My Hair is Badの両A面シングルのタイトルが『運命 / 幻』だと聞いた時、「流石だな」と感動した。2曲を対等に扱う「両A面」という形態で、永遠すら信じられるような「運命」と、一瞬の儚さの象徴である「幻」を並べるその感性。皮肉なことをするなぁと思うと同時に、なんて純粋で美しいのだろうと思った。どちらも本心だから、どちらかを裏にすることは出来なかったのだろうな。どうしたって嘘のつけない真面目なバンドだなとつくづく思う。

そして今日、タイトルだけでここまで想像させてくれた2曲のうち“運命”の方がラジオにて先行オンエアされた。「ドキュメンタリー」の如く実体験をそのまま曲にしている椎木には本当に申し訳ないなといつも思うのだけれど、やっぱり別れや終わりを悟った瞬間を歌った曲が本当に良いんだよなぁと思わせてくれる曲だった。人様の辛い体験を喜ぶのは気が引けるけれど、彼にその時の悲壮感ややるせない感情を言葉にし、さらに音楽にする強さと才能があったこと、そしてそれを支えてくれるバヤとやまじゅんがいてくれたことが本当に良かったと、そこまで派生してグッときてしまった。

目が合った瞬間、手が触れた瞬間、何かが壊れた瞬間、手を離した瞬間。本来なら過ぎ去っていくべきそんな一瞬を曲の中に閉じ込めて永遠にしてしまえる音楽ってやつは、素晴らしくもあるが少し残酷なのかもしれない。

ふたりの始まりに理由はいらなくても、終わりには理由が必要なんだな――聴き終わった後にそんなことを考えていた。早く“幻”も聴いて、このシングルの全貌を知りたい。9月6日が心から楽しみだ。(峯岸利恵)