コロナ禍の先にある洋楽来日公演の行方は? 一度きりのフェス「スーパーソニック」やこれからの洋楽シーンについて、クリエイティブマンプロダクション代表の清水直樹氏に訊いた!

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コロナ禍の今、洋楽来日アーティスト事情はどうなる? 主催者が語る、一度きりのフェス『スーパーソニック 2020』。そして、大きな転換期を迎えつつある洋楽シーンのこれから

――まず、4月6日の時点で、5月31日までの来日公演を延期もしくは中止するというアナウンスを行いましたよね。これは英断でしたけど、いろんなことを考えたうえで行ったことだと思うんです。経緯はどういうものだったんですか?

「うちが最初に延期を決めた来日アーティストがピクシーズで。それが2月24日からのツアーだった。同時期に韓国のヒョゴは来日公演をやっていたんだけど、そのあたりから今後続いていく来日ラッシュをどうしようってことを考えはじめて、そこから2週間ぐらいは、様々なドラマが起こったんです。一番大きなドラマは、アーハだったのかな。彼らは直前までジャパン・ツアーをやるって言っていたのね。実は、どちらかというとプロモーターって受け身なんです。

だから、彼らがやるという限りは、それを全うさせてあげなきゃいけない。その安全対策をどうとるかっていうので、来日の1週間くらい前から、サーモグラフィをどうするか?とか、マスクは全員に配布できるか?とか、いろんなことを考え進めていたんです。でも3月7日という(3月10日のジャパン・ツアー初日)直前に、思っていた以上にシリアスな状況と、(東京公演の)会場の東京ドームシティホールから、どうにか中止か延期にできないかって言われたことがあって。これは、もうアーティストを僕らが説得する側にまわらなきゃいけないなって。プロモーターがライブを中止してくれ、延期してくれって言うことって、コンサートの世界ではめったにないことなんです。

3月7日の夜は、彼らはオーストラリア・ツアーが終わりニュージーランドでショーをやっていて、翌日に東京に飛ぶっていう日だったんだよね。エージェントはロンドンだったから、東京とロンドンとニュージーランド、その3ヶ国で、その夜に会議をはじめて。まず僕らのほうから伝えたことは、とにかく今日本に来ることが、アーティストにとって今後ポジティブにならないと。アーティストもお客さんも危険だし、プラス、どれだけのお客さんが来てくれるかわからない、ひょっとしたら(チケットを持っている)半分くらいの人しか来ないかもしれない。そういったリスクのある時に来るのは正解ではないと。会場からも、できたらやらないでほしいと言われているということも伝えた。

ただ、この仕事はネガティブなことだけではなく、次のビジネスのことも同時に考えなきゃいけないので、これを中止にしたらダメージが大きいから、延期するとなるとどうなるのか。かかったキャンセル費やいろんなものは次のツアーで補填するから、すぐに次のスケジュールを押さえようと話して。ツアーの全部がソールドアウトだったから、もう1ショーどこか追加して、その1ショーで、今回かかったいろんなダメージの費用をお互いに補填しようとか、様々な側面から話したうえで、その日の深夜に『わかった、明日の日本行きをとりやめて、ここから帰るから』って言ってくれた。ギリギリでそういうことをやったんです。ここまで、ちゃんと説得して来日前日にやめてくれて、次のことにもフェアに対応してくれるアーティストってなかなかいない中で、アーハとエージェントはそれをやってくれたんです。

その時に、これはもう、僕らプロモーターは、今後の来日公演も全て腹を括んなきゃいけないな、実際できないだろうという予測の下に、そこからは全てのアーティストに働きかけた。来たくないっていう人にはもちろん、今は来なくていいよと。(それでも来たいという人には)こちらから、今は来る時ではないと説得しはじめた。そういう経緯がまずあったっていうところが大きかったかな」

――今、あちこちでライブの中止や延期が日常茶飯事になっているけれど、そのためにいろいろ考えなきゃいけないこと、向き合わなきゃいけないことがあって。しかも、その時だけじゃなく、将来のポジティブな着地点まで考えて、ビジネスとして成立させるというマインドでやらなきゃいけないですよね。清水さんは、最初のアーハの時に、それを一から十までやった結果、ほんとに今の時期はキャンセルすべきだっていう結論になったということなんですね。

「そうだね。まず、2月末から5月末まで、30ぐらいの来日公演があった。そこから各担当が各アーティストに、いろんな交渉をしていったんです。アーティストによって契約形態もバラバラだし、延期したい人、キャンセルしたい人、それでも今やりたい人、いろいろいる中で、繊細に一人一人のアーティストに向き合って」


