いざ、SL列車に乗りこんで東京へ向かおうとする四三と親友の美川秀信(勝地涼)を見送るシーンも凄まじいインパクトで描かれた。列車の窓から「行ってまいります!」と四三が言うと、実次は既に両の鼻から立派な鼻水を垂らしている。そして彼が「ばんざ〜い!」と叫んだ瞬間にその2本の鼻水も同時に舞い上がった。四三も大量の鼻水を流してそれに応える、暑苦しすぎるほどエモーショナルな別れのシーン(における中村獅童の熱演!)だった。
一方で、やがて東京生活でホームシックになった四三が夏休みに帰省した際に、その列車を春野スヤ(綾瀬はるか)が自転車に乗って猛スピードで追いかけたシーンも目に焼き付いた。袴姿で時速30キロを出したという綾瀬はるかのさすがの身体能力に視聴者からも大きな反響があったようだ。
上京したての四三と美川からは目にするもの全てにワクワクしているような様が伝わってきて、いつの時代も東京は、地方から来た多くの若者を魅了してきたんだなと思った。オリンピックどころか、スポーツさえも、何よりマラソンを知らなかった四三が、マラソンに出会った街、東京。このマラソンとの出会いは四三にとってかけがえのない青春の始まりでもあるのだろう。まだまだ始まったばかりの『いだてん』だけれど、どの場面にも登場人物の人情味と、生き生きとしたエネルギーが感じられるドラマだなとつくづく思う。(上野三樹)