彼にとって3作目。ここまでのスタジオ盤は、くぐもった音質が特徴だった。非常識なまでに多彩な音楽性を表現するための「ごちゃごちゃした」音群、そのどれかに焦点を当てすぎることなく、公平にやろうとした結果だろう。ライヴ映像と技術革新のおかげで霧が晴れた。あくまで個を重視しつつ、くっきりパワフル。かつては自由を志向する表現だったはずの「暴走」行為が、いつのまにか保守反動もしくは単なる過激派イメージに結びつくことの多くなった現在、実はリベラルかつポジティヴな姿勢につながるものであることを再確認させてくれる。だから75年につけられたこの邦題、今となっては少々アメリカン・ニュー・シネマっぽすぎかも? 内容自体が、そこにあった自己破滅志向からロックが脱けだしたという意味でも記念碑的なものであるだけに。(伊藤英嗣)
永遠のワイルド・ドライヴァー
ブルース・スプリングスティーン『明日なき暴走-30th アニヴァーサリー・エディション』
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ALBUM
彼にとって3作目。ここまでのスタジオ盤は、くぐもった音質が特徴だった。非常識なまでに多彩な音楽性を表現するための「ごちゃごちゃした」音群、そのどれかに焦点を当てすぎることなく、公平にやろうとした結果だろう。ライヴ映像と技術革新のおかげで霧が晴れた。あくまで個を重視しつつ、くっきりパワフル。かつては自由を志向する表現だったはずの「暴走」行為が、いつのまにか保守反動もしくは単なる過激派イメージに結びつくことの多くなった現在、実はリベラルかつポジティヴな姿勢につながるものであることを再確認させてくれる。だから75年につけられたこの邦題、今となっては少々アメリカン・ニュー・シネマっぽすぎかも? 内容自体が、そこにあった自己破滅志向からロックが脱けだしたという意味でも記念碑的なものであるだけに。(伊藤英嗣)