チッチ、アイナ、アユニの劇的ソロデビューで確信した! BiSHはまだまだ進化する

今、「楽器を持たないパンクバンド」として独創的な活動を続けてきたBiSHが巻き起こす、さらなる動きに注目が集まっている。セントチヒロ・チッチ、アイナ・ジ・エンドのソロデビューシングル『夜王子と月の姫 / きえないで』がリリースされ、アユニ・DがPEDRO名義でミニアルバム『zoozoosea』をゲリラ発売と、ソロ活動が開始されたのだ。アイドルグループからのソロデビュー、とだけ書くと特に珍しいことではないのに、なぜこんなにセンセーショナルなインパクトを放ち、事件性すら感じてしまうのだろうか?


まずは楽曲を紹介。チッチは、ルーツと公言するGOING STEADY / 銀杏BOYZの“夜王子と月の姫”を峯田和伸本人の承諾のもと、若手実力派ロックバンド・リーガルリリーによるアレンジと演奏でカバー。アイナの“きえないで”は、18歳の時に作詞作曲した楽曲を亀田誠治がアレンジして完成させた1曲。アユニ・Dは、全曲作詞を手掛けたミニアルバムをバンド形態でリリースし、発売記念ライブではサポートギターに田渕ひさ子を迎え、アユニはベースボーカルに挑戦した。
ざっと紹介しただけでわかるこのバラバラな個性に、まず驚かされるはず。でも、得てして「アイドル」とは理想を掲げて作られるもの。方向性なんてプロデュース次第だろうし、チッチとアイナのソロデビューも、きっかけは総選挙1位と2位の特典であり、プロデューサー渡辺淳之介のアイディアだ。デビューの事実だけでも十分話題になっただろう。
そんな中で3人のソロ「作品」がセンセーショナルなのは、この個性が、本当に彼女たち自身の内側、生きてきた生き様の中から生み出されているという「リアルさ」にある。ソロデビューという与えられた舞台で、「アイドルとしての理想像」ではなく、「アーティスト」として表現したいことを見事に抽出してみせたのだ。真っ白いキャンバスに、初めて自分の絵具だけで、ワガママに、不器用に、色が足りなくても、今しか描けない絵を思いっきり描いた処女作。それぞれが初期衝動をエネルギーに、限りなく純度100%の「自分」を表現した結果、ここまで多彩になる。だからこそ強く心が掴まれるのだ。


チッチはずっと抱いてきたパンク/オルタナティブロックへの憧憬を胸に、共演として今を生きるガールズバンド・リーガルリリーに声をかけ、その繊細な轟音と共鳴。彼女の透明な声と儚い少女性で、原曲を新たに生まれ変わらせている。
アイナは、18歳当時この曲を手探りで完成させたのだという。その無垢な思い出を核に、数々のコラボ経験などで磨いた歌唱力とポップセンスが爆発。MVでのコンテンポラリーダンスを思わせる全身での表現力は圧倒的だ。
アユニは、ベースという新しい武器とともに、己の言葉とスタイルを獲得。SNS社会で自己実現に悩む10代のストレスやジレンマを代弁してぶっ飛ばす勢いのパンキッシュなサウンドで、バンド/ライブハウスという未知の世界へ跳び込んでみせた。


アイドルのソロデビューという概念を超えて、ソロアーティスト3人のデビューと言っていいほどの刺激と可能性がある。――と言うと、BiSHのほうは?という話になるが、もちろんBiSHも止まらない。むしろこれだけの個性を開花させた3人が帰っても揺るがないどころか、その多様性を力にしてさらに進化するのがBiSHだ、と言い切れる。まさに10月10日からは全国ツアー「BRiNG iCiNG SHiT HORSE TOUR」がスタートし(ファイナルは幕張メッセ!)、12月5日(水)にはニューシングル『stereo future』がリリース。ソロワークの継続も心から願いつつ、さらに想像を超えてきてくれるはずのBiSHという存在に、注目し続けていきたい。(後藤寛子)
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