「ただ、アヴリル(・ラヴィーン)とかグリーン・デイみたいな大きいアーティストは、中国も含めてツアーをまわっていたから――1月末の段階で中国は感染が広がっていましたよね――だから彼らは、2月の中旬ぐらいには、ちょっと中国も行けないし、日本だけ行くっていうことはできないから、これは延期になるだろうと言われていたし、僕らも次の日程を探しはじめていたんだよね。そうやって、さらに早い時期から話していたアーティストも、実はたくさんいた。ただ、発表が遅れてしまったアーティストもいたのは、(延期や中止が)決まったらすぐに発表したいっていう人もいるし、振替の日程が決まるまでは発表しないでくれっていう人もいて、そのリクエストも様々だったから、お客さんへの対応が早くできる場合と、遅くなってしまうことが、どうしても物理的に出てしまったよね」


日本の公演をキャンセルにしたいっていう人は交渉の中でほぼいなかった。どういう形にしても、延期を望んでいるアーティストやマネジメントがほとんどだった

――こんなにまとまって来日公演が中止や延期になったことって、初めてでしょ。これまでないですよね?

「ないない、30アーティストが、フェスティバルも含めて一気に飛ぶなんて。世界的に見ても、プロモーターにとって初めてだよね」

――ポップ・ミュージックがはじまってから一度もなかったよね。

「うん、3.11の時も、ニーヨはすぐに来てくれたり、カイリー・ミノーグも4月に来てくれたり。あの時は、(日本においてライブができない)エリアが断定されていたから、ここまですべてのアーティストが一度にキャンセルになることは経験していないし、初めてです」

――こういう時って、個々それぞれがいろんな事情があるし、いろんな考え方があるし、なかなか「こうしましょう」って一括したオペレーションで物事を進めることは、ほんっとに難しい中で、ああいう形で「5月31日までの来日公演はすべて延期もしくは中止となります」っていうアナウンスに持っていったのって、すごく大変だったと思うんです。しかも倣うべき前例がない中で。

「そうだね。実は、あのアナウンスをした時に、5月までの来日公演のアーティストすべてと、確実に交渉がまとまっていたわけではないんですよ。でも、どう考えても絶対に来れないから。いち早くその決断を言わなきゃいけないなって思ったのは、お客さんのことを考えたからなんです。ギリギリまで待っていたい人も、もちろんいるかもしれないけど、大半の人は早く情報を知りたいだろうし。その心配がだんだん焦りや怒りや、様々な感情に変わってきちゃうから、なるべく早く明確な答えを伝えなきゃいけないなって。それが一番突き動かされた動機です」

――それはすごく感じました。こっち側から来日を断るのって、プロモーターの仕事の中でも一番きついですよね。いつも、来日公演を実現させるための苦労はあるでしょうけど、今回のようにやらないことを進めるって、ほんっと辛いと思う。

「やってきたことがすべてパーになるからね。ただ、やはり一番感じたのは、やるのか/やらないのか、アーハの時みたいに、ギリギリでいろんなことを用意したり、気持ちも定まらないでやっていいのか?って考えることが一番フラストレーションだよね。自分もそうだし、きっとお客さんもアーティストも。だから、嫌なことでも決めた後のほうがさっぱりするよね。ほんっと、こんな思いを何十アーティストもするんだったら、バサッと『やらない』と決めたほうが次の目標に向かっていけるし。自分の経験値やいろんな状況でできないってわかったから、あの時点で、判断を早めにしたのは正しかったなって思います」

――海外のエージェント、マネジメントによって、いろんな反応があったと思いますが、交渉していく中で何かありました?

「そうだなあ、とにかくみんな、日本をキャンセルにしたいっていう人は交渉の中でほぼいなかった。みんな、どういう形にしても、延期を望んでいるアーティストやマネジメントがほとんどだったので、それはプロモーターとして嬉しかったよね。次に持ち越せるっていうことは。

あと、僕らがラッキーだったのは、1月末から2月頭にかけて、クイーンとペンタトニックスという大物の来日公演ができていたこと。クイーンなんか特に、サマソニ級の動員力を誇るものだったし、それがギリギリの時期に実現できたっていう。これが飛んでいたら、このインタビューもしていないと思うんだよね。きっとそれどころじゃなかった。タイミングも含めて。クイーン……それからは僕は神と呼んでいるんだけどさ(笑)、あれが実現できたことは、幸運だったと思う」


――できていなかったら、今回の決断もぶれていたかもしれないですね。

「そうだねえ」


これからの洋楽来日公演事情は? 主催者が語る、一度きりの「スーパーソニック 2020」が決まるまで


――これからの来日公演の状況ってどうなんですか?

