通算11作目のシングルにして、1年4ヶ月ぶりという久方ぶりのCDリリース。先行して配信された“ちらばれ！サマーピーポー”は、「夏が嫌いというより夏に浮かれている連中が嫌い。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いで結局全体的に夏が嫌い」というややこしいマインドを織り込んだ曲だが、ブリージンなメロディやけたたましいエレクトロパンクの間奏、賑々しいホーン風アレンジを効かせたクライマックスなど、盛り上がる夏ソングをどうにか生み出そうと苦心した律儀さが泣ける。“まじで2分で作った曲”や、激エモなメロディとサウンドを歌詞で台無しにしてしまう“コンプライアンス”では、しれっと作曲センスの良さを見せつけていて心憎い。誰もが知る民謡メロディを歌い変えた“もももで歌うよどこまでも”は、笑いと着想の鋭さがヤバTの独創性を裏付ける『桃太郎電鉄』CMソングだ。ディスコダブ／バレアリック風のアレンジで楽曲のテーマだけをそっくり汲み取ってみせた“ちらばれ！サマーピーポー(岡崎体育 remix)”を含め、「ぶどうかん」ツアーや夏フェスでの活躍が楽しみな5曲である。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』8月号より