「打首獄門同好会」の楽しく生きる覚悟=めちゃくちゃ信頼できるロックであることについて

「打首獄門同好会」の楽しく生きる覚悟=めちゃくちゃ信頼できるロックであることについて

ロックバンドに魅了されるとき、いつでも決して外せない理由のひとつが「なんか楽しそう」というやつである。「なんか楽しそう」というだけで気がかりな存在になるし、何ならその楽しさをちょっとお裾分けして貰いたいし、自分なりにでも彼らのやっていることを理解しなきゃ、という気持ちに駆られる。ただし、こういうお気楽な話題の裏側にはいつでもヘヴィな現実がへばりついているもので、プロのアーティストが「なんか楽しそう」というだけで食っていくのは、ほとんど奇跡みたいなものである。

2017年もいよいよ大詰めに差し掛かろうというときに、「なんか楽しそう」と「しっかり支持を得て活動している」の両輪がそろって高速回転している幸福なバンドをひとつ挙げるとするなら、それは打首獄門同好会ということになるだろう。2004年に結成されすでに13年ものキャリアを経てきた彼らは、今年ミニアルバム『やんごとなき世界』を携えたツアーのファイナル公演を新木場スタジオコースト(2017年3月)にて行い、約1年後の2018年3月11日(日)に初の日本武道館公演を行うことを発表した。

武道館までの1年間に、『夏盤』、『秋盤』、『冬盤』、『春盤』と4作のシングルを四季連続発表(前2作はリリース済)することや、現在行われているツアー「戦獄絵巻」でこれまでに訪れていなかった地域含む47都道府県でのライブ制覇、さらに全国9地方フェス制覇といった目標を掲げ疾走している。もともとバンド結成10周年を記念して立ち上げられたYouTubeの番組企画「10獄放送局」では、「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO」での飲食店「10獄食堂」出店の経緯を追う壮大なドキュメンタリーも放送されてきた。

(こちらはシリーズ最終回の大作。時間に余裕のある方は第34回あたりから視聴することをオススメします)

本当にこれに尽きるのだが、なんか楽しそう。それにしても、会長こと大澤敦史(G)、河本あす香(Dr)、Junko(B)の3人から成るこのインディーズバンドは、なぜこれほどの破竹の勢いを見せているのか。これも、何か大きなきっかけがあってブレイクしたということではなく、むしろ打首が地道に築き上げてきたものがうっすらと徐々に積み重なり、もはや揺るぎない価値と認知を形成してしまった、というニュアンスの方が強い気がする。

インパクト絶大なバンド名のおかげもあって僕が彼らの存在を知ったのは、「FUJI ROCK FESTIVAL '09」のROOKIE A GO-GO(新人ステージ)にラインナップされたときだった。「うまい棒」の多種多様なフレーバーを連呼する“デリシャスティック”はこの頃からすでにライブの定番ナンバーとなっている。「生活密着型ラウドロック」を標榜する彼らの表現は、極めてエクストリームなサウンドと、それとは裏腹な、誤解しようのない衣食住のテーマ(主に食)をしたためた歌詞によって成立している場合がほとんどだ。


2015年のシングル『日本の米は世界一 / New Gingeration』に収録された“New Gingeration”では、「岩下の新生姜」の美味しい食べ方をレクチャーしているのだが、これはもともと、あす香がツイッター上で呟いていたものに岩下食品の代表取締役・岩下和了氏が反応し、熱い交流を経て岩下氏が音源化リリースを大々的に応援するという経緯があった(そのときの岩下食品ニュースリリースがこちら)。また、冒頭で紹介した『秋盤』収録の“ニクタベイコウ!”は、フードフェス「肉フェス」(2014年初開催からの累計来場者数は500万人を突破)の公式イメージソングとなっている。

会長・大澤を起点に、SNSや動画を通して発信される打首の活動姿勢は、ほのぼのとさせるぐらいにユルいヴァイブを受け止めさせるものだ。衣食住(主に食)という切実にならざるを得ないテーマと共に、楽しく生きる覚悟を「最初から」抱いていたからこそ、打首の表現は、切実に、楽しく社会に浸透し、今や揺るぎない支持基盤を築くことになった。打首の活動は今や、音楽という枠組みさえ超えて、広く「暮らし」や「カルチャー」そのものを創造するステージに到達していると言っていい。それは、かつてロックが新しいユースカルチャーだった頃と同じように、とても刺激的で、大きな影響力をもたらすものなのだ。(小池宏和)
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