堂本剛がファンクに見出した答え――『SONGS』でさらけ出された「本当の自分」

「アイドルなのに」でも、「アイドルだから」でもなく、あらゆる先入観や偏見から自由な場所で音楽そのものと向き合っている――それが今年の「サマーソニック」の堂本剛だった。遥か先の出口の光に向かって突き進むような彼と彼のバンドが奏でる圧巻のファンクサウンドは、何をやるにしてもトレンドやシーンの文脈と対象化されがちなこのご時世にあって、あまりに稀有なピュアネスに満ちていたのが何より驚きだった。そしてそんな彼が追い求める光の正体、堂本剛がファンクに見出した答えが明らかにされたのが、先週放送された『SONGS』だった。

「サマソニ」に出演したENDRECHERIは堂本剛の最新ソロプロジェクトで、今回の『SONGS』でも今年5月にリリースされたENDRECHERIのニューアルバム『HYBRID FUNK』収録の“Crystal light”と“HYBRID FUNK”、そして最新シングル曲“one more purple funk… -硬命katana-”がライブで披露された。SUPER BUTTER DOGマボロシ等での活動を通じて日本のファンクシーンを牽引し続ける竹内朋康を筆頭に、凄腕のミュージシャンが揃っているENDRECHERIは、バカテクを担保したスリリングな演奏の中にピースフルなセッション感覚を湛えているバンドで、「番組ホストの大泉洋のためのファンクを作って欲しい」という番組からの無茶ブリにも、「大はOh!、泉はSpring、洋はYo!、髪はMo-jya Mo-jyaだから…」と軽く打ち合わせした後に、即興で大泉に捧げる曲を作り上げてしまう阿吽の呼吸も最高だった。

スタジオでのリハ映像では、メンバーたちとソファーでダベっている堂本の終始リラックスした姿も。ENDRECHERIはプロフェッショナルな集団であり、同時に気のおけない仲間でもあることをうかがい知れる。「ファンクは余白が大事」だと堂本が言うように、余白で生じるハプニングを愛し、そこで仲間と関係性を育んでいくことで生まれるリアルな呼吸としてのグルーヴこそが、ファンクをファンクたらしめるのだということが、彼らの姿からは伝わってくるのだ。

しかし、堂本が自身の音楽を謳歌する境地に達するまでには、いくつもの挫折と葛藤があったことも番組内で語られていく。そしてその挫折と葛藤から救ったものこそが、ファンクだったと彼は言う。たとえば、堂本がリスペクトしてやまないファンクの帝王、ジェームス・ブラウンには“Get Up Offa That Thing”という曲がある。70年代の低迷期にあったブラウンが、原点回帰のファンクサウンドと共に見事な復活を果たす契機となったヒット曲だ。《そこから抜け出して立ち上がれ/プレッシャーを解き放て》と歌うこの曲は、「アイドルと本当の自分のギャップ」に苦しんでいた彼にとって、まさに福音のように響いたのではないだろうか。

アイドルが何でもできる時代だ。堂本自身もKinKi Kidsとして、ジャニーズのトップアイドルとして、歌に芝居にバラエティにと幅広い活動を続けている。でも、彼にとってのENDRECHERIのファンクとは、そういったアイドルの柔軟さや多様性とはちょっと異なる、ストイックな求道の感覚に満ちたものでもある。それは無防備なまでに彼自身と直結した表現であり、番組のナレーションにもあったように、「アイドルでもアーティストでもなく人間」としての堂本剛の透徹された場だということなのだろう。

番組後半では、彼がENDRECHERIとして初めて行った今年9月の東大寺ライブの貴重な映像も紹介されたのだが、奈良出身の堂本にとって特別な意味を持つ場所での特別なライブの最中、涙が止まらずに歌えなくなるシーンがあった。それは彼が16年前に書いたソロデビュー曲“街”の演奏中の出来事で、涙で歌えなかったのはこんな一節だった。

このカラダまだ行けるさ
ゲームはまだ終わっちゃいないさ
愛を見失ってしまう時代だ
自分を守り生きていく時代だ
何かを守る為に
愛を伏せるなんて不細工だ
(“街”)

昨年、突発性難聴を患い、活動を一時休止せざるを得なかった彼にとって、復活を果たしてついに立った東大寺の舞台で、この一節を歌った瞬間に込み上げてきただろう熱い想いは想像に難くない。

「本当の自分」をさらけ出すことは自由と解放を得ることだが、同時に痛みと喪失の矢面に立つことでもある。でも、そうであっても彼はこれからもファンクに、音楽に自分を宿し続けていくのだろう。番組最後のライブチューン、《今日までの道のりに咲いた残像の傷跡を/まだ知れない1秒の先の風と舞わせ舞おう》と歌う“HYBRID FUNK”の最後で見せた彼の晴れやかな笑顔が、何よりもそれを物語っていた。(粉川しの)

※記事初出時、表現に誤りがありました。お詫びとともに訂正いたします。
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