【10リスト】ゲスの極み乙女、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!

【10リスト】ゲスの極み乙女、一生聴き続けられる名曲10はこれだ!
強烈なインパクトを持つバンド名に、ロック、ヒップホップ、ジャズからクラシックまで、ジャンル無用で極上の味に料理してしまう演奏力とポップセンス。そんな、他の誰にもない武器を引っ提げてシーンに殴り込んでから早10年以上。ゲスの極み乙女。は常に自分たちを進化させ、日本の音楽シーンを塗り替え続けてきた。そんなゲスの極み乙女。の膨大なディスコグラフィから、決して色褪せることのない名曲を厳選したのがこのリストだ。誰もが知っているあの曲から、ファンから絶大な支持を受けるちょっと隠れた名曲まで。どの曲にも、彼ららしい野心と、それをもってなお大文字のポップスとして響く大衆性が宿っている。この記事を読みながら、ぜひ彼らのディープな音楽世界に浸ってほしい。(小川智宏)


①ドレスを脱げ

ゲスの極み乙女。の記念すべきファーストミニアルバム『ドレスの脱ぎ方』の最後に収められているのがこの曲。このミニアルバムで彼らは執拗に「ゲス」という言葉を使って自分たちのアイデンティティを主張しているが、この楽曲はその極致だ。語感と韻だけを頼りにマシンガンのように畳み掛けられる言葉に、ポストパンク的に尖ったギターリフと歪みまくったキーボード。パンクに突っ走るドラム。真っ黒なグルーヴを生み出すベースライン。ゲスの極み乙女。の4人はひたすらに意味を超越したリフレインの快楽を追求する。そして最終盤、突如始まる小芝居。ドレスを脱ぐことを強要する男を《ゲス野郎》と罵倒しながらも《この無駄に着飾った私が自分で嫌だから》と自ら脱ぐことを選ぶ女のセリフで、ゲスの極み乙女。というバンド名とこの異物の塊のようなサウンドにひとつの「解」が与えられる。ここからゲスの極み乙女。のストーリーは始まった。

②キラーボール

フェスで、ラジオで、コンビニとか牛丼屋の店内放送で、あるいはライブの転換BGMとかDJイベントで、何度聴いたかわからない。そして何度聴いてもぐいぐいと耳と心を引き込まれるような引力は弱まらない。楽曲を説明する時によく使いがちな「中毒性」という言葉だが、本当に中毒になるほどヤバい曲というのは、たとえばこの“キラーボール”のようなものを言うのだろう。イントロから繰り広げられるピアノのリフレイン、性急なBPMを叩き出しながらどこまでも高揚していくダンスビート、そしてコーラスと掛け合いをしながら展開するラップ。それが美しいメロディに昇華する時、さらにそこにちゃんMARIの弾くショパンが重なった時、くるくると回るキラーボールがその裏側にある暗闇を照らし出す。踊れるロックが大流行する中、誰よりも踊れる曲で踊ることの欺瞞を暴き出したこの曲の存在意義は、あれから10年近くが経つ今もまったく薄れていない。

③ハツミ

そぼ降る雨と拭えぬ悲しみをエレピの音色が鮮やかに描き出す、ゲスの極み乙女。のメランコリックな側面をこれ以上ないほど伝える名曲、“ハツミ”。呟くような川谷絵音のラップと、先述のエレピ以外は極めてミニマルに構築されたサウンド。少ない音数だからこそ際立つアンサンブルの美しさが、かえって楽曲の切なさを掻き立てていく。で、すごいのはそうした「聴かせる」系の落ち着いた曲であるにもかかわらず、そこにはちゃんとグルーヴとリズムの快感が宿っているところ。この曲が収録されたミニアルバムのタイトルは『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』だが、まさにその通り、ここにはひたすらアッパーにハイに踊るのとはまったく別種の、心を踊らせるメカニズムがある。《一人で/ワンツーチェックチェック/心を/ワンツーチェックチェック》。この頃から加速度的に人気を高めていく彼らの音楽が本質的にどこに向けられたものなのかを、そのリフレインは物語っている。

③パラレルスペック

冒頭から緻密に展開するリズムワークとピアノのフレージング、バカテクてんこ盛りの休日課長のベースに、鳥肌が立つほどスリリングなキメ。演奏スキルと構成力の高さをこれでもかと見せつける(その意味ではイントロのピアノリフがある意味この曲のサビだとも言える)アレンジに、ラップ→超絶美メロというゲスの極み乙女。の真骨頂を惜しげもなく投下する展開。このサビさえあれば勝ちっしょ、とでも言うようなメロディの強さと、《明日もきっとまた嫌われて》、《それでまた毒を紡ぐのさ》という露悪的な歌詞が相まって不敵さすら感じさせる、メジャー初の代表曲だ。ちなみにのちのシングル『私以外私じゃないの』にはこの曲の「funky ver.」が収録。この曲の別バージョンというか原型で、サビが丸々変わっている。一時期までライブではこちらが演奏されることが多かったが、そちらはそちらでまた別の凄みを見せつけている。

