KEYTALKの音楽はその桁外れのテクニックと音楽センスを理解するともっと楽しくなる

KEYTALKの音楽はその桁外れのテクニックと音楽センスを理解するともっと楽しくなる
ワンマンライブはもちろん、音楽フェスなども含めたイベントで一度でもKEYTALKを観たことがある人ならば、笑顔に溢れたダンス空間を作り上げることに関する彼らの圧倒的な力に関して、全面的に認めない人は、恐らくいないに違いない。しかし、熱心なファンならば、「KEYTALK=ライブが盛り上がるバンド」という、別に何も間違ってはいない認識に対して、「そこだけじゃないんだけどなあ……」という、どこかスッキリしない想いがあったのではないだろうか? なぜなら、このバンドの「盛り上がる」という部分は、確かな演奏、豊かな表現、ソングライティング力、サウンドアレンジ力――というミュージシャン、楽器プレイヤーとしての正統派のスキルとセンスに根差しているものであり、「盛り上がる」は自ずと辿り着いている非常に喜ぶべき結果ではあるものの、そこにばかりに着目すると、目を向けるべき大切な土台、本質をないがしろにするような感覚になるからだ。

かく言う僕もKEYTALKが大好きであり、ライブレポートの仕事のためにメモを取る必要がない時は、キャアキャア言いながらフロアではしゃいでいるのだが、「彼らの凄さを、どこかのタイミングでちゃんと紹介しないといけないなあ」という宿題を手つかずのまま先送りにしているような想いを、かなり長い間、抱き続けてきた。しかし、最新アルバム『DON'T STOP THE MUSIC』を彼らへのインタビューの準備の際に聴かせてもらい、良い機会が到来したのを感じた。この作品を主軸としながら、「KEYTALKって凄い!」という点について書き綴るとしよう。

まず、今さら強調することでもないが、あの4人は楽器プレイヤーとしてレベルがとても高い。派手なことは殆どしないものの、ツボを憎いくらいに押さえた音を的確に放つ巨匠こと寺中友将(Vo・G)。「ボーカリストが、そこまで弾かなくていいのに!」と言いたくもなる細かなプレイをしまくっている首藤義勝(Vo・B)。歌メロとは別の形で華やかさを添える裏メロ的フレーズを随所で炸裂させる小野武正(G・Cho)。「ハイハットの魔術師」という呼称を与えざるを得ない巧みなハイハットさばきを筆頭に、心地よいビートを両手両足で華麗に生み出し続ける八木優樹(Dr・Cho)。この4人に対して改めて脱帽せざるを得なかったのが、『DON'T STOP THE MUSIC』の1曲目“DE’DEVIL DANCER”だ。全員が自由奔放にプレイしているこの曲は、学級崩壊状態の賑やかな教室内で走り回っていた児童が、教師から出された問題に対して非の打ちどころのない解答をサラリと返すかのような空恐ろしさがある。はっきり言って、「弾き過ぎ」と言ってもいいくらいのフレーズが満載されているが、巨匠と義勝によるツインボーカルが鮮やかに浮き彫りにされていて、「歌モノ」としても燦然と輝いているのは、このバンドの4人各々のアレンジ力、フレーズの引き出しの多さとチョイスの的確さの証明だと言えよう。作曲者である義勝は、メンバーたちに「好きにやって!」とお任せしたそうだが、この方針の下で理想的な仕上がりとなるのは、決して容易なことではない。この曲に限らず4人各々の出し惜しみのないプレイで常に裏打ちされているからこそ、KEYTALKの曲をライブで体感した観客は、ライダーキック、スペシウム光線、かめはめ波、アンパンチが一気に繰り出されたかのような、桁外れの爽快感を味わうことができるというわけなのだろう。その最新型の“DE’DEVIL DANCER”は、KEYTALKのライブでものすごい風景を作り続けるに違いない。

