ハイペースでのリリースが続いているVaundyだが、この“忘れ物”でまた新たな一面を見せられた。ど直球でエモ。熱い歌唱とサウンドで《ここで泣けるシーンが来た数だけ／ほら／忘れ物してんだって》と歌うこの曲は、蓋をしてきた過去の思い出や痛みに目を向けさせる。昇華しきれない心の痛みを「忘れ物」と形容するワードセンス。人間の弱さの本質を知っていなければ書けない歌詞だと思う。そしてサウンドの重厚感がまた「忘れ物」の在り処を思い起こさせるように、ひたすら心を揺さぶってくる。Vaundyがここまでまっすぐ強い歌声をぶつけてくることにも驚いたが、強さの中に特有の柔らかさや癒しも内在していて、聴き終える頃には「忘れ物」を抱えて生きることへの肯定感が強く湧き上がるのがまたいい。この楽曲、Vaundyと同世代のリスナーのみならず、人生そこそこ長く生きてきた人間にも強烈に刺さる。そう思うとマクドナルドのCM「時をかけるバーガー」とのタイアップもドンピシャなわけで、なんというか、Vaundyの底知れぬクリエイティビティにあらためて驚かされているところ。（杉浦美恵）

『ROCKIN'ON JAPAN』1月号より