「まず僕らは、スーパーソニックが行われる9月を出発点として考えているんですよ。それに対してアーティストは、向こうから(日本に)来ないっていう人はいない。ポジティブに、日本の状況を知りたがっている。このままスーパーソニックはやってくれるの?って訊いてくるんで、それに対して明確な答えを出していかないといけない。

僕らの中で、これをやらないというような意思決定は何もしていない。実際、これができなかったら今年1年は何もできないっていうくらい腹を括るしかないから、そこに照準を合わせてやっていることを皆に理解してもらったうえで、様々な交渉に入っているっていう状況ですね」

――海外のアーティスト、マネジメントも、スーパーソニックに出演予定の人は、ポジティブな構えでいるっていうことですよね。

「もちろん」

――素晴らしい。スーパーソニック以外では、今後の単独などの来日公演の予定は、まだ明確には見えていない感じですか?

「スーパーソニック以降は、10月ぐらいから(今回の延期の)アーティストの振替公演と、新しく来日を計画している大物アーティストを2、3交渉していて、それに対してはアーティストも来る気で話が進んでいますね。さいたまスーパーアリーナ・クラスや幕張メッセ・クラスでやれるライブっていう大きいものを、今年後半に向けて粛々と進めています」

――じゃあ、5月末までは中止や延期という線を引いた分、9月以降はまた新たにはじまっているということですね。

「そうだね。リスタートしています」

――わかりました。じゃあスーパーソニックの話をしましょう。今年はサマーソニックが(開催予定だったオリンピックの影響で)お休みというのは、前々からアナウンスされていて、でも、それに対してスーパーソニックをやるというのはサプライズだったんですけど、どのようにして決まったんですか?

https://www.youtube.com/watch?v=QrD7zPeaEb8

「これ、実は前から決まっていたわけじゃなくって、去年サマソニが20周年でいろんなインタビューを受ける中で、『サマソニは来年休みます』って明確に答えていたし、本当に何もやる気はなかったんです。で、20周年が大成功して、区切りになったと思っていて。その打ち上げを9月にやった時に、(サマーソニックの会場のZOZO)マリンスタジアムさんが(来年の)9月ぐらいにスケジュール出せますよって言ってくれて、ええ!?って。でも、さすがに幕張メッセはとれないだろうなって、一応話をしたら案の定無理だと。

はて、どうしたものかといろいろ考えた時に、今年クリエイティブマンって30周年なんですよ。1990年にはじまって。サマソニ20周年をやって、クリエイティブマン30周年で何もやらないって(笑)、さびしいなって。だったら何か違うものを……キャパとしてもサマソニより大きくないし、今からでもやれるんじゃないかって予測もできたので、30周年に向けて一回限りの新しいフェスを考えようと思って、10月ぐらいから計画をスタートしたんです。マリンスタジアムだけを使うイメージはあるじゃない? スタジアムを使って、ビーチも使って、外周も使って、3ステージって、サマソニでもやっているし、EDC JAPANがそうだったんだよね。

あのコンパクトに野外でやる開放感も、自分たちで気に入っていたんだ。あとこれってサマソニの大き過ぎるうえでのマイナス部分――屋外と屋内を行き来するタイムロスもなくなるフェスを作れるよなって。それで、これは作るうえでやりがいがあるって思いはじめて。ステージやラインナップのイメージを、自分の中で考えながら交渉を進めていきました」

――結果、非常にいいラインナップですよね。ポスト・マローン、スクリレックス、The 1975、リアム・ギャラガーファットボーイ・スリム

「ヘッドライナーは2020年感が出るラインナップだよね」


――しかもウータン・クランも出る。これ、どういう感じで決まっていったんですか?

「サマソニ20周年が成功したイメージが自分の中に残っていて、そのひとつは日にちで明確にジャンルを分けていったことによるものがあるんじゃないかなって。じゃあスーパーソニックもそういうものにしようと、まずはロックとエレクトロの日に分けて進めたんです。実は、最初はミューズが出るって言っていたんだよね。だからミューズありきでスタートして、じゃあもう一日はエレクトロだなって話している中でスクリレックスが出てきて、それぞれのヘッドライナーはミューズとスクリレックスで完璧だと」

――え、じゃあ最初は2日間の予定だった?

