【43日間、連続公開!】ロッキング・オンが選ぶ究極のロック・ドラマー43選/マイク・ポートノイ

ロッキング・オン6月号では、「究極のギタリスト」を特集しています。そこでギタリスト特集とあわせて 、昨年の9月号に掲載したロッキング・オンが選ぶ「究極のロック・ドラマー」を43日にわたり、毎日1人ずつご紹介します。

「究極のロック・ドラマー」に選ばれたアーティストはこちら。

マイク・ポートノイ(ドリーム・シアター、サンズ・オブ・アポロ)


超絶技巧。いつのまにかドリーム・シアターにはこの四文字がつきものになった。ただ、もちろんその演奏技術の高さには尋常ではないものがあるが、そこに囚われすぎてしまうと大切な何かを見落とすことになる。

マイク・ポートノイは同バンドの創設者のひとりだが、メンバー間の意見の相違により25年にわたる活動を経て2005年に脱退。現在はザ・ワイナリー・ドッグス、サンズ・オブ・アポロなどに籍を置いている。そうした場での演奏ぶりも確かに“超絶”ではあるが“技巧”を見せつけることが彼にとっての最優先事項ではない。

90年代の来日時に取材した際、「俺たちの音楽がパーティ・ミュージックになりにくいことはわかってる。でも、むしろそういう感覚で楽しんでもらえれば本望だ」という発言をしていたが、彼にとって技術はあくまで表現のための道具であり、何よりも演奏を通じて楽しみを共有することが目的なのだ。

バークリー音楽大学出身で、去る(2020年)1月に他界したラッシュのニール・パートからの多大な影響を公言していること。それを物語るかのようにドラムのセッティング自体も変則的で、腱鞘炎に悩まされた過去があること。彼の経歴を眺めてみると技巧派ぶりを裏付けるようなそうした事実に目が向かいがちだが、たとえば幼少期の彼が、ラジオDJだった父親の影響によりさまざまなポピュラー音楽に触れてきた事実なども見落としてはならないだろう。ドリーム・シアター時代、メタリカアイアン・メイデンの名盤を完全再現したオフィシャル・ブートレッグを発表してきたこと、彼自身は演奏技術よりも楽曲構成などの面においての貢献度の高さを自負していたこと、バンドのまとめ役的な立場にあったことも。

つまり彼は何よりもまず音楽ファンであり、彼にとってバンド活動は「技術という共通の道具を持つ仲間たちによる高次元な遊び」でもあるのだ。この『イメージズ・アンド・ワーズ』は、ドリーム・シアターの出世作となった第二作。もっとあからさまに超絶な作品は他にもあるが、いわゆるプログレ・メタルが広くポピュラリティを獲得し得ることを証明した1枚だといえる。

いつか彼がふたたび古巣で演奏する姿も見てみたいものだが、ラッシュの魅力を伝承する語り部の役割も担って欲しいし、何よりも彼には遊び心を失って欲しくないところだ。(増田勇一)



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『rockin'on』2021年6月号