ケンドリック・ラマーが「i-D」の取材に答え、オバマ元米大統領とトランプ米大統領について自身の思いを明らかにしている。
ケンドリックはまず、トランプ大統領の誕生について「俺にはよく……わからないんだ」と言葉を詰まらせながら、「みんな当惑したよね。(トランプが大統領になったことは)俺たちの道徳的観念というものを完全に無視した出来事だから」と続けている。
また、ケンドリックはオバマ前大統領の在職中にはホワイトハウスに招待され、ふたりきりで話し合ったことでも知られているが、その時のことを次のように回想している。
オバマと話しててさ、一番すごかったのは、「いやあ、ぼくたちがこうしてこの建物の中にいるってこと自体すごいことだよね? 」と言ってくれたことで、その言葉の重みに圧倒されたね。つまり、良識ある黒人がそこにふたりいて、でも、ふたりの生い立ちや背景は、絶対にこの建物の中に足を踏み入れることなどありえないと思われるもので。そこがシュールだったんだよね。
Kendrick Lamar - HUMBLE.
さらに他界したケンドリックの祖母が、黒人が実際に大統領にまでなって、そのホワイトハウスを自分の孫が訪れたと知ったらどれだけ驚いただろうかと述べ、次のようにも語っている。
そういうこと(ホワイトハウスに訪れたこと)が俺に自信をもたらしてくれるんだ。あのホワイトハウスに行って、オバマと話して、オバマの持っている知性を実際に目にして、それと俺だけじゃなくて、俺たちのコミュニティそのものに対して持っているオバマの影響力に実際に触れてみたことでね。
どこまで行けるのかという理想を掲げて、俺たちはここまでたどり着いたんだという達成感を得られるんだよ。オバマがホワイトハウスにいるというだけで、人として、やりたいことはなんだってできるんだという思いを解き放ってくれるんだよ。そして、それをやり遂げるだけの、機知と頭脳と知性も持っているとね。
しかし、今ではオバマも自分もホワイトハウスからは敵対勢力視されているのが現実で、「完全におかしな話だよ」とケンドリックは心境を明らかにしており、オバマとトランプとの違いを次のように説明している。
根本的な違いは、モラルや品格、主義原則、常識をどれだけ持ち合わせてるかっていうことにあるよね。そもそも人との接し方も知らず、人にやさしく、共感や思いやりを持って話しかけることさえできない人になんか、ついていけるわけないだろう?
Kendrick Lamar - LOYALTY. ft. Rihanna
しかし、そんなトランプが政権を握ったことは「俺の気持ちに火をつけるだけなんだ。俺が到達したいところまで焚き付けてくれるその火を、より強くしてくれているんだよ」とケンドリックは語っている。
なお、『ダム』を制作している時点でケンドリックがプロデューサー陣に伝えたことも明らかにしている。
「俺たちの世界とは違うところでも成立して、それでいて俺たち自身に忠実で、なおかつ挑戦的な作品にするにはどうすればいんだろう? 」ってね。
アルバムの音については本当に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいものにしたかったんだよ。これまで一度も聴いたこともないような音なのに、どこかで聴いたことのあるような音でもあるっていう。言ってることがわかってもらえればの話なんだけどね。
なお、『ダム』はリリース初週から米「Billboard」のチャート「Billboard 200」のトップ10に連続25週にわたってランクイン。4月のリリースから半年以上が経つ現在でも上位にランクインし続けている。