老若男女、全方位必聴のブルース

藤井一彦『月を見ろよ』
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ALBUM
藤井一彦 月を見ろよ
THE GROOVERSの藤井一彦が放つソロ作第3弾。前作『GEMINI』から8年ぶりというマイペースな制作ではあるが、今作『月を見ろよ』は今こそ多くの人が聴くべきアルバムだ。《どうあがいてもなるようにしか/ならないなんて嘘だよ》(“月を見ろよ”)とタイトル曲が突きつけるように、リアルタイムのブルースが心を揺さぶる。自主レーベルからのリリースで、当面はライブ会場のみの販売であるため、手に入れるのは少々ハードルが高いが、それでもこのアルバムは広く聴かれるべき一枚と思う。ライフワーク的に行っている弾き語りツアーで披露されてきた楽曲に、書き下ろしやカバーも加えた全9曲、いたるところで示唆に富んだフレーズが光る大充実の作品となった。《明日世界が滅びるとしても/花に水をやる人がいいらしい/残念ながら俺は這いつくばって/君を探しに行くだろう》(“情熱と呼ぶには”)。藤井一彦の人物像、その魅力はここに挙げた一片の歌詞の中にも感じられるだろう。シンプルながら、とてもモダンで詩的なブルースがここにある。歌の深さはもちろん、洗練されたギターの音色にも触れてほしい。(杉浦美恵)

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