星野源がミュージシャンと「おげんさん」の2役で出演した『NHK紅白歌合戦』を観た

星野源がミュージシャンと「おげんさん」の2役で出演した『NHK紅白歌合戦』を観た
令和になって初の『NHK紅白歌合戦』では、5年連続の出場となった星野源の、世界に向けた「ひとり二役」のパフォーマンスが特に印象的だった。

番組後半に登場し、まずは前年に続き2年連続となるお馴染み「おげんさんファミリー」がいつもの部屋から中継で登場。隆子(藤井隆)が年越しフェスに出演のため不在の中、お父さん(高畑充希)、雅マモル(宮野真守)、次男(三浦大知)、そして、10月の生放送にも出演したビヨンセ(渡辺直美)が登場。ビヨンセから、アメリカでも人気の『ドラえもん』の主題歌になっている星野の“ドラえもん”がリクエストされ、映画主題歌を経て2019年にはアニメ版の主題歌として再び老若男女に届いた星野の代表曲のひとつを紅白では初披露。星野のワールドツアーにも参加した手練れのミュージシャンたちが「子供たち」として演奏し、ファミリーが代わる代わるにボーカルを務める。明らかに即興で合わしているだろう、というダンスを踊りながら笑顔ではしゃいだり、印象的な《どどどどどどどどど/ドラえもん》というフレーズを動き回って歌う姿は、まさに家族がカラオケで音楽を楽しんでいるようでいて、幸せな密室空間が生まれていた。

星野がワールドツアーを振り返り、「音楽に国境は無いって思った」と語ると、場所を移し、NHKもある渋谷で一番高い、去年開業したばかりの複合施設「渋谷スクランブルスクエア」の屋上による映像に変わり、おげんさんから星野にバトンタッチ。10月にリリースされたEPから、“Same Thing”を披露した。ドームツアーを終え、燃え尽き症候群のような状態になった星野が、友人のスーパーオーガニズムと会議室で1日で作り、音楽を作る楽しさ、初期衝動のような感覚を取り戻した楽曲。タイアップも無く、もともとリリース予定も無かったというこの楽曲を、日本中から最も注目を集める歌番組で披露してしまう星野の無敵さと、《「楽しそう」って思うのも/「最悪だ」って落ち込むのも/どっちも同じことなんだ/それで大丈夫 それでいい》というメッセージが2019年の大みそかに届けられた意義を感じずにはいられない。

歌の2番ではヘリポートに移動し、芝生に寝転び仰向けになる場面も。「星野源 DOME TOUR 2019『POP VIRUS』」の東京ドーム公演の2ndステージで寝転び仰向けになった場面と重なって見えた。『紅白』をも遊び場にする星野が間違いなく今、音楽の世界で先頭に立ち、時代を更新していく一人であることを「おげんさん」とのひとり二役で改めて世間に示した見事なパフォーマンスだった。(菊智太亮)
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