コーチェラとペイヴメント


ペイヴメントが今年のコーチェラに出演する。最終日、ゴリラズ前の、セカンド・ヘッドライナーのポジションである。
1998年、第1回開催のこのフェスで、彼らを観ている。そのときは、昼間の、まだ夕方にならない時間帯だった記憶がある。ペイヴメントはいろんなフェスで観てきたけど、だいたいそのような感じだった。
解散後、不在によってその存在の大きさがよりいっそう際立つバンドがいる。ペイヴメントもそのひとつなのだろう。

ペイヴメントの遺してきた作品は、いつも思い出したように集中的に聴く時期があって、そのたびに思わぬ発見をして、新たな衝撃を受ける。ローファイと一言で括るには、その音楽はあまりにもメロディアスで、メランコリックで、ポジティヴで、ラジカルなのである。不在の間の10年で鳴らされてきた最上に哀しい歌よりもせつない歌をいくつも歌っていたし、試みられてきた最高に刺激的なサウンドの自由さは彼らの拓いたガラクタのようなパースペクティヴの範疇にあった。スティーヴ・マルクマスはトム・ヨークのように世界の断層に分け入る人格者的精神は持っていなかったけれど、現在のほとんどの意識的なアメリカン・インディー・ミュージシャンがそうであるように、アメリカ人であることの吐き気のするような違和感にイラつき、辞めたがっていた。そして同時に、とっくの昔に、ポスト・リーマン・ショックの世界でたたえることのできる微笑み方を知っていた。

ペイヴメントの再結成は、今年1年限りである。そのキック・オフは3月1日のニュージーランドはオークランド。あともう1ヶ月ちょっとだ。