イギーがデヴィッド・ボウイとコラボレーションを繰り広げた1976年から1977年にかけての、いわゆる「ベルリン期」の音源を集大成したCD7枚組ボックス。内容はボウイがプロデュースを担当した『イディオット』、『ラスト・フォー・ライフ』、ボウイがピアノで参加したライブ『TV・アイ』という既発表アルバムのリマスター、シングル・バージョンやミックス違いを収めたもの、そして残り3枚は同時期の未発表ライブやラジオ・セッションなど。関係者のコメントなどを盛り込んだブックレットも同梱する。
イギーとボウイの音源上のコラボはストゥージズ時代の『ロウ・パワー』、ベルリン期、1986年の『ブラー・ブラー・ブラー』と3度あるが、いずれも苦境に陥っていたイギーにボウイが助力したような形になっている。それはボウイのイギーへの尊敬の念と友情の表れではあるが、ベルリン期に関しては自らの『ロウ』、『ヒーローズ』というアルバムの予行演習的な意味合いもあって、より一体化している。ボウイのこの時期の創作活動を知るためにも、本ボックスは重要な参考資料なのである。
『イディオット』に関してはボウイの当時の興味や音楽志向にイギーが無理やり合わせている感があり、音楽性とイギーの資質が噛み合ってない印象もあるが、本来のワイルドなエネルギーを発揮した『ラスト〜』は文句なしの傑作。しかし本ボックスの聴き所は、一にも二にも、合計4枚のCDに収められたライブ音源である。ボウイや、後にボウイとティン・マシーンを組んだセールス兄弟がバックアップするバンドは強力で、イギーもそれまでの不調を完全に払拭して絶好調。イギー史上最高とも言えるライブをこれでもかと展開する。最高だ。全ロック・ファン必聴。 (小野島大)
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