この台風はインターナショナル

ハリケーン#1『メロディック・レインボウズ』
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ALBUM
リリース直後にまず聴いたとき、アルバム・タイトルに偽りあり?と思ってしまった。少なくとも冒頭3曲めまでは、メロディー面の魅力以上に、ひりひりした切迫感が際立っている。スコットランド出身の中心人物が率いるUKバンド、90年代後半にはオアシス最大のライヴァルのひとつと目されていたにもかかわらず、むしろ同時期のUSオルタナティヴ・ロックっぽい雰囲気がある。

約1年のインターヴァルでリリースされた通算4作め。昨年今ごろ出た前作が約15年ぶりのオリジナル・アルバムだったことや、中心人物アレックスの年齢(たぶん、ぼく同様アラフィフか、40代)を考えると、ここで示された勢いとクオリティーに舌をまく。全然枯れてない。レイド・バックな姿勢の対極。脱帽だ。

90年代のメイン・ソングライターはギタリストだったが、やはりこのバンドの肝は、アレックスのヴォーカル。前作において素晴らしい強度で披露されていた彼自身のソングライターとしての実力は、後半に温存されている。それがピークに達するラスト2曲で、痛感した。このアルバムは、まさに雨上がりの虹そのものだと。まじで胸をうつ。(伊藤英嗣)