ソロ・宮本浩次とバンド・エレファントカシマシ――歩みを止めなかったからこそ掴んだ果てしない未来

3月4日発売『宮本、独歩。』通常盤
3月4日発売『宮本、独歩。』写真集付受注生産限定盤
3月4日発売『宮本、独歩。』初回限定2019ライブベスト盤
3月4日発売『宮本、独歩。』初回限定612バースデーライブatリキッドルーム盤
いよいよだ。2018年秋の“獣ゆく細道”(椎名林檎宮本浩次)&“明日以外すべて燃やせ”(東京スカパラダイスオーケストラ feat.宮本浩次)の2大コラボをはじめ、“冬の花”や“解き放て、我らが新時代”、“昇る太陽”、“going my way”……と次々にシーンと時代を震わせてきた「ソロ・宮本浩次」の音楽世界が、いよいよ1枚のアルバムに結晶するに至った。ロックも歌謡もパンクもジャズもスカもヒップホップも自由闊達に越境しながら、今を決然と生きようと奮い立つ情熱と衝動を厳然と立ち昇らせていく『宮本、独歩。』、最高だ。

2018年3月のさいたまスーパーアリーナ2Days公演をもってエレファントカシマシのデビュー30周年アニバーサリーイヤーを締め括り、「すごくいい形で30周年を終えることができたんで、さらに気持ちとしてはソロに向かって、絶対これで行けるっていうふうに思えた」と語っていた宮本。だが、「ソロ・宮本」が全方位的な才気の炸裂を見せる一方で、エレファントカシマシとしても恒例の「新春ライブ」に「エレカシ野音」にフェス出演に……と歩みを止めることなく己のロックンロールを響かせ続けている。
ソロの視点を得ることでバンドを俯瞰&批評し、バンドの経験と肉体性からソロとしての新たな冒険を夢想する。ふたつの軌道を同時に疾駆させることによって、「ソロ・宮本」と「エレカシ・宮本」の両方に強烈なドライブ感を生み出している――というスリリングな現在地を、『宮本、独歩。』はくっきりと浮かび上がらせてくる。

「いろんな人と関わってやってるにもかかわらず、逆に自分の感覚としては、当初の素直な気持ちでやってる。“おはよう こんにちは”をみんなに聴かせる前の、部屋のなかから直結してる感じがする」
『ROCKIN'ON JAPAN』2020年4月号より)

エレファントカシマシというロックンロール共同体を通して時代と対峙し続けてきた宮本は今、「ひとり」という在り方を基点として、共演者=椎名林檎/スカパラ、小林武史横山健をはじめとした参加ミュージシャン陣、さらには楽曲提供相手=高橋一生との関係性の中で、より鮮烈かつリアルな形で「時代/社会に向き合い凛と生きる一個人」を体現している。このアルバム自体が時代の映し鏡でもあり、そこに生きる宮本個人の魂の軌跡そのものでもある、ということだ。

昨年(2019年)6月12日、自身の53歳の誕生日に行われた初ワンマン「ソロ初ライヴ!宮本、弾き語り」の舞台で、宮本は「今日はエレファントカシマシとは違う、新しい物語のスタートなんで」と高揚した表情で語りつつ、エレカシの名曲“友達がいるのさ”を涙で声を震わせながら歌い上げていたのを思い出す。
《いずれ花と散る わたしの生命》(“冬の花”)と《人はいつだって生まれ変われる》(“旅に出ようぜbaby”)の両軸を内包しながら、宮本は真摯な覚悟とあふれる躍動感をもって、新たな場面の幕を開けようとしている。(高橋智樹)