再生するために

秋山黄色『蛍』
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約半年ぶりの新作だ。秋山黄色はまず、吐息交じりに《このまま凍っていようかと 閉じた一重瞼には/少し眩しい海辺の光 もう夜になっていた》と歌い出す。自らの力で自らを後押しするような温かみのあるユニゾン、ヘビーだけれど包容力を感じさせるギターソロ、アコギとストリングスも入る。抑制を効かせつつも多彩で繊細なアレンジがふんだんに盛り込まれており、それはまるで、逡巡し、自問自答し、「これから」に思いを馳せる感情の起伏と呼応するようだ。

重層的なサウンドデザインは、ひとりのようでいて、そうではないようにも聴こえる。その感覚は3月に観たひとりきりの弾き語りライブ「MY COLOR」にぴたりと重なる。秋山黄色だけの音が360度全開だった演奏の合間に、時にオーディエンスに吐露するように、時に自らを鼓舞するように言葉を口にしていたあの日。“蛍”は再生の楽曲――というよりは、再生するための地点に立ったような楽曲だ。それがとてもリアルでぐっとくる。(小松香里)

(『ROCKIN'ON JAPAN』2023年9月号より抜粋)


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