KEYTALKというバンド名が、上原ひろみの曲のタイトルが由来であるということにも関係があるのだと思うが、実は彼らの音楽は、フュージョン的な風味を漂わせることがある。インディーズ時代の曲は、特にそういう部分が顔を覗かせることが度々あったが、メジャーデビュー以降は、その点が比較的抑え気味になっていた。しかし、『DON'T STOP THE MUSIC』には、この作風がかなり濃厚に香る曲がある。そのひとつが、義勝が作詞作曲をした“アカネ・ワルツ”だ。3曲分くらいのアイディアとフレーズを大胆に融合させているプログレッシブさがありつつ、キャッチーなメロディが伸び伸びと鳴り響いて、武正のギターヒーローぶりも炸裂しているこの曲は、「ロック」と言うよりも「フュージョン」という印象であり、でも、「やっぱりロック! いや、フュージョンかな?」……という無限ループでワクワクさせてくれる。また、巨匠が作詞作曲を手掛けた“旋律の迷宮”も、もの凄い。メンバーが全員で一丸となって交わし合っている演奏のタメとキメを経てエスカレートしていく熱量、漂い続けるミステリアスなムードは、良いヘッドフォンをしてじっくり浸ると、何とも言えない酩酊感を誘う。KEYTALKの深い魅力を発見する入口としても、この2曲は最適だと思う。

そして、4人全員が素敵なソングライターであるというのも、KEYTALKを語る上で見逃せない点だ。高校時代からの親友である八木に人類の限界を超えるドラムプレイを強いる曲であり、猛烈に速いBPM、湧き起こったイメージを一気に連射するかのように言葉を重ねる様がドラマチックな“DROP2”は、武正の作詞作曲。八木は巨匠と義勝のツインボーカルが余程好きなのだろう。ふたりのツインボーカルのスリリングな連携を盛り込むことへの情熱を、いつも感じる彼ならではの切り口が冴える“COMPLEX MANIA”――この2曲は、メインのソングライターである巨匠、義勝とは異なるテイストを目いっぱいに届けてくれる。そして、巨匠と義勝、各々の作風の違いをはっきりと感じさせてくれるということに関しては、今回のアルバムのラストを飾る2曲も興味深い。巨匠が手掛けた“桜色の街へ”、義勝が手掛けた“少年”――どちらも、瑞々しい美メロを堪能できるという点では、相通ずるものがあると言えるが、逞しい大人の男の温かい眼差しを感じる“桜色の街へ”は、作詞作曲のクレジットを見なくても巨匠が書いたことがわかるし、繊細に揺れ動く思春期の頃の感情を、心の奥底に抱き続けていることが窺われる“少年”も、どう考えても義勝の曲だ。このような作風の違いについていろいろ考えつつKEYTALKの曲に耳を傾けるのもなかなか楽しいので、特にマニアックな人におすすめしておきたい。

最新アルバム『DON'T STOP THE MUSIC』を実例として、KEYTALKについて一気に書いてみたが、過去の曲でも彼らのすごさは、当然ながら発揮され続けてきた。“太陽系リフレイン”は、山あり谷なしとも言うべき圧倒的な盛り上がりポイントの連鎖が、何度聴いても本当にとんでもない。“MABOROSHI SUMMER”は、起伏に富みまくった展開、大合唱を誘う必殺のメロディ、強力なダンサブルさが、高密度でギュウギュウと凝縮されている様が贅沢極まりない。冒頭からスラップをしまくるベースを筆頭として、演奏の出し惜しみを一切していないという点で、KEYTALKサウンドの代表格のひとつとも言うべき“MATSURI BAYASHI”。和的な情緒を湛えたメロディに豊かな彩りを添えている4人のプレイが、凄腕の絵師のような粋なタッチを煌めかせている“桜花爛漫”。リリースされてから数年経つが、《アルバラーバ》が何を意味するのかやっぱりよくわからず、なんでインドチックなメロディが挿入されるのかも理解不能なのに、耳にすると誰もがダンスの鬼と化してしまい、「なんかこれ楽しいからOK!」という思い切りのよい決断にノックダウンされずにはいられない“MONSTER DANCE”……挙げ始めるとキリがないので、これくらいにしておくが、「KEYTALKってすごい!」ということを心に留めつつ曲に耳を傾けると、彼らのことをますます好きになれるはずだ。(田中大)

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