ピンク・フロイド、伝説のライブが蘇る。高精細になった映像と最新リミックスで新体験


綺麗! 何度観たかわからない映像だけにまずそんな言葉が口をつく。ホントにアレと同じものなのか、『ピンク・フロイド・アット・ポンペイ』(日本のみ2CD+Blu-ray仕様もリリース)。

グループが世界遺産ポンペイ遺跡の円形闘技場を舞台に1971年に行ったパフォーマンスを中心にまとめた映像で、自分が最初に観たのはモノクロ、しかも画質、音質も寂しいものだったが、まったく比べ物にならないピンク・フロイド体験をもたらす作品の登場だ。

ポンペイはイタリア、ナポリ郊外にありベスビオ火山の噴火で埋もれてしまった古代都市が発掘された遺跡で、その中心となった円形闘技場でピンク・フロイドがパフォーマンスを行ったのが1971年10月のこと(初来日の箱根アフロディーテから2ヶ月後)。無観客の古代円形闘技場中央に機材をセットし、昼夜にわたり“エコーズ”や“神秘”、“吹けよ風、呼べよ嵐”などをプレイし、さらにロンドンに戻っての後に『狂気』となる楽曲へのアビー・ロード・スタジオでのオーバーダブやサウンドメイクのドキュメントと、見逃せない映像が続く。新たに発見された35mmのオリジナルフィルムを4Kレストアし、(しつこいが[笑])これまでとは比較にならないほどの高画質を実現、さらに演出画像などもカットし、より純粋にピンク・フロイドの世界を探求しやすいものとなっている。
魅力的なのがスティーヴン・ウィルソン(ポーキュパイン・ツリー)が手掛けたドルビーアトモスも含む最新リミックスで、古代円形闘技場という特別な空間に広大に拡散していく音世界を繊細に再生している。キング・クリムゾンやイエスといったプログレバンドたちのリミックスをさせたらこの人しかいないというセンス/手腕をここでもたっぷりと振るい、酔わせてくれる。

レコーディング、演奏などの機材は、現代に比べると原始時代のような素朴さだけに、だからこそ個々のプレイ、サウンドプロダクションのアプローチが見て取れ、これがまたスリリングで、まさに今こそ観るべきものとなっている。(大鷹俊一)



ピンク・フロイドの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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