更なる未来への布石

フューチャー『ビーストモード 2』
発売中
ALBUM

フューチャーが無料のミックステープ『ビーストモード』をリリースしたのは2015年1月のこと。『ビーストモード』は高い評価を受け、約半年後に発表されたフル・アルバム『DS2』を盛り上げる起爆剤としても機能した。そもそも、『DS2』自体、2011年に発表した無料ミックステープ『ダーティー・スプライト』の続編として発表された作品であり、その完成度は続編といえどもオリジナルを凌ぐほどだった。そして2018年7月、オリジナルの発表から3年後、まさか『ビーストモード』の続編が聴けることになるとは! 前作の『ビーストモード』に続き、今回もまた、全編においてプロデュースを手がけるのはアトランタのトラップ・サウンドを確立したビートメイカー、ゼイトーヴェン。教会で鍛えた鍵盤のスキルでも知られる彼だが、『ビーストモード 2』においても、ほぼ全ての楽曲でゼイが奏でるピアノのフレーズが美しく、そしてブルージーに響く。そして肝心のフューチャーのラップはというと、よりメロディアスな方向に舵を切っているように聴こえ、2017年にリリースした2枚のアルバム『フューチャー』、『ヘンドリックス』とは路線が異なるアプローチ。ゼイによると、本作に収録した楽曲は2016年から2018年にかけて録音したものとのことで、楽曲によっては少しアウト・オブ・デイトな感じが否めないものも。また、フューチャーは1ヶ月前に発表されたサウンドトラック『スーパーフライ』でも大半の楽曲に参加しており、そちらの方が〈2018年のフューチャー〉という感じもする。ただ、9曲というタイトな構成の中で、ゼイとフューチャーのケミストリーは程よい位置に着地しており、二人の相性を楽しめる小品としては十分に機能する出来。(渡辺志保)



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フューチャー『ビーストモード 2』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」9月号に掲載中です。
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『rockin'on』2018年9月号