歌って闘う、アオキ・ユニバース

スティーヴ・アオキ『ネオン・フューチャー Part. 4』
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ALBUM

『ネオン・フューチャー』シリーズも第4作ということで、当初はスティーヴ・アオキの一時的なコンセプト作かと思われていたが、今ではパーマネントなプロジェクトと化しているようだ。えげつないバイタリティと筋金入りのサービス精神をもって、コラボレーターをガンガン巻き込み、力業で未来を照らし出す姿勢こそ、アオキの本領なのだろう。スケジュールされていた日本盤リリースは、今日の社会情勢を受けて延期となってしまったものの、既に音楽配信サイトで聴くことができるし、去る4月16日にはTikTok LIVEを通じて日本のファンに向けた生配信DJセットを繰り広げてみせた(日本時間の19時半からだったので、LAでは午前3時半だ)。相変わらず過剰なサービス精神で盛り上げてくれている。

『ネオン・フューチャー Part.4』はオリジナル音源だけでも27トラック、日本盤はディスク2枚組で全30トラックに及ぶ大ボリュームの内容になった。というのも、アオキはこの1年強の間、“アー・ユー・ロンリー~”を皮切りに夥しい数の配信シングルをリリースしており、『~ Part.4』収録曲のうち半数以上は、このシングル群が占めているからだ。

オーガニックな音色とバックストリート・ボーイズの甘いハーモニーが彩る“レット・イット・ミー・ビー”。スティングの歌声とインディー・バンドのシェイドが相見えるさまが味わい深い“2・イン・ア・ミリオン”。前作のBTSに続き、K-PopからMONSTA Xを迎えた“プレイ・イット・クール”。シングル群だけでもポップのツボを心得た人選とソングライティングは素晴らしいが、それだけではない。EXO所属のレイとウィル・アイ・アム、アルバム曲ではスウェーデンのアイコナ・ポップ、インドネシア出身のスター歌手=アグネス・モー、さらにマイク・シノダやトリー・レーンズらも迎えられ、真にボーダーレスなダンス・ポップの新基準を打ち立てようとする心意気が窺えるのだ。またプロデューサー陣に関しては、スラッシーやKSHMRといった強烈な個性を活かしつつ、アルバム終盤ではベースジャッカーズやショウテックの剛腕ダッチ・ハウスでピークへと持ち込む。エモーショナルな歌心を多様なダンス・トラックで彩り、最終的に興奮の坩堝へと叩き込むこの流れは、新しい「型」の流行が頭打ち状態になっている現行EDMシーンにおいても正しい。息苦しい時代を突破する、ポップ・ミュージックのしぶとい底力を結集させたようなアルバムだ。 (小池宏和)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』6月号に掲載中です。
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『rockin'on』2020年6月号