「そうそう。3デイズってやっぱり、サマソニでも20周年ぐらいの時にしかやれないものだから。無理をしたくなかったんで、2デイズでスタートしたんだよね。そういう中で、ポスト・マローンのエージェントから、ちょうどこの時期、毎年シンガポールでF1のイベントがあって、いつもマルーン5だったり大物を呼んでいるんだけど、今年彼らがそれに呼ばれているから、日本でもぜひライブをやりたいと。じゃあどうしようかなって。ポスト・マローンって、自身で主催するフェスティバルをやっているんだよね。じゃあ、その日本版をやろうかって話もしていたんだけど、でも、ポスト・マローンのフェスティバルとしてやるのは、まだ日本では早いかなと思ったところもあって」

――逆に閉じちゃうかもね。

「んー。だったらもう一日スーパーソニックにして、ヒップホップとポップスのアーティストを集めて作っちゃおうと。だから3デイズっていうのはポスト・マローンありきで決まったっていう」

――清水さん、そういうラッキー・パターン多いですよね(笑)。でも、ミューズはどうなったんですか?

「昨年末ぐらいの時点でダメになっちゃったんだよ。最初、東京と大阪でやって、さらに福岡、名古屋、仙台、札幌のZeppクラスのハコを全部ブッキングして全国ツアーをやりたいっていうから、そこまでアレンジして、決定でいいよね?ってなった時にドタキャンっていう。去年の(サマーソニック出演を決めてくれた)レッチリのマネージャーから来た話なんだけどさ。去年助けてくれたのに、今年はなんだよって(笑)。

それでThe 1975なんだけど、実は9月に単独のツアーをほぼ決めていたんですよ。ただ、スーパーソニックと日程がぶつかっちゃうってことで、アーティストも、チケット食い合っちゃうんじゃないの?って心配していたんだ。それで、ミューズがダメになった時、彼らの去年のライブを思い出して、あれはとてつもないレベルだったし、サマソニで育った彼らがいよいよヘッドライナーをやるストーリーって、アークティック(・モンキーズ)が(サマーソニックで)ヘッドライナーやった時みたいに、なんかドラマチックだなって。The 1975にスーパーソニックのヘッドライナーやらない?って言ったら、すぐにやるという返事をもらえて。そこはとんとん拍子で決まった」

――ワールドワイドなフェスの常識から見たら、The 1975はヘッドライナーだから、ドンピシャですよね。

「そうだね。The 1975、スクリレックス、ポスト・マローンは、新しいフェスの予感をさせるっていうところで、並んだ時にワクワクするね」

――リアムはどう決まったの?

「リアムも、タイトルをスーパーソニックって決めたら声をかけなきゃかなって(笑)、スーパーソニックっていうフェスやるんだけどどうってオファーして。彼も、最初は(同じ日が)ミューズで進んでたんだけど、The 1975に変わることを伝えたら、奴らだったら全然いいわって言ってくれた。最初の交渉はミューズとリアム(の日)って感じで進んでいて、(リアムも)なかなか決まるまでは時間がかかったけど、最終的にはイアン・ブラウンも含めて、マンチェスター寄りな日になりました」


――確かに。ファンを代表して言いますけど、このラインナップは最高!

「だよねえ。イギリスだったら、両方ヘッドライナーだよね」

――そうだよねえ。実現したい!

「実現しますよ」

――しましょう!


フェスティバルやライブ会場に戻りたいっていう気持ちは、アーティストも、僕らスタッフも、お客さんも同じ。そこに対する希望は、ちょっと先になるけどなくしちゃいけない

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――今回、まだコロナ禍は真っ最中だけど、音楽業界も抜本的になんかしら変わっていくと思います。清水さん的に、これからのプロモーター、あるいは洋楽について思っていることってあります?

