再起動、そしてアップデート

アラブ・ストラップ『アズ・デイズ・ゲット・ダーク』
発売中
ALBUM

なんと、16年ぶりのニュー・アルバムだ。その間には約10年にわたって解散していた時期を挟むので、本作はアラブ・ストラップにとって16年ぶり、かつ心機一転の再結成アルバムということになる。アラブ・ストラップはほぼ同期のベル・アンド・セバスチャンや、当時のUK北部インディ・シーンの牙城だった「Chemikal Underground」の盟友モグワイ(本作は彼らのレーベル「ロック・アクション」からのリリース。絆が再確認できてグッときます)と共に、90年代後半のスコットランド勢の台頭を象徴するバンドだった。中でもエイダン・モファットとマルコム・ミドルトンによるデュオである彼らは、厭世の詩人エイダンの紡ぐダーク・ロマン漂うポスト・ロック・サウンドで異彩を放つ存在だったと言っていい。

本作が16年間の空白を瞬時に埋める、アラブ・ストラップらしい復活作であるのは間違いない。二日酔いの朝のように憂鬱なビートと、孤独の夜に吠えるような鋭利なギター。じわじわと熱されていくスローコアと、ぐずぐずと輪郭を失っていくアンビエントなドローン。ぶつぶつと不機嫌に呟くエイダンのボーカルと対照的に、ドラマティックにうねるストリングス。それらが私たちのよく知るアラブ・ストラップの肖像画を描き出していく。しかし本作を会心の一作たらしめているのは、彼らが肖像画から抜け出して真新しい肉体を得たかのように躍動する驚きのダンス・グルーヴであり、エレクトロ・ポップであり、さらにはAORか?と思うほどスムーズなサックスだったりする、私たちの知らないアラブ・ストラップの現在形によってだ。エイダンは本作を「絶望と暗闇についてのアルバム」だと評した。そしてこう付け加えた。「ただし、それを面白くやるんだ」と。実際、その通りのアルバムになっているんじゃないだろうか。(粉川しの)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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『rockin'on』2021年4月号