリリースしたばかり、というこのバンドだが、その一方でこれまでもロラパルーザのほか、ボナルー、サウス・バイ・サウスウエスト、レディング&リーズ・フェスティバルなどさまざまなフェス出演を経験している。そのライブ巧者ぶりを見せつけるパフォーマンスを披露したようだ。

そしてリアム・ギャラガーも1日目に登場。セットの途中、開始からわずか20分でステージから降りてしまったことは先日本サイトでも報じた通りだ。この日歌った4曲は"Rock’n’roll Star"、"Morning Glory"、"Wall of Glass"、"Greedy Soul"。リアムは途中退場について、自身のツイッターでステージを途中退場したことを謝罪。前日のライブで喉の調子が悪くなり、声が出なくなったと説明している。


続いてのアクトはザ・ストロークスのニック・ヴァレンシが2016年から結成している別ユニット、CRX。パワー・ポップとメタルを融合させたラウドなサウンドをたたきつけたステージには、はじめは観客も少なかったものの終演までには大きく膨れ上がり、激しく盛り上がることになったという。演目は昨年リリースした『ニュー・スキン』からの楽曲となったが、目立ったセットはディーヴォのカバーの"Girl U Want"で、ニックがこのバンドの結成に至ったインスピレーションを感じさせたという。

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ここにきて、最近飛ぶ鳥を落とす勢いのアトランタ出身MCトリオ、ミーゴスが登場。落ち着いた夕方の時間帯だったため、大勢の観客が駆けつけ、さらにこの前にほかのステージに出演していたリアム・ギャラガーが早く切り上げてしまったためにその観客も詰めかけることに。

ところがミーゴスもまた出番が40分遅れることになり、会場は大混乱に。観客は一旦退場となったようだ。その後ミーゴスが登場すると、一旦会場を後にした観客も舞い戻り、もみくちゃの大興奮状態に陥ったという。締めの"T-Shirt"、"Bad and Boujee"、"Handsome and Wealthy"のメドレーでは会場全員が飛び跳ねている状態だったようだ。

そして初日のセカンド・ステージのヘッドライナーを飾ったのはロード。ところが出番前に天候が急変し、雷も鳴り響くどしゃぶりになってしまった。しかし、それでもケイト・ブッシュの"Running Up That Hill"のSEが鳴り、予定通りロードが登場。「わたしの名前はロードです。ニュージーランドから来ました。ここに立ててとても嬉しいです」と挨拶を伝えてから、景気づけに"Green Light"のイントロのみ披露。そのまま"Tennis Court"、ディスクロージャーの"Magnets"のカヴァー、"400 Lux"と順調な滑り出しでセットを披露していった。

その後ロードは「これから一度もやったことのないものをやるよ、ロラパルーザ! 」と宣言。しかし、ここで運営側から演奏の中止が伝えられてしまったのだ。ビジョンには観客に退場を指示するメッセージが流れ、ロードは「ファーック! 」と絶叫したそう。

LOLLAPALOOZA DAY 🌸

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2日目に登場したのはザ・レモン・ツイッグス

『ドゥ・ハリウッド』の楽曲を軸にしながらも、R・スティーヴィー・ムーアの"I’ve Begun to Fall in Love"、ジョナサン・リッチマンの"You Can’t Talk to the Dude"、ジョン・プラインの"Fish and Whistle"、ロッキー・エリクソンの"I Walked with a Zombie"など渋いカヴァーも披露し、60年代、70年代のポップ・ロックへの傾倒ぶりを発揮していたようだ。

2日目のヘッドライナーを飾ったのはザ・キラーズ。初日は暴風雨のため途中から開催中止となってしまったため、今年初のヘッドライナー(前日はミューズが予定されていた)としてプレッシャーもあったというが、ヒット曲とカバー曲で盛り上がるパフォーマンスを届けることに成功したようだ。


キラーズは9月22日に新作『ワンダフル・ワンダフル』のリリースを控えているが、新作からの楽曲は"The Man"だけで、他のセットでは自分たちに影響を与えたジョイ・ディヴィジョン("Shadowplay")やシカゴ出身のスマッシング・パンプキンズのカバー("Disarm")を披露した。

前日に出演が中止になったミューズに敬意を表し、ブランドン・フラワーズが「みんなは昨日ミューズを観逃したから、ちょっとなにか俺たちから埋め合わせができないかと思って」と"Starlight"のカバーも披露。また、"Somebody Told Me"や"Mr. Brightside"の定番シンガロング曲のではセットで一番の盛り上がりを見せたようだ。