⑤私以外私じゃないの

川谷本人も認めているところだが、この曲のバランス、造形美は完璧といっていい。リズムの展開や華やかなコーラスワーク、ベースラインとピアノの絡みなど、バックで鳴っているサウンドの巧みさも、そのサウンドと調和しながらポップに飛翔するメロディの美しさも、ファルセットを駆使しながらそれを歌う川谷のボーカルも、すべてがゲスの極み乙女。というバンドのクオリティを伝えきっている。圧巻なのは実は最後のサビ前の間奏。よくあるパターンだといわゆる落ちサビが来るところを、演奏とコーラスだけの力だけで持っていってしまうところには彼らの意地のようなものも感じてしまう。そりゃ大臣も替え歌歌うし(当時の甘利経済再生担当大臣が記者会見でいきなり歌ったのだ)、紅白にも出るわ。“私以外私じゃないの”という曲名も、凛とした強さと背中合わせの孤独、つまりは川谷の歌詞世界をまるっと表現した名文句だと思う。

⑥ロマンスがありあまる

“私以外〜”がおそらくは当人たちの想像を超えて広がる中で満を持してリリースされた「本当の勝負曲」だったという意味で、ゲスの極み乙女。のターニングポイントとなった楽曲だ。イントロの鍵盤はちゃんMARIと川谷がふたりで演奏しており、そこからいきなりあの強烈なサビへ。刻まれるビートにピアノが追従し、目まぐるしく場面を転換していく。スピード感と次々に大波が押し寄せてくるような迫力、にもかかわらず演奏のテンションはどこまでも冷静。無表情のまま100メートルの世界新記録を打ち立ててしまうような末恐ろしさがこの曲にはある。川谷はキーボードとギターに加えてカシオレーターも演奏、台詞まで引用して映画に寄り添いながらも《死に物狂いで生き急いでんだ》という1行に己の人生をすべて注ぎ込む歌詞も含めて、クールな表情の裏側にたぎる熱が漏れ出しているようでぐっとくる。あと、この曲名もまた、言葉としてものすごい発明。

⑦影ソング

バンドの活動休止によって延期されていたアルバム『達磨林檎』のリリースが決まり、その直前に公開されたのがこの“影ソング”のミュージックビデオだった。そうしたタイミングもあって歌詞の内容、ビデオの内容などさまざまな憶測を生んだ。自分自身に降り注いだ出来事を歌っているようにも、あるいは社会全体を見渡して言葉を紡いでいるようにも読める歌詞、メロウな曲調にはこれを書いた当時の川谷のコンディションが反映されているようにも思えるが、改めて聴き直して思うのは、アンサンブルの洗練度と、落ち着いたタッチでもとんでもないエモーションを描き出してしまうバンドとしての進化ぶりである。アナログシンセの絶妙に揺れ動く音色を軸にしながら、タイトなリズムと洒脱なコーラスワークでグルーヴを生み出していく職人的ともいえる演奏は、こと音楽集団としてのゲスの極み乙女。がちょっとやそっとでは揺るがない境地に立ったことを物語っている。

⑧アオミ

4作目のアルバム『好きなら問わない』のラストトラックにして、ひたすらディープな音楽的冒険が繰り広げられる密かな名曲。ストリングスの奏でる鮮やかな旋律から始まり、それをまるでサンプリングしたかのようにループさせながら超モダンなフロウが展開、それがシームレスにメロディへと変化していき、そのままサビ……かと思いきや、コーラスとリズムのみで絶頂を描き出す。ゆったりとしたテンポの上でその隙間を埋めるように歌やピアノソロが重なり、そうしてできあがった美しい構図を今度は楽曲自体が打ちこわし、最後は唐突にピアノによるリプリーズで幕を下ろす。言葉にするとややこしいが、聴覚的にはややこしいどころかとても洗練されて聴こえるところがゲスの極み乙女。である。川谷絵音の持つ切なさが1行1行すべてに注ぎ込まれたような歌詞も珠玉。

⑨人生の針

緻密に構築されたリズムと管弦楽器のふくよかな響きを軸に、ゲスの極みの乙女。のひとつの武器であるダンサブルなグルーヴを大胆に更新してみせたアルバム『ストリーミング、CD、レコード』。この“人生の針”は、そんなアルバムの方向性をより具体的に示すような楽曲だ。ビートが時計の針のように淡々と進む中、チェリストの徳澤青弦にアレンジを託すことで新たな語彙を獲得したストリングスの音色が感情の波を表現し、要所要所で入ってくるピアノが楽曲をドライブさせる。ダイナミックなのにメランコリック、切ないのに心が躍る、そんなアンビバレントな感覚をさらに助長するのが、ため息をつきながら笑うようなムードの歌詞だ。ミュージックビデオの字幕に出てくる英訳を読むとよりはっきりわかるが、この曲が歌うのは人生や男女関係であると同時に音楽そのものでもある。というか、それらすべてがぴったりと重なり合う地点にやはり川谷絵音という人はいる。

⑩青い裸

ベストアルバム『丸』の配信版に収録された新曲のひとつで、ドラマ『復讐の未亡人』の主題歌として書き下ろされた楽曲。とはいえオケ自体は以前から完成していたものだそうだ。そう言われるとここにはゲスの極み乙女。の過去と現在が同居しているような感じもするし、10周年というタイミングで改めてバンドの真ん中を指し示すような王道曲であるとも思う。ちゃんMARIのピアノを皮切りに、ブラックミュージックのニュアンスを色濃く感じさせつつ(うねりまくる課長のベースラインの気持ち良さ!)ひたすら4人のアンサンブルでスリルとダイナミズムを生み出していく器楽的な高揚感はどこかプリミティブな熱を感じさせ、ますます進化する川谷の詩作は切なさを追求すればするほど青く燃え上がる。「ドレスを脱げ」と言っていたあの頃と呼応するような《裸でいれるまでは/突っ切って/突っ張って》というフレーズに、常に最高地点を更新しながら進み続けるバンドの矜持が見えるようだ。


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