矢沢あいの人気コミック『NANA』の実写映画化の主題歌であり、原作者の矢沢自身が作詞し、HYDEが作曲、そして主演の大崎ナナを演じた中島美嘉が歌ったこの曲。
楽曲そのものとしても、まぶしいポップスとして、疾走感のあるロックとして、バランスが素晴らしい上に、さらに『NANA』の青春ストーリーと中島美嘉の歌唱力、そしてナナのクールな役柄も相まって、多面的な魅力を発揮し、大ヒットとなった。
あれから13年。再び中島美嘉とHYDEがタッグを組んだ。
TVアニメ『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のオープニングテーマ“KISS OF DEATH(Produced by HYDE)”である。曲名を見ただけで、このふたりらしい仕上がりが想像できるが、蓋を開けると改めて、最強タッグであることを知らしめられる。ポップでありながらも、どこか妖艶な雰囲気は『ダーリン・イン・ザ・フランキス』の世界観に引き出されたところが大きいと思うが、“GLAMOROUS SKY”から時を経て、大人になった中島をHYDEが捉えたというふうにも聴こえてくる。
HYDEはL'Arc-en-Cielとして、VAMPSとして、ソロとして、様々な楽曲を生み出しているが、自身が歌う場合は、どんなポップソングでも軸足はロックに着けた楽曲や、コアなスパイスやニューウエーブなテイストを混ぜ込んだ楽曲に仕上げていると思う。“GLAMOROUS SKY”を聴いた時に驚いたのは、彼の秘めていたポップセンスが全開になっていたからだった。それを躊躇なくできたのは、歌い手が中島美嘉だったからだろう。
登場した頃から、歌声や存在感そのものがミステリアスだった彼女。だからこそ、思い切ってポップセンスを全開にしても、アーティスティックに昇華してくれるであろうという信頼感が、HYDEの中にはあったのではないだろうか? そして中島美嘉にとっても、HYDEの「ただ明るいだけではない」ポップセンスなら飛び込めるという安心感があったように思える。
世代もスタイルも違うけれど、「トップアーティスト」である立ち位置と、核にある「センス」は共通しているふたり。だからこそ、異色でありながら親和性の高いタッグということで、世の中にインパクトを与えたのだと思う。このふたつが重なり合うアーティストを音楽シーンにおいて探すとなると、なかなか難しい。
HYDEと中島美嘉は、幸運にも『NANA』で出会い、さらに再び『ダーリン・イン・ザ・フランキス』にてタッグを組むこととなった。ふたりのタッグそのものがドラマティックなゆえに、映画やアニメという作品とも相性がよいのだと思う。
今は“KISS OF DEATH(Produced by HYDE)”をじっくりと堪能しながらも、この先の化学変化を見たいと願わずにはいられない……たとえまた13年も待ったとしても!(高橋美穂)