3日目のロラパルーザ、まずはバンクスのアクトの紹介から。"Waiting Game"、"Fuck with Myself"、"Drowning"など1stアルバム『ゴッデス』と2ndアルバム『The Altar』の楽曲を織り交ぜながら披露した。お馴染みの赤い照明と黒尽くめの衣裳でエレポップR&Bを披露したというが、ダンサーとの異色な振り付けもまた見物だったようだ。ダークなエレポップと意図的にぎこちなくした振り付け、バンクスの長い長髪が印象的だったという。


メイン・ステージのヘッドライナーを飾ったのは、地元のシカゴ出身でケンドリック・ラマーに並んで若手ヒップホップの現在を代表するといってもいいチャンス・ザ・ラッパーだ。グラミー賞で最優秀ラップ・アルバム賞にも輝いた昨年の『Coloring Book』の勢いと、自身にとっては空前の勢いとなっている人気、そして客演したDJキャレドの最新シングル"I’m the One"の大ヒットもあいまって、ロラパルーザの歴史でも最大のひとつともいえる規模の観客が会場に詰めかけることに。


内容的には今年の夏に入ってから行ってきたフェスティバル・ライブにならった順当なものになったといい、序盤では自身も参加したカニエ・ウェストの『ザ・ライフ・オブ・パブロ』からの"Waves"、"Father Stretch My Hands"、"Ultralight Beam"も披露し、ゲストには盟友ヴィック・メンサやフランシス・アンド・ザ・ライツらが登場する一幕もあったという。もともとゴスペルからの影響を色濃く受けているチャンスだけに、終盤にかけての"No Problem"、"All Night"、"Summer Friends"の展開はシンガロングと踊りまくりの大盛り上がりになったとか。



ここからはロラパルーザの最終日、4日目を見ていく。まずはマギー・ロジャースのアクトから。シングル"Alaska"が大絶賛を呼んでの出演となったが、持ち歌が少ないため、最新シングル"On + Off"、EP『Now That the Light Is Fading』からの楽曲などをすべて披露する演目になったという。"Alaska"のエレポップで名を成しただけに、アコースティック・ギターによる弾き語りなどはかなりスペシャル感のあるパフォーマンスになったという。

Sneaking a peek at the @lollapalooza MAIN STAGE!!! See you at 230 chicago ⚡️🤘⚡️ 📷@brianfbenton

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続いては、2009年からジェイムズ・マーサーが唯一のオリジナル・メンバーとして実質的に率いているザ・シンズ。今年に入ってから新作『Heartworms』をリリースしているが、"Name for You"、"Half a Million"などの新曲のほかはほとんどがファーストからサードまでの楽曲で占められるセットとなって、長年のファンを喜ばせるものになったという。特に際立っていたのが2ndアルバムからの"Gone for Good"だったとか。

そして最終日にメイン・ステージのヘッドライナーを務めたのはアーケイド・ファイアだ。ロラパルーザではシカゴのライブハウスなどでアフターショーが開催されるのが名物となっているが、ヘッドライナーを務める前日3日目の夜には、「メトロ」というライブハウスで行われたウォームアップ・ライブにアーケイド・ファイアが出演。

このアフターショーで、アーケイド・ファイアは2時間にわたってパフォーマンスを披露した。新作『エヴリシング・ナウ』からの楽曲も積極的に取り上げながら、ジョン・レノンの"Mind Games"、レディオヘッドの"Karma Police"、デヴィッド・ボウイの"Oh You Pretty Things"のカバーなども披露しバンドの原点を堪能できるような内容になっていたという。

そして4日目、バンドはヘッドライナーとしてメイン・ステージに登場。7月にリリースしたばかりの新作『エヴリシング・ナウ』を引っ提げての出演となったが、実際に今年の出番のパフォーマンスを目撃してみると『エヴリシング・ナウ』はまさにフェスティバル用に設計されたアルバムのようにも感じられたようだ。「Consequence Of Sound」では、常に音も、あるいは表現における感情面も、より大きなスケールを求めてきたバンドであるアーケイド・ファイアがリリースした今回のアルバムは、ロラパルーザのメイン・ヘッドライナーという大きな規模の中でダイレクトに伝わるものになっていたと評されている。