甘酸っぱい記憶が爽快に

ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート『ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート』
2009年04月15日発売
ALBUM
おおっ!久々にギタポファンが泣き出しそうなバンドだ!!と一聴して顔がほころんだのも束の間、このPOBPAHはそんな「ギタポ」という範疇をじつはひょいっと超えてしまっているのだというすごいことに気づいた。つまりこれを「ギタポ」と呼ぶならば、「ポップであること」一点しかその要素はない。C86、アノラック、サラ&チェリー・レッド、シューゲイザー、ポスト・ロックetcこのサウンドを説明するキーワードは限りなくあり、おたくポップのお手本のようなサウンドでもある――そういう意味ではベルセバともいえる(フォロワーということではない)。

「リバイバリスト」たちがフォームにこだわりサウンドの再構築に躍起になっているのとは正反対に、POBPAHはあれこれ分析/模倣を重ねるのではなく、もっと衝動的で刹那的でいいよね、というエモーションからサウンドを鳴らしているのだろう。“カム・サタデイ”は、サマー・パーティーをシカトして引きこもる歌だが、そこには自虐性はない。壊れそうなぼろぼろの疾走感に支えられたサウンドが、その思春期のぎこちなさをまぶしいくらいのフレッシュさに変えてしまうのだ。(羽鳥麻美)