「確実に何かが変わることはわかっているし、その覚悟ではいる。ただ、劇的にすべてが変わるかといえば、けしてそうではないと思う。先がわからないというのもあるけど、漠然とそういう答えを持っているんですよ。みんなやりはじめたストリーミング、無観客の配信とか、どう考えてもそれだけで音楽ファンが納得するわけもないだろうと。

じゃあ、今まで通りに、同じレギュレーションで(ライブが)できるのかっていったら、そうでもない。なんとなく思うのは、キャパシティーだったり、人数に対しての制限は、今後起こるんじゃないかなと。今まではただ単に危険であるっていう(観点で行われていた)レギュレーションが、密集度も含めたレギュレーションが出てくるんじゃないかなって考えている。プロモーターとしては、アーティストやお客さんの安全を考えたうえでのレギュレーションを新しく作っていくことは、ポジティブに考えていますね」

――あとは、人によってリスクが違うということが、こういう事態になるとわかるじゃないですか。危険度が高い人もいれば、まあ大丈夫だろうっていう人もいる。ユーザーって、今までは一律のものとして考えられていたけれど、年齢や体力の違いによって、エンターテインメントの提供の仕方を変えていくっていう発想は、もしかしたら出てくるのかなって思っています。

「うん」

――ライブ会場に行ける人/行けない人、とか。大きな会場は行けるけど、ライブハウスは行けない人とか。

「そうだねえ。フェスなんかで言ったら、これだけ広いから、ひょっとしたら(人によって)エリアを分けるとか、そういうことが出てくるかもしれない。何が起こるかわからないけど、まあプロモーターってタフだし、今後そういうことも考えながらサバイブしていく仕事だと思っているので。それは、不安でもあるけど楽しみなところもあります」

――わかりました。とにかくスーパーソニックを成功させましょう。

「不安は皆あるけど、とにかく、早くこの場所……要はフェスティバルであり、ライブ会場であり、そこに戻りたいっていう気持ちは、アーティストもそうだし、僕らスタッフもそうだし、お客さんも、同じだと思うんだよね。そこに対する希望は、ちょっと先になるけどなくしちゃいけないな。音楽ファンは誰一人として手放す気はないぞと」

――早くそこに戻るためにはどうすればいいのかっていうことを基準に考えれば、間違えることはないと思う。

「うん。今後、さらにスーパーソニックの出演者も発表できます。楽しみにしていてもらいたいです」


この秋、熱狂の3日間がやって来る――
最新型フェス「スーパーソニック 2020」の見どころはここだ!

文 = 小池宏和

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昨年、めでたく20周年の大きな節目を迎えたサマーソニックが新たな歴史を歩みはじめるために、オリンピック・イヤー限定でこの9月に開催を予定しているフェス「スーパーソニック」。しかし周知の通り、世界中で猛威を振るうコロナ禍によって、五輪延期は当然のこと、我々の生活そのものが根底から揺るがされる日々が続いている。サマソニの公式YouTubeチャンネルでは、昨年に出演したアーティストたちのライブ・アーカイブ映像がそれぞれ24時間限定で公開されるなど、辛抱強く日々を送るリスナーへの配慮がなされた。

そんな中で4月2日には、スパソニこと「スーパーソニック」の出演アーティスト第1弾が発表に。とてもサマソニの「繋ぎ」とは思えない、超豪華&超強力なラインナップに驚かされた人は少なくないはずだ。もちろん、コロナ禍の影響は決して楽観視してはならない。今回の発表は、我々にとって「保証」ですらない、極めてピュアな「希望」なのである。今は、この希望を胸に日々を闘い抜くことこそが最も大切なのだと、あらためて痛感させられた次第だ。

待望の新作を携え、昨年のサマソニに続いて登場する文字通りのホープ=The 1975。第2の黄金期を迎えているリアム・ギャラガーや、笑顔の伝道師ファットボーイ・スリムは、今こそ求められる歓喜をもたらしてくれるだろう。大阪初日、及び幕張2日目には、スクリレックスによる狂気と紙一重の熱狂が、そしてカイゴの陶酔感が、EDMシーンの奥行きを描き出す。幕張オンリーのスペシャルな3日目には、オーディエンスを無条件に巻き込むラップ・スター兼ロック・スターのポスト・マローンが、そしてウータン・クランによる鉄壁のコンビネーションが控えている。


また、マンチェ組のイアン親分や、新作でUK1位奪還のブロッサムズの他、サンディエゴの大型ドリーム・ポッパーであるコナン・グレイ、ヒリヒリするようなリリシズムで頭角を現している女性SSWのべアバッドゥービーら、見逃せないニューカマーたちもズラリ。この大いなる希望を前にして、我々はただぼんやりとウイルス蔓延の収束を願っている場合ではない。目一杯ワクワクしながら、毎日を生きよう。


クリエイティブマンプロダクションは、6月19日より「過去サマソニ映像によるオンライン・ライブ企画」を予定。ラインナップとスケジュールは以下の通り。



※この記事は5/7発売ロッキング・オン6月号に掲載されたものを、一部加筆し掲載したものです。
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