止まらない成長曲線

ジェイク・バグ『オン・マイ・ワン』
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ALBUM
オープニング・トラック、“オン・マイ・ワン”の渋い弾き語りに、まず4年前のボブ・ディランの再来大騒ぎを思い出す。ジェイクがアーティストとして強靭な筋肉を付けてきた新作のスケールを実感させるための最高の導入部だ。続く先行シングル“ギミ・ザ・ラヴ”のヒップホップを取り入れたサウンドは、リック・ルービンと組んだ前作『シャングリ・ラ』(13年)の経験がしっかりと渦巻いていて、この2曲だけで傑作を確信するが、そこからの流れはさらにみごとだ。

ストリングスを効果的に使った“ラヴ・ホープ・アンド・ミザリー”を始め、“ネヴァー・ワナ・ダンス”、“オール・ザット”といった美曲もあれば、ビートを効かせたギター・ナンバー、CSN&Yやイーグルスあたりのテイストが奥で流れるもの、さらにラップまで、非常に多彩なアルバムとなっていて、そのどれもが彼の歩みを振り返ると説得力のある音ばかり。サウンド・デザインも初々しさを忘れていないところが嬉しいし、これを自身初のセルフ・プロデュースで仕上げたところも期待通りの成長ぶりで、まさに3年待ったにふさわしい一枚だ。(大鷹俊一)