日経ライブレポート 「ゼッド」

今の音楽シーンで、数年前から注目を集めている音楽スタイルにEDMというものがある。エレクトリック・ダンス・ミュージックの略で、全世界でEDMだけのフェスが行われ、何万人、何十万人の動員を記録している。日本でも去年、ウルトラという世界的に有名なEDMフェスが開催され、何万円もするVIPチケットが飛ぶように売れ話題になった。

EDMのブームを支えるのはDJたち。彼らは歌も歌わなければ、楽器も演奏しない。ステージでラップトップを操るだけだが、それで何万人もの聴衆を熱狂させてしまう。年収が何十億円というDJがたくさん活躍している。

ゼッドも、そのDJのトップランナーの1人だ。最新アルバムが全米チャートの4位になり、その勢いに乗って熱の入ったステージを展開してくれた。

EDMのステージは歌ったり演奏したりする人がいない。DJ1人が黙々とラップトップを操作しているだけだ。そこで視覚的な主役は映像と照明になる。ステージいっぱいに巨大なLEDスクリーンが設置され、スピード感のある映像が映し出される。聴衆はテーマパークのアトラクションに、ライヴ中ずっと乗っている気分になれる。

EDMの中でも日本人に好まれる分かりやすいメロディーを得意とするアーティストなので、どの曲も客席から合唱が起き、凄い盛りあがりだった。ダンス・ミュージックでありながら、とてもエモーショナルなメロディー・ラインを持つのがEDMの特徴であり、支持されている理由だ。それをゼッドはとても象徴的に表現しているアーティストであることが確認できるライヴだった。

4日、新木場スタジオコースト。
(2015年6月30日 日本経済新聞夕刊掲載)
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