イケイケなだけじゃない

エンター・シカリ『ザ・マインドスウィープ』
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ALBUM
3年ぶりの4作目。エンター・シカリはアルバムごとに着実に進化するタイプのバンドだ。ライヴでの爆発的なパフォーマンスのイメージとは裏腹に、学習やトレーニングやライヴなどの現場での実戦による経験値をコツコツと積み上げ、着実にスキルアップを実現していくタイプなのだ。そして今作もまた例外ではなく、前作からの着実な進化がうかがえる快作である。

イケイケのニュー・レイヴ+ラウド・ロックという一般的なイメージをあっさり覆すような、知的にして緻密なサウンド構築が前作では聴けたが、本作ではさらに音楽性の幅を広げ、アレンジはより多彩に、サウンド・プロダクションのスケールは広大になった。ことにストリングスやホーンを導入し、ピアノをフィーチャーしたバラードから壮大なオーケストレイション、内省的なエレクトロニカなどが、爆裂インダストリアルやレイヴ・メタルが交互に登場する後半の盛り上がりには圧倒される。曲によってはあまりに大風呂敷過ぎる展開に後ずさりしたくなる場面もあるが、もはやプログレの領域に到達した本作は、間違いなく彼らの最高傑作だろう。(小野島大)