ピンク・フロイド初来日公演=箱根アフロディーテ50周年イヤーの記念リリース第一弾は、2019年の『ザ・レイター・イヤーズ』ボックスに初収録されていた1990年「ネブワース・コンサート」時のライブ音源の単独作品化。ポール・マッカートニー/エリック・クラプトン/エルトン・ジョンらビッグ・ネームが一堂に会した「ネブワース・コンサート」のヘッドライナーにして『鬱』ツアーの最終公演となったアクト。
映像作品/音源で既発の“クレイジー・ダイアモンド”、“ラン・ライク・ヘル”、”コンフォタブリー・ナム”の3曲に加え、“虚空のスキャット”、“あなたがここにいてほしい”、”時のない世界”、“マネー”と合わせて全7曲が(デヴィッド・ギルモア&アンディ・ジャクソンによるマスター・テープからのリミックスとともに)晴れて30年の時を経て1枚のライブ盤として日の目を見たことになる。
マイケル・ケイメン(Key)、キャンディ・ダルファー(Sax)がゲスト・プレイヤーとして参加したこの日のアクト。ツアーではセットリストの軸として披露された『鬱』曲は“時のない世界”1曲に留め、世界屈指のスタジアム・バンドとして「誰もが聴きたいフロイドのキラー・ナンバー」を披露する――という内容からも、珠玉の一夜に懸ける当時のバンドの気迫が伝わってくる。
が、このアクトで何より胸躍らされるのは、約12万人の大観衆の高揚感と響き合い高め合うように、ギルモア/ライト/メイスンのアンサンブルが切迫したグルーヴ感を描き出していることだ。音の輝度と透度を磨き上げ、破格のハイブリッド・ブルースの異次元を繰り広げてきたギルモア期のフロイドが、ここで鳴り渡らせているのは紛れもなく、強靭なロックの肉体性そのものだ。(高橋智樹)
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